Whitey DOB25 インプレッション

 

                                              

 

 

 

< 取り扱い編 >

 

◆ファインダーの扱いやすさは秀逸

昔ながらのファインダーは、3点のネジを使って鏡筒と平行を取りますが、最近ではX−Yの2点調整機構を持つファインダーも出回っています。これは、3点のうち1つはプッシュピンになっていて、これでファインダー本体を支え、残る2点のネジでX−Y調整を行うものです。自分も今回初めて使ってみましたが、かなり使いやすいです。普通に扱う限りにおいては、平行を取った後の狂いもなく、これまでの使用で再調整したことはありません。

ファインダーの見え方は、周囲はやや星像が乱れるようで、ビクセンのファインダーと似たような感じです。

それとファインダーは着脱可能で、ビクセンの台座と互換性がありますので、ビクセン鏡筒への取り付けも可能です。

 

◆鏡筒の蓋はあますぎる

鏡筒の蓋はすぐ取れます。はめ込みの奥行きが浅いというわけではなく、鏡筒内径よりも気持ち小さいようです。うっかり蓋をしたまま鏡筒の前を掴み、鏡筒の胴体を抱えて持ち運ぼうとしたら、蓋がパカッと外れて、鏡筒を落としそうになりました。持ち方がいけなかったのですが、もう少ししっかりとフィットできなかったものでしょうか。これだと、クルマで運搬しているときでも、振動で蓋が外れかねないので、薄いスペーサをかましておきました。

 

 

◆光軸狂いをチェック

 

望遠鏡を扱っているときに光軸がどれほどずれるのか試してみました。内容としては、@望遠鏡の上下に動かしたとき、A運搬したとき、B接眼部に負荷をかけたとき、の3つです。

 

垂直方向に対する光軸が狂いについては、仰角約50度を基準に、上下に動かしてレーザー光のズレをみてみました。基準角度よりも上方向では光軸の狂いはほとんど見られませんでした。下方向では角度20度ぐらいから、光が中心からズレ始め、水平にするとレーザー光約1個分のズレがありました。これは、主鏡が傾くことで発生する現象だと思われますが、水平にして天体を見ることはほとんどないですし、ギリギリ観望可能な10度〜20度の高度での光軸ズレは小さいですから、使用上問題ない範囲にあると思います。

 

望遠鏡の出し入れによる光軸のズレの有無については、ベランダ〜保管部屋間の出し入れだと毎回狂うということはなく(一応慎重に持ち運びしています)、10回に一度とかのペースで定期的に光軸チェックすればよさそうです。クルマの運搬では、観望大作戦2「Whitey DOB25出陣」で紹介したとおりの積み込みで移動しましたが、やっぱり狂います。置き方がまずかったことも一因かと思いますが、クルマでの運搬では「光軸は必ず狂う」と考えた方がいいようです。現地での再調整も、レーザーコリメータがあればそれ程手間取ることはないでしょう(←しっかり手間取ったわけですが?)。

 

 

接眼部への負荷かけでは一眼レフカメラをぶら下げてみました。カメラは30数年前の骨董品に近いもので、かなりの重量があります。少なくとも、初期のEOS-Dよりは確実に重いです。

ぶら下げ写真はドローチューブを収めた状態で撮りましたが、実際にはチューブをいっぱいに延ばし、カメラ回転装置近くにカメラをぶら下げて光軸の移動量を見てみました。カメラ本体に135mm望遠レンズを付けた状態を10分(自分が普通使う露出時間の2倍)ほど継続させてみたところ、光軸のズレは見られませんでした。結構頑丈で、これなら接眼部周りの補強は必要ないかも。

 

 

 

 

 

 

◆ドブソニアン架台は上下の動きが渋かった

 

さて、いよいよWB25をベランダに出して実際に星を見てみました。見え味については別項の「見え味編」で紹介するとして、ドブソニアンとして使った場合の感想を語らせてもらいます。

まず、回転方向の動作はすこぶる滑らかさで、高倍率(350倍)での星の追尾も難なく行えます。一方、上下方向はアイピースを付けたときに動きがやや渋くなり、動かすときに小さなきしみ音が出ます(ロック棒は付けず、完全フリー状態)。星を導入するに当たっては、鏡筒を動かすときの力加減が難しく、上に行きすぎたり下に行きすぎたりして、なかなか思ったポイントに星を持って来ることが出来ません。慣れない自分は、80倍ぐらいから星の導入に苦労しています。

