ホタロン インプレッション

 

 

 

 

 

 

< は じ め に >

 

ホタロン(製品名:PH130SS)は、ビクセン開発工業(ビクセンブランドの開発、製造を行っていた会社)のネットオンラインで2004年11月に突然発表された屈折望遠鏡でした。レンズにはホタロンというフッ化物ガラスを使用していて、フッ化カルシウムの人工結晶であるフローライト(蛍石とも呼ばれます)に近い特性をもちながら、耐熱や耐久性はフローライトよりもすぐれているのが特徴です。

 

ビクセンは、従来からフローライトとEDの2つの高性能屈折望遠鏡を発売していましたが、フローライトは2003年頃にラインナップから外されました。それは、フローライトの供給がストップしたからとか、フローライトに組み合わせるレンズの調達が困難になってきたからだとも言われています。そのためアポクロマート屈折望遠鏡のメインはEDレンズを使用した望遠鏡のみが販売されている状況です。

ホタロンを使用した屈折望遠鏡がビクセンから販売されるという話はおそらくこの1年の中では全くなかったのではないかと思います。なので、ビクセン開発工業でホタロンが発表されたときは大変ビックリしました。もしかしたら、開発の目処がほぼ立ってそのアウトレット品が今回売りに出されたのではないかと思ったぐらいです。

 

さて、このホタロンですが、有効口径130mm、焦点距離910mm、口径比(焦点距離÷口径)7となります。元々使っていたED115Sの口径比が5.8でしたから、それからすると暗めの設定と言えます。これは、星雲・星団の直焦点撮影とするには露出時間を多めにしないといけないという点でやや不利にはなりますが、一般的には諸収差の補正がしやすくなり、また高倍率での色収差の度合いも少なくなるはずです。特に、このホタロンは3枚玉仕様と言うことで、メインのホタロンレンズを含む3枚のレンズを組み合わせて光学系を構成しているため、諸収差の補正が高くなっていることが予想されます。

実際色分散率のグラフを見ると、比較対象に挙げているED130SSよりも各色が集約していて、自分が使っているED115Sと比べてもその差は歴然です。

 

ところで、ホタロン3枚玉望遠鏡は以前発売されていた(?)ことがあったようです。2002年と言うことですから、2003年の火星接近を機に舞い戻ってきた自分が知らないのも当然ですが、その時に出た望遠鏡は眼視性能も写真性能も設計通りの結果が出ない一種の「不良品」に近いモノだったそうです。今回販売されたホタロンはその時の「余り物」という噂もあります。ただ、一応それから2年経過していることですし、その間いろんな試行錯誤を繰り返してきたでしょうから、少なくとも今回発売されるホタロンは改善されるべき所は改善されているはずです。

ここでは、ホタロンを使ってみて自分なりに感じたことを、前のED115Sと同じような感じで覚え書き程度に書き留めておきたいと思います。

 

 

 

 

 

< 梱包・外観 >

 

 

▼でかい鏡筒はさすが130mm

 

まず最初に箱を見た時からその大きさに圧倒されました。長さが1mある望遠鏡なので当たり前ですが、想像と実物では大違いです。

内容としては、ホタロン鏡筒、ファインダー、ファインダー脚と延長チューブ(43mm径×2本)が入っていました。中身の梱包状況はED115Sの時と同じで、型取りされたスチロールで中空状態にしていました。

鏡筒の方も130mmF7ともなると豪快なボディです。船長っのFS102(102mmF8)でも貫禄がありましたが、それより一回り大きいのです。鏡筒本体の直径はED115Sと同じ140mmですが、フード径は160mmあって迫力感を醸し出しています。

重量は約6.5kg。これは本体のみの重量と思われます。バンドやファインダーを装着すれば多分7kg前後になるでしょう。サイズの割りには比較的軽量の部類になるのではないでしょうか。眼視観望だけがメインなら小型の架台でも何とかいけそうです。

ホタロンの鏡筒は、フードと鏡筒を接続する箇所や接眼アダプター以外は全て白色で統一されています。今ビクセンが発売しているスフィンクスカラーか、もしくは昔アトラクスに載っていたいED130SSのカラーを踏襲しているようです。メーカーのHPで見た外観はちょっとデザイン的に古くさいイメージがありましたが、実物を見てみるとなかなかスッキリとしていて悪くありません。

 

▼レンズとコーティング傷の状態は?

