火 星 観 望 日 記 B

 

【ミッション赤まりも実行!!  〜8月23日〜】

 

前回の観望日記が8月6日だったのに今度はいきなり23日とは、大分割愛の程度が大きくなったよう気がしますが、一応この前行われた火星の観望会の様子を記憶が新しい内にしたためたいと思って急遽アップしてみました。コレより以前の観望日記は次回以降に書きます。少し話が前後しますが許してください。

 

 

 

<星の楽園姿を消す>

 

6万年ぶりとも言われる火星超大接近を目前に控え、久方ぶりに雄志で集まって観望会を開くこととなりました。ミッション名は自分の独断で「赤まりも作戦」。望遠鏡で見る火星の様子が毬藻のようにボヤボヤっとしていることから赤い毬藻を連想した作戦名だったんですが、実はこのミッション名、後ほど大きな誤りだったことを思い知らされることになるとはその時知る由もありませんでした。

参加者は、船長っ、オクヒデ君、M氏、M妻TさんとY−daの5名が確定。場所は2年ほど前にしし座流星群を観望したところと相成りました。また開催日については23日に決定。火星大接近は8月27日となっていますけど、全員仕事を持つ身とあっては平日に観望会をするわけにはいきません。まぁ、大きさ的には23日も27日も全く大差ないですし、23日の方が大シルシル(注:大シルチス)がほどよい時間帯に見えるのでベストな時期だと思います。

集合はM氏と自分が途中合流して、現地で船長っ、オクヒデ君と落ち合うことに。ここで、船長っは「8時から9時到着予定」、オクヒデ君は「10時ぐらい」ということだったので、こちらは9時ぐらいに現地到着することにしました。

23日当日、昼間は素晴らしい青空が広がっていたので既にこの時からミッションは成功する予感はありました。夕方くらいから若干雲が出始めたものの、ここ2、3日は夜半前には晴れるパターンが続いていたので特に心配していませんでした。

予定通りのスケジュールでM氏夫妻と落ち合い、そこから現地へ向けて出発。現地手前で一度船長っにコンタクトを取ってみました。時刻は既に9時前なので多分船長っは現地で望遠鏡を構えているはずです。

                           「今、家なんだよねー(^_^)(by 船長っ)

 

はいっ?まだ家なのですかっ?彼は仕事が立て込んでいたのでしょうか。これから爽太君を風呂に入れてあげて現地に向かうそうです。多分、到着は10時頃だろうと。ついでに「もしかしたら現地はチェーンがかけられて入れないかもしれない」とおっしゃいます。何と言うことでしょう、早速現地調査に向かわねば。

行ってみると、確かに船長っの危惧通りチェーンがかけられていました。ここ2年の間に舗装されて何やら道路が出来ていました。あぁ、星の楽園がまた一つ失われてしまったのか…。ちょっぴり寂寥感に駆られつつ、他の場所を探すことになりました。

 

 

 

 

<M天体完全制覇はお預け>

 

選んだ観望場所は道路の傍らにある雑草地帯で、クルマのヘッドライトによる幻惑攻撃が気になるところですが、惑星を見る分にはそれ程ヘッドライト攻撃も影響しないでしょうから、ここで観望会を行うことにしました。

クルマを降り立つと久しぶりの天の川が我々を待ち受け、十分な星エキスにM妻Tさん大はしゃぎ。はしゃぐあまり少し傾斜だった草っぱらに足を取られて転げておりました(しかも笑いながら)。さすが、ツボを押さえていらっしゃる…。

さて望遠鏡も組み立てられ早速火星に照準を合わせたいところですが、ここで自分には火星を見ること以外に3つの目標がありました。それは、

@M天体制覇を今日果たすこと

A天王星を見ること

B海王星を見ること                 

です。

Y−da機セッティング完了

 

このうち、@のM天体完全制覇…これは望遠鏡を買ったその日から20年余りにわたる悲願でありました。M1〜M110までの星雲・星団の内残る天体はあと3つ。あと3つで

野望が成就するのです。しかもこれら3つはもうそろそろ沈みかけようとしていました。M氏夫妻にはわがままを聞いてもらい、その3つをまず探してみました…。

                                    見つかりません \(ToT)

