ア ナ タ ル 撮 影 会

 

 

<プロローグ>

 

11月22日快晴、この日家内は友達の家を訪問して楽しい会食をするはずでした。

ところが何でも家内の友達の子どもが風邪を召しちゃったそうで、身重の家内に風邪が伝染るといけないということで会食がキャンセル。一気に暇になったことから「どこか連れて行け」とチクチクと自分にリクエストをかけてくるのです。

Y−da: 「ふん、しょうがねぇなぁ。じゃあネコエサ買いに行くからついてこい」

家内 : 「あぁ!?ネコエサ??こんな天気がいいのに、何で近くのディスカウントショップだけよ。どこか連れてけ、どこか」

Y−da: 「んんー?どこに行きたかとや?言うてみれ。」

家内 : 「うーん…。特にないけど…」

Y−da: 「リク無し?はーい、ネコエサ買い出しツアー、けってーーい」

家内がブーブー不満を漏らしますも、ここは聞かぬフリしていそいそ洗車の準備を進めます。こんないい天気ですもの、日頃クルマに積もる埃を落とす絶好の日和。

おっとそうだ。自分の拙HPのBBSでもチェックしておくか。おお、船長っから何か書き込みがあるじゃん。なになに…

 

こんにちは。船長っです。

いい天気ですが、今晩(11月22日夜)あたり、どうでしょうか?船長っは山に行こうかと思っています。

 

ぬはっ!主語もなく「どうでしょうか?」といきなりのツボ押し。もちろんそこは阿吽の呼吸。おそらくは久住リベンジ観望会でもやろうというのでしょう。全く予期せぬお誘いですが、確かに青く澄み渡った空を見ればベランダでモゴモゴ撮影するのは実にもったいない話です。ただ、気になるのは家内の視線。Y−daちょっと上目遣いで

    Y−da: 「あのー、今日さ星見に行っていい?船長っから誘いが来たんだけど…」

    嫁さん: 「あぁ!?…………(5秒経過)別にいいけど? ふーーん、自分だけなんだ。まっよかけどさ。 ヨウケン、父ちゃんはじ・ぶ・ん・だ・け遊びにいくとぞ。じ・ぶ・ん・だ・け

    Y−da: 「………分かった。24日にどこか行こう。行きたいところを考えとけ」

ということで、予想通り終始冷たい視線にさらされながらも半ば強引にOKを取得しました。洗車はやめておくべきでしょう!!

船長っとは夕方にコンタクトが取れ、大体10時半頃に現地で落ち合おうかと言うことになりました。まだ3時間近くは間がありますので、景気づけに一杯。うん、久しぶりのキリン生黒は美味い。

 

 

<これより本編>

 

ちなみに3連休の初日は非常にいい天気に恵まれたものの、ここ数日は冬型の気圧配置が強くなり一気に寒くなりました。久住の時は割と温かくそれ程着込みせずにすんだのですが、今日は念には念を入れて臨まないと凍死しそうです。この日のファッションは、Tシャツとちょっと厚めのYシャツをベースに、NorthFaceのウィンドブレーカ(薄型)、NorthFaceのジャケット、革ジャン、はんてんのフル装備。下もGパンの上からスウェットパンツの、森の熊さんルックで決まりです。現地に到着後すぐにクマに変身しましたが、ちょうどいい案配どころか、これでも少し寒さが染みて来るほどでした。しかし、夜空の方は透明度が抜群。まさに冬の星空らしくきらびやかな星々がきらびやかに輝いています。

船長っは、自分が望遠鏡のセッティングをほぼ終えた頃に到着しました。クルマを下りるなりいきなり

「Y−da、お前今日こそはクルマ洗わんかっただろうな??」

 

く、く、屈辱っ!!もはや「雨を降らせるクルマ洗い師」というのが常識化したと言うことでしょうか。そのうち「窓ガラス拭きで小雨」とか「ワックスかけるとどしゃ降り」とか体系付けられてしまうのでしょうか。いつかこの迷信を払拭してみんなをギャフンと言わせたいものです。

 

組み立てを終えた船長っ機(FS102+SPDX)