 

ホタロンを注文した後にメーカーから「見えに支障のないレンズのコーティング傷は許容した」と連絡が来ていたので、レンズの状態は大変気になっていました。いくら見えに支障がなくても、もしレンズのど真ん中を筋がピッと走っていたとすれば…、想像しただけで具合が悪くなりそうです。

実際に見てみると、たしかに少し縞だった傷が所々にあることが分かりました。それも見る角度を変えて、レンズ面に光が反射するようにしてから分かる程度です。見ると何か拭きムラのような感じもします。ひょっとしたら開発段階で表面の付着物を何かで吹いた跡なのかもしれません。もしこのホタロンが2年前のレンズだとしたら可能性としてはあるかと思います。

新品らしさがないのは残念ですが、とりあえず目立った傷ではないことが分かりましたので、これはこれで問題なしです。

レンズ面を見ると、天井のサークラインが3つ見えて3枚玉であることを伺わせます。また、レンズには120度間隔で錫箔が配置されているのが分かります。これはレンズ間隔を調整するためのものですが、結構出っ張っています。明るい恒星を撮影するときは、この錫箔による影響が出るかもしれません。セルの中にすっぱり入った状態になってくれれば文句なしですけど、ねぇ…。

 

▼とにかくデカい!!

 

納品されたその夜、さっそく据え付けてみることにしました。そして改めてその1m級の鏡筒の長さにびっくりです。ベランダいっぱいいっぱいなんです。右のホタロンの写真と下のED115Sの写真を見比べればその大きさが感じてもらえるでしょうか。前半分の飛び出し量をほぼED115Sに合わせると、後ろが異様に飛び出してしまうのです。延長チューブや接眼レンズは付いていないのに、既に後ろの先端はベランダの柵にくっつきそうなほどで、このままの状態で鏡筒を左右に振り回すと、間違いなく柵にぶち当たります。やっぱりProject EDで予想していた「1m級の望遠鏡では、取り回しに苦労する」というのは当たっていました(←誰でも分かりますって!!)。

鏡筒が大きいとは言え、架台に対して大きすぎるという印象はありません。まだまだ架台に見合った大きさの鏡筒が載っていると思わせる範囲にあると思います。重量的な点からもEM200の最大搭載重量が16kgですから、7kg弱の鏡筒であれば余裕です。ガイド鏡を載せても多分10kg弱ですので過重量になることはないでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

< 取 り 回 し >

 

 

▼今度の接眼部はイイ

 

接眼部の構造は基本的に他のビクセン製品と同じです。ハウジングにラック&ピニオンのドローチューブが組み込まれ、ドローチューブと接眼レンズはアダプターリングを併用して接続します。ドローチューブとハウジングのクリアランスは、ハウジング内部にあるスペーサー(プラスチックか金属の板みたいなもの)で調整されていると思われ、固定ネジを締めるとスペーサーがドローチューブを押しつけて固定、ネジを緩めるとスペーサーとチューブに隙間が出来ますので、チューブがスルリと動く機構となっているようです。

ED115SやVC200Lの場合、このクリアランスが大きくて、固定ネジを緩めると接眼レンズを付けただけでドローチューブがスルスルと動く(=ピントがずれる)とか、ネジを締めた場合の星の移動量が大きいとか、固定ネジフリー時はドローチューブがガタガタするなどの難点がありました。クリアランス調整は、固定ネジの前後にある3つのポチポチッとした穴の中の小ネジでやります。自分でも調整しようと思えば出来るのですが、3点をバランス良く調整しないといけないので結局自分はしませんでした。

ホタロンでは、このクリアランス調整が初めから良くできていると思われ、繰り出し時の滑り具合に適度な固さがありますし、固定ネジを締めたときの星のズレ具合もかなり改善されています。これだけで、ちょっと高級感を感じさせるのですから不思議なことです。

 

▼気になる延長チューブ

 

ホタロンでも天頂ミラーを併用するときと直視する場合では、延長チューブの取り付け/取り外しが必要となります。

この延長チューブ、いつもであれば、ドローチューブと同じ径(60mm)の延長チューブが付属するのですが、今回はやや径の小さい43mmの延長チューブが2本付属していました。ビクセン開発工業のサポートページで接眼リングチャート図を見たところ、ケースによっては1本使ったり2本組み合わせる必要があるみたいです。

しかし、径の小さい延長チューブというのは、特にカメラを接続するときは心細くて行けません。

下の写真に60mm延長チューブの場合と、43mmの場合の取り付け結果を紹介しますが、パッと見でも60mm径の方が安定感があるように思えます。試しに60mmチューブを付けていろんなアイピースを付けてピントが合うか調べたところ、結果として全てOKでした。