 

何と言うことでしょう。かつて星雲・星団ハンターと自呼していた自分が何一つ導入できませんでした。完璧に勘が鈍っていました。大ショックです。M天体完全制覇は達成することが出来ないまま、次の機会に持ち越しとなったのでした。ちなみに他の目標のうち天王星は捕獲できましたが、海王星も見つけることが出来なかったことをこの場でご報告しておきましょう。1勝2敗負け越し決定です。

 

 

 

<望遠鏡そろい踏み>

 

火星付近はちょっと雲が立ちこめていたのでしばらくは他の星雲・星団を見ながら時間をつぶしていましたが、そうこうするうちにやっとこさ船長っとオクヒデ君が到着。れれ?今日の船長っのクルマはいつものライトウェイトミッドシップスポーツ(軽トラ)じゃないぞ?どうやら船長っの家に遊びに来た2人の姪っ子さんも連れてきたようです。おかげで賑やかになりました。

火星の方は大体10時を過ぎた辺りから雲が薄くなり何とか見えるレベルになってきました。いよいよ本格的に火星観望会開始です。まずは既にセッティングを終えているY−da機が火星を導入。今回のミッション名のごとく赤くぼんやりした毬藻のような火星がいつになく印象的です。きっと大人数で見ているからでしょう。小さくなったものの白くはっきりした南極冠が相変わらず目立ち、中央付近にはキンメリア人の海が薄黒く見えていました。

 

 

22:00

 

00:20

 

02:20

8月23日〜24日にかけての火星面の様子(左→右)

(画像は「火星くるくる」で出力した画像をキャプチャしました)

 

到着した船長っとオクヒデ君は、Y−da機で火星やら主立った天体を見た後おもむろに自慢の愛機の組み立てに入っているようでした。

船長っのシステムは、タカハシFS−102屈折鏡筒+ビクセンSP−DX赤道儀の組み合わせ。口径至上主義に走らず、シャープで落ち着いた像を結ぶフローライト屈折を選ぶ当たりに船長っのこだわりが見え隠れします。Y−daとしては、このフローライトの見え味が一番楽しみなところです、この時点では。

一方オクヒデ君のシステムは、タカハシMT160反射鏡筒+タカハシEM100赤道儀の組み合わせ。タカハシが誇るこの往年の名機シリーズを、たしかオクヒデ君は高校生の頃には所有していたような記憶があります。彼が高校生だった300年前コレを持っている人は既にプロの天文家として認知されてもおかしくない程の高級品でした。それが今再び甦ったのです。自分としては感動の涙を禁じ得ませんでした。しかし、その感動を打ち消す事態が…。

オクヒデ君は組み立てに四苦八苦していたのです

 

船長っはものの20分も経たないうちにセットアップを終わらせたというのに、オクヒデ君は「あれっ?あれっ?」とつぶやきながらロダンと化していました。「ついこの間、学校で観望会をしたんですけどねぇ」と言っていますが、明らかに勘が鈍っている様子アリアリ、モハメドアリです。ついには、我々から鏡筒が載せられていない鏡筒バンドに頭を突っ込まれギロチンのマネまでされる始末(これが頭がギリギリ入るんです)。

やっとの思いで重い鏡筒をかついできたオクヒデ君、しばし呆然とその光景を見送るしかありませんでした。

ともあれ、ようやくオクヒデ号(仮称)もセットアップを終了したようで、3台による観望&撮影会が開始。まずはオクヒデ君による星座講習や、星座にまつわる伝説が披露され、姪っ子さんやM妻Tさんは星の世界にしばし引き込まれているご様子でした。さすが現役小学校教師のオクヒデ先生です。語りが巧いです。

 

 

 

望遠鏡にカメラをセットする船長っ

望遠鏡の見え味をチェックするオクヒデ君

 

 

 

 

<ショックを受ける人たち@>

 

船長っの姪っ子さんは夜半前に船長っに連れられて帰宅。これから本格的な火星観望会が始まります。全ての望遠鏡は火星に向けられ、大シルシル(注:大シルチス)の出現が待たれます。日は24日に移って0時を過ぎた当たりから、火星の右端(東側)の縁に濃く黒ずんだ模様が見え始めました。明らかに大シルシルです。