この後、光軸修正作業が始まりました。

星座撮影に入ろうとするY−da機(VC200L+EM−200)

久しぶりに望遠鏡を2台載せてみました。

 

取りも直さず、一応のセッティングを完了した自分は極軸の微調整を行います。その間に船長っも望遠鏡を組み立てたのですが、その後に何やら怪しげな行動を始めました。望遠鏡の前と後ろをひっきりなしに行ったり来たりするのです。そしてその度に「うーん、やっぱりずれちょるなー」と悩んだかと思えば、「お?お?何か来たぞ?」と嬉々とした声を発したり。端から見れば本当に怪しい。

実は船長っの望遠鏡は光軸が狂っていたのでした。久住アナログ会の後、望遠鏡の清掃をしようとして対物レンズユニットを外してしまったのが悪夢の始まりだったとか?これまでに何度か光軸調整を試みたようですが、今ひとつ納得できなかったのか現場で調整を始めたのです。よもやこういう事態になるとは…。メンテ要らずのはずの屈折望遠鏡…、その意外な苦労が見え隠れしたひとときでした。

しばし光軸調整に時間を費やした船長っですが、土星の見え具合とかリゲル(オリオン座の1等星)の伴星を確認できたことでどうやら納得できたようです。「よし、あとは極軸の微調整をするぞ」と張り切る船長っ。…あれ?セッティング(北極星の導入)はやってたっけ?(普通は北極星の導入→微調整というステップ)

「おお?なんじゃぁ?星が思いっきりズレていくばい。…あー!!そうやった!光軸修正に夢中で、北極星ば合わせとらんかった!!」という叫びが聞こえたのはそれから数分後のことでした。

 

そうこうしながら、本格的に撮影に入ることが出来たのは(多分)12時を過ぎた頃からだったかと思います。自分の方は土星の撮影が目的ですが、まだ望遠鏡の筒内気流が収まっていないようなので、カメラで星座の写真でも撮りながら筒内気流が収まるのを待っていました。それにしても今日の夜空の何と澄み渡っていることでしょうか。これなら星座の写真もなかなかコントラストよく写ってくれそうです。まずは土星が輝くふたご座に始まり、定番のオリオン座、シリウスの輝きがひときわ目立つおおいぬ座

 

ふたご座と土星

横向きになっています。中央やや右斜め上の明るい星が土星です。

どうもスキャナで取ると、細部の写りがいまいち…。

オリオン座

バラ星雲を一緒に写すためオリオン座を少し中心から外しました。

薄いですが、一応バラ星雲も写ってくれました。

 

しかし、星座の写真を撮るだけじゃモノ足りません。今日は久しぶりに望遠鏡を2台セットしているので、是非20cmでオリオン大星雲の超望遠撮影(直焦撮影)にも挑戦することにしましょう。過去幾度となく直焦撮影を試みながらもことごとく失敗するという有様でした。およそ10年ぶりの挑戦と言うことになるのですが、スカッと一発気持ちのいい結果をゲットしたいモノです。

ピントは船長っに合わせてもらいました。なにせ、ピンぼけ王と自認する自分です。とにかく直焦撮影の失敗の全てがピンぼけで、いつもビクビクしながら撮影に臨んでいたものです。船長っに見てもらえれば少しはプレッシャーが取り除かれることは間違いなし。しかしその船長っも「おおー、何やこのカメラは。どこでピントが合うのか分からんぞ」と。

そうか、もしや今までピントが合わなかったのは自分の技術が未熟なせいではなかったのかも?

「多分これで合ってるやろう…と思う」とちょっぴり自信なげな船長っの言に全てを託して、いよいよ10年目のリベンジ。被写体は言うまでもなくオリオン大星雲です。もう一つの望遠鏡で星のズレを修正しながら緊張のウチに撮影を開始。…ぐわっ!!!ズレを修正しすぎて変な方向にずれてしまったぁ(心の叫び)!!…ぎゃぁ!!!車のライトが望遠鏡に飛び込んできたぁ!!…うゎぉ!!モーターが動かん、ズレを修正できん(心の叫び)!!!