ということで、現在は60mmの延長チューブの方を使用しています。

 

 

 

 

↑天頂ミラー使用時  ↓直視で見るとき

 

 

 

60mm延長チューブ使用時

43mm延長チューブ使用時

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

直焦撮影時

拡大撮影時

 

▼長焦点の屈折はベランダには向いていない

 

Project Hで紹介したように、1mになろうとする屈折望遠鏡はベランダ観測ではかなりの制限を受けます。自分のアパートからは北東から南にかけての空を望むことが出来ますが、北方向の星を見るか南方向の星を見るかどちらかにターゲットを絞って架台を設置しないと、天体が一番美味しい場所に来たときに、接眼レンズが壁とかサッシに当たってしまい、見ることができないというお粗末な結果になってしまいます。

また、ED115Sを使っていたときでさえ高度の高い天体を見るときはアクロバティックな姿勢を強要されていましたが、後ろのオーバーハングが長いホタロンではほとんど土下座して見る必要が出てきました。あるいは仰向けになって首だけ浮かして見たりとか…(そのうち首がプルプル震え出すのです)。

でもいいの。覚悟の上で買ったんですから。…覚悟していたよりも結構厳しい状況なんですけどね。

 

▼バランスの取りシロは十分

 

外観編のところに載せた写真で分かるように、ホタロンは鏡筒長が900mm強ありますので、バランスを取るためのスライド量はたっぷりと取ることが出来ます。レンズが3枚玉と言うこともあってレンズ側が結構重く、素のままだとかなり接眼部側にスライドしないとバランスが合わないのですが、ファインダーや接眼レンズ、あるいはカメラを接続していけば、レンズ側にスライドしていきますので問題はありません。

 

 

 

 

 

< 見 え 味 >

 

▼シリウスを見てみました

 

ED115Sを買ったときもそうでしたが、ホタロンでのファーストライトはおおいぬ座の1等星シリウスでした。

見た感想としては、たいへん色消しが良好だとまず思いました。

ED115SではLV9mm(74倍)当たりから青ハローが見えだし始め、LV4mm(166倍)になるとまるでウニのトゲのようにシリウスの周りに広がっていました。ホタロンではLV6mm(152倍)から若干感じられる程度で、LV2.5mm(364倍)でもうっすら広がる程度です。ちなみに、タカハシのOr2.8mmではLV2.5mmよりも色収差の度合いが少なくなっていることが分かりました。アイピースにも若干色収差があるので、良質のアイピースを使えばほとんど青にじみは目立たなくなるのではないかと思います。

ただ、この青色の分散度が低くなったせいなのか分かりませんが、全体的に黄色みがかった色合いに感じます。白いはずのシリウスが心持ち金色に輝いているように見えるのです。この感じは白色の恒星では顕著で、例えばオリオン座のリゲルなんかも同じように少し色が付いているように感じられます。逆に赤色の恒星(ベテルギウス)はそれほど違和感を感じません。

ED115Sで見たシリウスが、ゾクっとするほど冷たい印象を与える青白さだったので(自分はこちらが好み)、暖色系のシリウスはチト気になるところではあります。もし、色分散が低くなったことが要因ならばフローライトでも同じ見え方になるかもしれません。この当たりはいずれ船長っのFS102と見比べてみたいと思います。

 

 

▼土星を見てみました

 

LV6mmで152倍にしたときが一番適正倍率になり、空の状態が多少悪くてもカッシニの隙間や、土星本体の赤道部の縞模様は難なく見ることができます。また、環の濃淡もきめ細かく観察できるようです。これはホタロンの効果と言うよりはむしろ口径の恩恵だと思いますが、ならば20cmのVC200Lと比べるとどうか、と言いますと、断然ホタロンの方がよく見えます。

環や本体のエッジ部はなかなかキレがあって、夜空との境界線がはっきりするようになりました。このおかげかジッと見つめていると立体的に感じる時があります。

LV4mm(228倍)では、若干暗くなるものの像はしっかりしています。シーイングが良ければ、思い切ってこちらで見た方がいいようです。

LV2.5mm(364倍)はさすがにエッジ部のキレがなくなって全体的にぼんやりしてきます。364倍とは口径(mm)の2.8倍なので過剰倍率の領域にあると言えばそれまでですが、できればもうちょっと絶えてほしいところ。これは火星とか輝度の高い天体(しかも相当シーイングがいいときに)しか実用できない倍率のようです。

なお、今のところ土星本体の濃淡やC環はまだ確認できていません。当然エンケの隙間(注:その後色んなサイトを調べてみたところ、エンケの隙間と思っていたものは偽エンケと呼ばれ、たまに錯覚で見えてしまう模様みたいなモノらしいです。本当のエンケの隙間を見るには30cmクラスの望遠鏡が必要だと言うことです)もペケで、10数年前に10cm反射で見た一番最高のイメージ(下のスケッチです)にはほど遠い見え方です。シーイングが悪い冬の時期に加えてベランダからではこれが限界かもしれません。建物の影響を受けないところでじっくり見てみたいと思います。とりあえず、今回はベランダから見た場合の感想と言うことで…。

 

 

ということで一番よく見えたときのスケッチです。

1986年7月25日と言うことですから、おお6歳の時ですか!