これを待ち望んでいたM妻Tさん…

わーっ大シルシルぅ(^0^) 大シルシルよー(^0^) 

すごーい (^0^)

 

…すでに我々の間では大シルチスという名前の模様は存在しません…。自分がウソ情報を流したとは言えここまで連呼していただけるとは…、嘘つき冥利に尽きるというものです(?)どうせだったら、世界的に広めようかという気にさせてくれます。

 

 

大シルシルが見え出した火星(8月24日 00:15分頃)

 

中央にはキンメリア人の海、そこから右(東)へチュレニーの海とつながって、

火星の縁に縦に延びる模様が見え始めました。大シルシルです。

この画像は、M氏にお願いして火星50連射の荒行をやってもらいました。

その中から15枚をコンポジットして画像処理を加えたものです。

 

 

 

さて、ここで各望遠鏡による火星の見え味比べをやってみました。まずは何と言っても一番興味深いフローライト屈折FS−102。自分が取り憑かれたように火星の写真を撮っていたその向こう側で「すごくよく見える」と大歓声が上がっていたのが更にその興味を増幅させます。さぁどれどれ…?

な、なんとこの火星は宝石ではないか!

 

そうなのです。絶対的な拡大率はVC200Lに分があるのですが、切れ味の鋭いその像はまるでサファイアのようにキラキラ輝き、模様と本体の境界もはっきりとし、模様の濃淡までくっきりと分かるのです。かたやVC200L…、これは毬藻ですか?筒内気流の影響があるにしても、ボヤンとして何ともメリハリのない像…。100人見たら100人全員がFS−102に軍配を上げることでしょう。ここで初めて切れ味のある像とは何かを思い知らされました。「ミッション赤毬藻」…うーーん、フローライトの像を見たらそうも言えなくなってしまった。

ならばMT−160はどうでしょう。MT−160は形式こそ違うもののVC200Lと同じ反射望遠鏡。多分見え味はそれ程変わらないはずです。しかし、天文ファンたるもの少しの違いでも見分ける力が必要。そう「違いが分かる男、ネスカフェゴールドブレンド」のように。

Y−da、MT−160にも負けとる!!(by 船長っ)

 

ぷぉっ!!自分が見る前からもう審判が下ってしまった!!「そんなことはあるかい」と思っていざ見てみると、…………(無言)。

そう、シャープさはFSに一歩譲るものの像は十分はっきりとしており、模様の濃淡は当然のことあちらこちらに運河らしき細い線状の模様がとびまくっているのです(VC200Lでは確認できない)。こりゃ違いが分からん男でも違いが分かるよぅ…。

ビクセンさん、ここで言わしてください。

「鋭像」の表現の横には是非「当社比」と記載してください。

 

これまで「ビシッと鋭像」のVC200Lに絶対の自信を持っていたY−da、失意のうちに暗闇の中へと消えていくのであった…。しかし、ショッキングな出来事はY−daだけにとどまらなかったのでした。

 

 

 

<ショックを受ける人たちA>

 

この頃からいよいよ撮影が本格的になってきました。ここで、Y−daはデジカメによるデジタル撮影、オクヒデ君と船長っは一眼レフでのフィルム撮影。

そこで自分は彼らの撮影風景を見てとても懐かしい気持ちでいっぱいになりました。「筒先開閉」、…感動せずにはいられません。

筒先開閉とは、カメラのシャッターの振動による像のぶれを抑えるために編み出された匠の技で、@望遠鏡の筒先を黒い紙など遮蔽板で遮蔽しておき、Aカメラのシャッターをバルブ(開放)位置にしてシャッターを切っておき、B遮蔽板を瞬時に動かして露出するというものです。早い話「空手チョップ」の練習をしている光景を思い浮かべて頂ければ分かりやすいでしょう。

この遮蔽板の動かし方如何で露出が決定されるわけですが、1秒とか1/2秒ならまだしも、1/4秒、1/8秒と短くなるとだんだん間隔が曖昧になるのが欠点。ここをいかに正確に動かすかに熟練が求められるのです(いや、機械を使えばそんな苦労はしないで済みますが、それを言っちゃうと身も蓋もありません)。