わずか撮影枚数4枚、総時間高々30分という実に刹那の間でしたが、精も根も尽き果てました。

 

オリオン大星雲の超望遠撮影

 <とりあえずデータ> 11月23日1:16〜1:21

                

結局ピントは合ってなくて、よく見ると暗い星はドーナツのように中心がぽっかり穴が空いて

いるのが分かると思います。

おまけにズレの修正がうまくいかず、星が斜め方向に流れてしまいました(ToT)

それでも、今まで撮った中では一番ピントが合っているし星の流れ具合も少なくなりました。

もう少しです。頑張ります。今度載せるときはきっと目から鱗が落ちるような鋭像をお見せします?

 

直焦撮影はまだまだ課題山積みの結果となりましたが、今回は一応ウォーミングアップと言うことにして自分を慰め、次はメインの土星の撮影に移りましょう。もう筒内気流もほぼ収まっているようだし、土星も頭上高く昇っています。大気の影響としては今が一番受けにくい状態です。ただ、問題なのが「土星が真上にある」ことなのです。何故かと言うと、望遠鏡も真上を向けるのですが、この時接眼レンズは真下に来るわけです。地上から接眼レンズまでの高さ約60cm。この高さで真下からのぞくにはアクロバティックな姿勢を必要とします。単に体を横に曲げるだけならイイですが、さらにここから体を曲げた方向とは逆一杯に首を回さないといけません。くわーっ、首がつるぅ!!

ベランダ観測では頭上は上の階のベランダに隠されるので観測できませんが、今回は遮るモノがありません。これは観測条件としては非常にいい反面、観測姿勢としては非常に宜しくなく、果たしてこの日は体中をプルプル震わせながら土星も見るのでした。おそらく翌日の筋肉痛はこのアクロな姿勢が原因だったことはまずもって間違いないでしょう。

同じ状況下にある船長っも、向こう側で「くぅ〜」と悩ましげな声を上げていたことをとりあえずここでご報告しておきます。

4時頃には木星も程よい高さになり、ここで初めて今シーズンの木星ファーストショットを狙ってみました。木星の場合は土星よりも輝度があって撮影しやすいのですが、自分の望遠鏡で見るとどうもピントが甘く、今ひとつカチッとした像になりません。一方船長っのフローライト屈折は相変わらずシャープな像で、土星にしても木星にしてもエッジの効いたイメージが自分の心を揺さぶります。通常シャープな像は「キレのある像」と言いますが、船長っの望遠鏡で見る惑星はそれこそカミソリで切りまくられたよう。対して自分の望遠鏡でみた惑星はおもちゃのカタナで切ったような感じですか。うーーーん、本気で屈折望遠鏡を買っちゃおうかなぁ。

 

頭上付近の天体を見るときの姿勢

デジタルビデオカメラで土星撮影中の船長っ

土星(11月23日 2:00撮影)

1230枚をコンポジット

木星(11月23日) 4:34撮影)

1709枚をコンポジット

 

5時半頃になると空も白み始めてきました。そろそろ切り上げ時です。薄明が始まると結構速いペースで空が明るくなってきて、片づけの合間に明るくなる様子を眺めていたのですが、地平線から空に向かうにしたがって橙、白、薄青、青、黒とグラデーションをかけたような色彩が幻想的な風景で思わず見とれてしまいました。良く見れば白い光の中に今にも消え入りそうな非常に細い月もありました。そういや、つい半年前にたしかこれくらい細い月に金星が隠される現象を見たものでした。ほとんど光の中に埋没している月を見ると、よくあの時は真っ昼間に見つけることが出来たモノだと感心してしまいました。

 

なお余談ではありますが、船長っはこの翌日もオクヒデ君と一緒に夜を徹して天体撮影に明け暮れたそうです。自分はこの日一度の観測会で体力を0付近まで消耗したというのに何という恐るべきタフさを持っているのでしょう。自称18歳に偽りなし。さすがです。

また、その撮影結果は、いずれも10cmとは思えない素晴らしい出来で、目から鱗が落ちた次第です。

 

日の出前の風景

 

中央やや右寄りに、白い光の中にうっすらと小さい月が

見えているのが分かるでしょうか。

 

 

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