                            ↑しつこい!

 

たしかこの時は、土星が工場の屋根に沈む直前に見たと思います。

本体の模様もさることながら、土星の環も模様らしきモノが見えたと感想に書いてます。かなり色とりどりに見えた土星面でした。

スケッチした後、是非写真に収めんと慌ててカメラをセットしましたが、セットしたら工場に沈んでました。トホホでした。

使用望遠鏡は、ビクセン 10cmF10反射望遠鏡で、これにOr5mmで200倍をかけました…ようです。大学ノートにフリーハンドで書いているところが泣かせます。

ホタロンでもこんなに見えればいいなぁ。シミジミ。

 

 

 

 

 

▼木星を見てみました

 

木星へのファーストライトの印象を書き留めておきます。

土星と比べると木星は明るいのでLV4mm(228倍)でも十分に見応えがあります。赤道付近の縞模様や大赤斑など口径のメリットを生かして難なく見えます。ところがです、像が今ひとつ甘くてカチッとしないのです。「あれ?ピントが合ってないのかな」と思って何度が調整したのですが、どうしてもシャープな像になりません。四大衛星はそこそこ点像になっているので、特にシーイングが悪いと言うわけではないと思うのですが、これは一体どうしたことでしょう。鬼太郎くんで撮影に踏み切ったものの、光軸の狂ったVC200Lで撮影した結果に勝るとも劣らないひどい出来で、即データを削除した次第です。

ひとつ考えているのは、回折光の影響でコントラストが低下しているのではないかということですが、これなら多分アポダイジングスクリーンを使うことで改善の方向に向かうかもしれません。あるいは単純に良いシーイングに巡り会えなかっただけなのかもしれないので、これも土星同様一度出張って建物の影響を受けないところでじっくり見てみる必要がありそうです。

 

(3月3日追記) 

3月1〜2日にシーイングの良い夜空に巡り会え(シリウスがほとんど瞬かない!!)、ようやくホタロンで木星の模様の細部が楽しめました。アイピースを取っ替え引っ替えして見てみましたので、それぞれの倍率での見え具合を書き留めたいと思います。

LV9mm(100倍)では、中央2本の縞模様に濃淡があるのが分かるようになります。南側の縞(写真では上側の濃い縞になります)は2つに分かれているのもこの倍率から分かるようになってきます。

LV6mm(151倍)で見ると4本の縞模様がはっきりと見えました。中央2本の縞の濃淡も見やすくなり、北側の縞にはいくつか白斑が点在しているのが分かります。100倍では一直線に見えた縞もこの倍率になるとところどころでうねりが出てきて複雑になり、木星とは何と激しい活動をしてるんだろう、と言う思いに駆られます(?)

LV4mm(228倍)ではやっぱり若干のシャープさが損なわれますが、シーイングが良ければ十分耐えられる倍率です。3枚レンズなので光量ロスを心配したものの、特に「暗い」という印象はありませんでした。もし、レンズ構成の少ないアイピースを使えば、よりキレのある像を見ることが出来そうです。模様の見え方は151倍の時と大きな変化はありませんが、大きくなる分迫力が増してきます。ここで、「ゴーッ」と宇宙をかける木星の擬音語が聞こえてきそうな錯覚に陥りました。

LV2.5mm(364倍)では、光量はまだ十分あるものの、全体的にぼけてしまってこれまたやっぱり実用的な倍率になりませんでした。定評のあるタカハシのHi Or2.8mm(325倍)でもあまり変わらず、球面収差の影響が出てきている可能性があります。この辺りはもう少し継続して見ていきたいです。

ところで、切り札のアポダイジングスクリーンを付けてみると見え方はどうなるでしょう・・・。結論から言いますと、たしかにコントラストは上がりますが、劇的な効果は少ないように思えました。シリウスでは「お?」と目を見張る効果に驚いたんですが、木星はちょっと少ないですねぇ。何でだろう・・・?