全員が見守る中、オクヒデ君筒先開閉で写真撮影に挑戦。露出は1/2秒から行くらしいです。呼吸を整えるオクヒデ君を見ると、あたかも力道山の生き写しのようです。まずカメラのシャッターを切りました。そして頃合いを見計らって遮蔽板を筒先から離し、1/2秒後再度筒先にガっツン。…当てちゃいました。多分踊る火星がフィルムに焼き付けられたことでしょう。

 

オクヒデ君撮影の火星(8.24 3:30分頃)

 

MT160にコレクターをつけて焦点距離は1300o。アイピースは純正HiOr4o(325倍)。

アイピースとフィルム面までの距離が正確に分かれば合成焦点もばっちりでしょうが、目測100oといったところで、いい加減です。

フィルムはフジのスーペリアヴィーナスの400。カメラはNewFM2。フォトショップで画像処理を施しています。 

 

   (以上、オクヒデ君 談)

 

一方M氏はと言いますと、持参してきたコンパクトなデジカメで何と手持ちコリメートに挑戦していました。液晶表示をみながら、MT−160のアイピースに結ばれた火星像をデジカメに導入するのですが、まず導入自体が難しい。またうまく導入しても手持ちなので露出中にプルプル動いてしまうのです。正直これは無理な撮影だろうと思っていました。

ところが、です。たしかに失敗はすることはあるのですが、クリーンヒットするととても手持ちで撮影したとは思えないほどきれいに模様が写っているのです。極冠、大シルシルは言うに及ばず、主立った模様がはっきりと。

これには船長っ、オクヒデ君大ショック。「こっちの方がきれいに写るやん!!」

そう、筒先開閉という苦労をしなくとも、また成功したのか失敗したのか現像するまで分からないといった見えない恐怖に怯えることもなく、最近のデジカメはここまでいけるのです。きれいに写るたびに上がる歓声、そして彼らの心に渦巻くデジカメ購入の欲望…。今年のボーナスの行方が楽しみです。

 

 

 

M氏のコンパクトデジカメで撮影した火星(8.24撮影)

 

オクヒデ君のMT−160に手持ちコリメートで撮影した火星です(撮影者は船長っらしい)

手持ちでもタイミングが合えばこれだけ写せます。これもシャープな像を結べるMT−160だからこそでしょう。

画像処理なしの、生の火星をお楽しみ下さい。

 

 

 

 

<土星観望会…そして打ち上げへ>

 

2時半を過ぎた頃には土星が姿を現しました。昇り始めはまだあるのかないのかよくわからなかったものの、3時ぐらいにはようやく明るくなりだし、沈みかけている火星に変わって一躍アツイ眼差しを受けることに。

ここでも、船長っのFSは素晴らしい土星像を見せてくれます。一番薄いと言われるC環は確認できませんでしたが、土星本体の縞模様、A環とB環を隔てるカッシニの空隙がくっきり。ガリレオが見たという「耳あり土星」を現代に再現したかのようなVC200Lの像とは雲泥の差です。またまたショックを受けるY−da。しかし、MT−160とは今度はそれ程変わらないようです。うーーん惑星を見るならフローライト屈折がいいと言うことなのでしょうか?やっぱ、フローライト欲しかなぁ。

M氏ご夫婦は土星を見たあと明日の仕事のためにココで帰宅。是非コンパクトデジカメで撮った会心の一撃集を紹介して頂きたいものです。

我々は、その後土星の写真を撮ったりしながら、4時半まで観望を継続。うっすら空が白み始めた頃に望遠鏡を片づけました。

 

ということで、2001年のしし座流星群以来約2年ぶりの合同観測会でしたが、やっぱり集まって観望すると楽しさもひとしおです。特に今年は近年稀にみる火星大接近の年で、十分に火星が大きく模様が見やすかったのが良かったですね。

次は土星観望会当たりをやってみようか、そんな思いがよぎる今日この頃です。

 

 

ミッション終了後の記念撮影

 

左からオクヒデ君、Y−da、船長っ。すみません、M氏とM妻Tさんが帰宅した

あとに記念撮影したので、お二方はこの中には写っておりません

m(_ _)m

 

 

 

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