上下方向のフリクションは、耳軸と2つのベアリングというわずかな接触面でしか発生しないので、2インチやLVWなど重いアイピースを付けた場合は、フリー状態では鏡筒がお辞儀します。これを補助するのが両側面に付けるロック棒で、締め付け加減を調整して、耳軸の滑りを防止します。横に突き出ていますので、星を見ながらでもロック棒の場所が掴みやすく、また架台を回転させるときの握り棒としても役立っています。

(画像は国際光器の専用サイトから)

 

◆EM200に載せる

 

ここで、いよいよ本来の目的であるEM200に搭載してみます。アリミゾ台座はプッシュピンつまみが大きいタイプに替えて、確実にレールを固定できるようにします。

まず鏡筒のアリガタレールを左手で掴み、鏡筒後部を右腕で抱え込みながら持ち上げて、レールをアリミゾに入れます。

・・・・・・・・・・(ここで時間が止まる)・・・・・・・・・・・

 

どうしましょう?この後プッシュピンを押し込んでレールを固定せねばならないのですが、両手とも離せませんよ?

比較的軽量かつキャリーハンドルがあるホタロンだったら、ハンドルを右手で持って、左でプッシュピンを押し込むことが出来ますが、重くて掴み所がないWB25は、両手で支えないと落としてしまいそうです。

・・・・・・・・・・・この体勢のまま、静かに時間が過ぎ去ります(でも本人は汗ダラダラ)・・・・・・・・

 

これは、武道の達人同士の戦いにおいて、互いの出方を待って動けないというものに通じるものがあります。

えゑぃ!!これでは埒があかん!

 

意を決して、右手で鏡筒を抱え込んだ状態で、左手を即座にプッシュピンに移して固定しようとします。これは暴れるイヌを無理矢理抑え込んで、シャンプーしている情景に通じるものがあります。

ところがここで思わぬ誤算が出てきました。アリミゾ台座を固定するキャップボルトの頭が台座表面から出てしまってアリガタレールと接触し、レールがしっかりと台座に接地しないのです。いくらピンで固定してもグラグラ。これは危なすぎます。せっかく固定力があるのに、この台座は使えません。

 

ならば、もう一つのアリミゾ台座を使います。これだとレールがしっかり接地するのですが、ここでも問題が。プッシュピンのつまみが小さくて、しっかりと固定できないのでした。指が痛くなるほどギュウギュウに締め込んだにも関わらず、鏡筒を向ける方角によっては、僅かにレールが浮いてしまいました。こ、怖えェーーー!

(左の写真で言うと、向かって右側に倒すと、レールの左側が台座から浮くのです)

 

さらに、1個のアリミゾ台座による固定では、鏡筒の大きさに比べて固定面積が小さくて安定感がなく、視覚的にはそれ以上に危険な香りがプンプン漂います。25cmクラスでこの固定方法は現実的ではなさそうです。EM200への取り付けは、別途プレートを準備してからでないと精神的に安心出来そうにありません。今後の最重要検討項目です。

 

下が全景写真です。これが鏡筒前後も含めてほぼバランスが取れた状態です。EM200が小型赤道儀のような印象を受けます。架台自体はぐらつきはなく、見た目よりはしっかりしています。が、ちょっと強い風が吹けば鏡筒そのものがゆさ振られて、視野内の星は踊りまくることが容易に想像できます。天体撮影をするには、無風に近い状態でないと厳しそう。

ちなみに、この時の接眼部の位置何と170cm身長165cmの自分は届かんじゃないか!主鏡重量があるため、前の方にかなり動かさないとバランスが取れないのです(耳軸がアリミゾ付近に来たときにバランスが取れる)。ホタロンとは全く逆の問題に直面してしまいました。

バランスウェイトは5kgを3つ付けて、この位置でバランス。もちろんWB25のみでの話です。余シロが3cmとほとんど無いので、ガイド鏡とか載せるときはもう1つウェイトが必要と思います。もっとも、それはすなわちEM200の積載可能重量(16kg)をオーバーするということなんですが・・・。

 

 

 

 

 

 