それでも、この日の木星は今までになく細部まで見ることが出来、時間が経つのも忘れるぐらい見はまってしまいました。ここ最近は眼視でも撮影でもさっぱりだったので、「ホタロンってひょっとして惑星には向いてないのでは?」と疑問に感じていたのですが、それが払拭された思いです。それと合わせて、シーイングの影響がかくも見え方に左右することを改めて実感させられた気がします。

 

 

 

 

 

 撮 影 >

 

天候不順と読みの浅さから長らく撮影に出張れませんでしたが、2月にようやく撮影に踏み切れましたので、その時の撮影結果からホタロンの写真性能に迫ってみたいと思います・・・とは言っても、駆け出しのひよっこ同然ですから、見たまんまの感想をズラリと述べる程度のものです。

 

▼直焦撮影(レデューサーなし)の場合

 

レデューサーのない状態でオリオン星雲を撮影してみました。画像処理してますが下の写真がその結果です(原板はこちら :805KB)。

特筆すべきは周辺までほとんど像の崩れがないことにつきます。リサイズして1280×960の画面に収まるようにすると、ほとんど点像に見えます。原寸で見ても周辺で僅かに放射状に伸びる程度で、星像の肥大化が少ないことが分かります。コマ収差(非点収差?)がよく補正されていることが伺えます。中心部付近の星像はシャープで申し分なく、その分ピント合わせを入念かつ頻繁にやっておかないと失敗率が増えそうです。

ED115Sでちょっとばかり目立った青いにじみは軽減され、より自然な雰囲気になっているのではないかと思います。

残念なのはレンズ内にせり出している錫箔の影響があることでしょうか。明るい星には約60度間隔で錫箔の干渉と思われる黒い筋が出てしまいます。逆にこちらの方が星が輝いているように見えないでもありませんが。

 

周辺部

中央から3分の2辺り

中央部

 

 

 

 

▼直焦撮影(レデューサーあり)の場合

 

レデューサーを付けると焦点距離が、口径比F5.3の明るい光学系になります。露出時間を短くするという点ではレデューサーを付けるに越したことはありませんが、これによる星像の悪化があるようでは考え物です。

まずは同じオリオン星雲を撮ってみましたので、上のレデューサー無しと比べてみました(原板はこちら :796KB)。

結論から言うと全く問題ないかと思います。少し星が流れているのはガイドミスが原因でしょう。周辺部は少し扇状に星像が肥大するものの、均一さという点からするとレデューサーを付けたときの方が良好なように感じられます。もちろん1280×960に入るようにリサイズすれば、自分の目では崩れの度合いが分かりません。メーカーからもらったレデューサーを付けた場合のスポットダイアグラムも紹介します。得られた写真から判断するとほぼ設計通りの結果が出ているのではないでしょうか。

星の色つき具合もノーマルと変わらず、これならよほど小さい天体を狙わない限りレデューサーを付けた方がメリットがありそうです。ただ、レデューサーを付けた場合は周辺減光がでてきて、良好な範囲が制限されてしまうのは残念です。

 

周辺部

中央から3分の2辺り

中央部

 

 

 

調子に乗って、散開星団M35も撮ってみました。ギャラリーの方にはトリミングして載せていますが、原板(1.6MB)はこちらの方から見ることが出来ますので良ければ見てやって下さい。

 

 

 

 

< そ の 他 >

 

@球面収差について

 

恒星の焦点内外像を見て球面収差の度合いをチェックしてみたところ、焦点外像がぼける(負修正)傾向にありました。

焦点内外像の様子を写真に撮って、ネットに紹介されているシミュレーションモデルと照らし合わせてみたいと思います。下の画像はアルタイルを撮ったものです。

 

1回目

 

2回目

 

焦点外像

焦点位置

焦点内像

 

シーイングがあまりよくなくて、カチッとした像に写っていませんが、それでも焦点内像ではリングが明瞭に出ているのに対し、焦点外像ではリング間の境界線が不明瞭になっていることが分かります(実視でみる焦点外像はもうちょっと各リングがハッキリしています)。

これをシミュレーションモデルに照らし合わせるとどうなるでしょう?・・・何か限りなくλ/2に近い気がしますね??

λ/2とは「眼視用の望遠鏡としては失格」だそうです。いやいや、そんなことはないですぜ。シーイングが良いときの木星はばっちり細部まで見えましたから、やっぱりλ/4はあるんじゃないかと。

いずれシーイングがとても落ち着いたときに、再度チェックしてみたいと思います。

 

 

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