上の状態から北東、北西、南の各方向に向けてみました。一見何の問題なさそうに見えますが、接眼部の位置は175cm(当然届きません)。耳軸が干渉して、これ以上接眼部を下向きに出来ないのです。逆に北西方向では、接眼部がやや下を向いて140cm。これならOK。南側に向ければ接眼部が真上か真下になってしまうので、このままでは星をのぞくことはできません。

 

 

今度は、接眼部が上になるように鏡筒を回転させて各方向に向けてみました。南側の天体を見るときは、下中央の写真のように横向きになって、ちょうど良くなります。逆に、北東〜東方向では接眼部が上になってしまうのでのぞけなくなります(逆に西〜北西だと下向きになり、これまた困難)。

耳軸との干渉で接眼部の位置が程よいところに調整できないというのは予想通りでしたが、思ったより支障は少なかったと思います。それよりも、接眼部の高さが自分にとっては問題だ・・・。

 

 

 

◆EM200に再度載せる(2006.11.14更新) 

 

前回はアリミゾへの取り付けが弱々しかったためにEM200への搭載はしばらく見合わせていましたが、このほどようやく取り付け方法に目処が付きました。

取り付けは、アルミプレートにアリミゾ台座を2個取り付け、2カ所でアリガタレールを固定しました。アルミプレートに直接鏡筒バンドを取り付ける方が固定の強度は高いのですが、アリガタ・アリミゾの取り付けの利便性は捨てがたいものがあります。

 

アルミプレートは光映舎に依頼して製作してもらいました。取付穴含むプレート加工費は大体5500円程度でした。

アリミゾ台座はビクセンのものを使用しました。M8キャップボルトの頭が飛び出ないか確認せずに買ったので、実際に取り付けるまでドキドキものでしたが結果は問題ありませんでした。これで、市販のM8キャップボルトを利用することができます。

EM200への取り付けですが、プレートの中心はEM200の中心と一致していません。オフセットさせることにより、WB25の耳軸がアリミゾの固定ネジに干渉させないようにするためです。とは言っても計算してオフセット値を決めたわけではないので、本当に干渉しないかどうかは不明(おいおい・・・)

で、これが取り付けた状態です。耳軸がアリミゾ間の中央でバランスして、見事に干渉しませんでした。とは言っても、これは「ファインダーなし」「アイピースなし」の素の状態で、この後ファインダーとLVW3.5mmアイピースを付けたら、やや後ろよりにスライドして、耳軸を少し浮かしてやる必要がありました。

アリミゾの固定ネジが大きくグリップがいいので、固定力は十分です。2カ所で固定することで、WEBカメラによる惑星撮影なら、強風が吹かない限りは実用範囲に十分入りそうです。

ちなみに、WB25をEM200に取り付けるときの大変さは全然変わりません。

載せるときに時間が止まるんですよねぇ・・・、「この後どうしようか」と。おまけに、3枚のバランスウェイトをシャフトぎりぎりまで持ってこないとバランスしないし、あと1枚ウェイトを付けないと、撮影スタイルに持って行くのは難しいようです。

 

 

◆接眼部をクレイフォードに変更(2007.9.22更新)

 

なんだかんだで購入して早くも1年が経過しました。これまでの使用では惑星撮影がほとんどですが、木星、土星はそれなりに好結果を出してくれて、59800円の出費は無駄ではなかったと思います。

ところで、自分が買ったWB25の接眼部はラックピニオンですが、これはその後のマイナーチェンジでクレイフォード接眼部が標準となりました。その分価格は5000円上がって64800円になりましたが、マイナー後1ヶ月ぐらいは価格据え置きで販売されたことがあり、世の理不尽さを思い知らされたものでした。

更には、1年くまなく使っている間にピントノブのラバーにひびが入ったり、ラックピニオンにガタが出てきたりしてきました。接眼部にガタがあると、強拡大を必要とする惑星撮影ではかなり不便です。言わんや、ドローチューブを行き来させている間に惑星がモニタの端から端まで飛んでしまうとあっては、まともにピントを合わせることが難しくなってきます。ドローチューブ内のデルリン板を調整してガタをなるべく少なくしたものの、撮影時のピント合わせでストレスを感じなくなるまでには及ばず、さぁどうしたものかと頭を痛めていました。

そんなとき、たまたま国際光器(WB25の販売元)のサイトによってみたところ、クレイフォード接眼部が単体で販売されていることを知りました。しかも通常価格9800円のところをサマーセールで5000円。おいおい5000円ですよ?自分が買ったWB25の価格に5000円足せば現行の価格と同じです。これは何かの罠か?そんな勘ぐりすら入れたくなりますが、不思議とだまされてもいいじゃないかという気にさせられます。まさしくWB25と同じパターンです。

乗った!買った!物欲が目覚めるのは今です。スポスポーンっとマウスクリックも鮮やかに、速攻注文しました。

 

こちら現行のドローチューブのピントノブです。ラバーがひび割れて剥げかかっています。もう片方の状況はこれよりもひどいです。タカハシの赤道儀の方位調整ダイヤルもプラ製のダイヤルにラバーを巻いていますが、こちらは15年以上経った今でもひび割れ一つありません。単に使用頻度が違うだけなのか、それとも材質が悪いのか。

あと、ドローチューブのガタはノブの回す方向を変えるたびに上下に大きく動きます。ハウジング内部でチューブを押さえているデルリン板への与圧に不均一が生じているようで、調整後はだいぶガタが少なくなりました。・・・が、惑星撮影ではピント合わせに苦労しています。

これがクレイフォード接眼部です。チューブの繰り出しはスムーズで、去年買ったときのラックピニオンと同等だと感じました。

アイピースは、従来と同様アメリカンサイズと2インチサイズがワンタッチで切り替えできます。これはWB25の美点の1つといっていいほど便利です。

最大の誤算は、ドローチューブの内径がΦ60mmよりも小さくなっていたことです。おかげでチューブにビクセン製のアダプタ類を取り付けることができなくなりました。詳しい内径はまだ分かりませんが、ボーグのΦ57mmでも嵌りませんでしたので、Φ55mm程度ではないかと思います。当然直焦撮影するには一工夫する必要がありそうです。

惑星撮影をする分には、36.4mmのタップが切ってあるため、従来と同じ方法でカメラ類を取り付けることができ問題ありませんが、ちょっと困った問題です。

クレイフォードを鏡筒取り付け側から見た様子です。チューブは、上側のスペーサ(?)に支持され、スペーサの両端に付いているローラーらしきもので与圧を受けているようです。下側にはピントノブに直結したシャフトが直にチューブに当たっていて、シャフトとチューブの摩擦で繰り出しする機構になっているようです。

ラックピニオンのように歯がかみ合う機構ではないので、経年でチューブとシャフトが滑ってくるのではないかと、ちょっと不安ではあります(特に価格が安いですし)。

チューブ内部の黒色塗装はきわめて良好で、迷光防止に一役買っていると思います。これ以上の迷光防止を図るには植毛紙などで対策することになるでしょう。

 

さて交換です。と言っても接眼部の交換は大した作業ではありませんでした。

問題はその後で、接眼部が鏡筒に対してきちんと直交するように傾きを調整するわけですが(接眼部の傾きは、120度間隔で3カ所付いている押/引ネジのペアで調整する)、この調整が難航しました。

レーザーコリメータを取り付け、レーザー光を斜鏡を通じて主鏡に投影し、ドローチューブを前後させても主鏡上のレーザー光の位置が動かないよう調整しますが、「簡単に終わるさ」と高をくくって挑んだら、どこでどうやり方を誤ったのか、さっぱりうまく行きません。やってもやってもレーザー光がずれるのでした。

多分延べ5時間以上は調整に時間を費やしたと思います。ドローチューブを行き来させては、せっせこ傾き調整に勤しんだと言うのに、それでもやっぱり「完全に動かない」レベルにまでは追い込むことが出来ません。主鏡のセンターマークの円内でウロチョロさせるのが精一杯でした。

主/斜鏡の光軸だけでもまともに合っているのか未だにすっきりしないのに、接眼部の直交具合まで不安要素に加わり、今後まともに観望・撮影が出来るのか甚だ心配になってきました。*****

 

それはそれとして実践です。ToUcam をつけての惑星撮影においては、ガタがなくなったおかげで以前よりピント合わせがしやすくなりました。ラックピニオンのようにギヤ間の遊びが存在しないため、微少な操作がやりやすいのもいいです。ところが使用して早くも2日目には、ドローチューブを繰り出すときにきしみ音が出始めました。動き自体に渋さがあるわけではないので許容していますが、あまり気分いいものではありません。来年まで持つかな??

 

 

 

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