チョクショーにチョーセン

 

                                          

 

 

<晴れた夜空が呼んでいる>

 

3月13日土曜日、素晴らしき快晴が「今日は洗車日和だよー」と語りかけてきます。それと同時に「今日は星見日和だよー」とも語りかけています。洗車と星見、自分にとっては相反するこの2つの事象(洗車する→空曇る→星見れない)。どちらを選べと言われれば、いずれも捨てがたいところです。予報では今日1日は晴れマークになっていますし、まさかこの天気が曇ると言うことはないでしょう。決まりです。どちらも実行しちゃいましょう。朝に洗車、昼に姫さまのご機嫌でも伺って夜は天体撮影と行きましょう。

今回の目的は2つです。一つは「ハッブル宇宙望遠鏡で写したような土星の写真」を撮ること。もう一つは悲願のチョクショー(直焦撮影:天体望遠鏡を望遠レンズ代わりにして星を撮ること)を成功させることです。

何しろ、前回の土星撮影はノイズ乗りまくりで全然納得いかない出来でしたし、直焦撮影はピントずれまくりの星ずれまくりでまともに撮れたことがありません。短焦点屈折を買ったからには、何が何でも直焦撮影を成功させねば。…せめてピントだけでも合わせなければ。

 

午後7時。ろくな食事を摂ることなく機材を詰め込んでいつもの山へと出向きます。おっとその前に「船長っの船」に、星見に行くことをそれとなく匂わせておきましょうか。ちょうどオクヒデ君が20日辺りに計画していると書き込みしていたので、そのレスとして「ちょっくら行ってきま〜す」と書いておきました。…1時間後、船長っから携帯に電話。ふふふ、乗ってきてくれました。息子どのを風呂に入れたら出向いてくるそうです。食いついてくれたのはウレシイですが、奥さまが怒らないかちょっと心配になってきます。なんせ、その前日の12日は思いもかけぬマッツン歓迎会で、自分の強引な呼びかけに後ろ髪引かれる思いで来たそうですから。このままではいずれ船長っ宅出入り禁止になるかもしれないなぁ、と思うと今後の善後策を考えずにはいられなくなるのでありました。

ともあれ途中渋滞に巻き込まれながら、現地に到着したのは8時半。西の方角が山手に遮られるこの場所では、かろうじて金星が木々の間から見え隠れしていました。このところよくお世話になっているkussiさんのHPで見事な金星の写真が紹介されていたので、少なからず刺激を受けていた自分としてはこの機会に是非写しておきたいと思います。ところが当の金星は沈むスピードの速いこと、従来にないほどの素早さで機材のセッティングをしたというのに、望遠鏡を向けたときには影も形もありませんでした。ガッデム!!次回目標はどうやら金星撮影に決まりだな。

 

 

 

<戻らぬシャッター>

 

金星撮影に失敗しましたが、本来の目的である土星の方はまだまだ空高く輝いて……雲が出とるっ!!

何と言うことでしょう。さっきまでは雲一つなかったのに、薄雲がさしてきたではありませんか!しかも、「星が見えなさそうで見える」という性根が腐った雲です。これが一面曇天になるのならまだ諦めがつくんですが…。まぁ、ちょっと時間が経てば晴れそうだし、ここは継続しますか。そうこうしている間に船長っも到着したことだし。

とりもなおさず土星を撮影しましょう。鬼太郎くんを望遠鏡にセットしてPCにつないでからPCの電源を入れます。…(PC起動中)…………

プツッ ←PCの電源ダウン

 

ゑぇゑ!!何でPCがこけるんだ!?ちゃんとクルマから電源取ったというのに?…あっ、コンセントの差し込みを一つずらしてた…。そりゃ落ちますわな。

気を取り直してもう一度PCを立ち上げ、モニタ上に土星を写し出してみました。おぉ、スゴイ!カッシニの隙間とか中央の縞模様がちゃんと見えていますバイ。いい感じです。これならハッブル宇宙望遠鏡のごとき土星が撮れるのも夢ではありません。流れる雲も何のその。2、3枚ほど動画を撮って後日の処理に期待します。

 

(左)土星

3月13日20時48分撮影

(右)木星

3月13日23時44分撮影

 

好シーイングに助けられて、今回やっとまともな土星を撮ることが出来ました。環の濃淡や土星の色も良く出たと思います。余は大満足です。

 

それにしても、雲が晴れる様子がありませんねぇ。何てイヤらしい雲なんでしょうか。今日はあまりの晴天に気合いが入りすぎてホイールを洗ったんですが、これがいけなかったんでしょうか。そう言ったら、船長っはいたく納得してました。

まぁ、ところどころで晴れているところもありますので、その辺りを狙って直焦撮影にシフトすることにします。特にオリオン座やおおいぬ座辺りが狙い目です。

フィルムを装填し、2、3回ほど空撮りして…。おや?…あれ?あれ?あれ?

シャッターが戻りません

レリーズをリリースしたのに、シャッターが開いたまま戻ってこないのです。

何と30数年モノの熟成された化石カメラはここに来てひきつけを起こしちゃいました。初めはポンポンとやさしく震動を与えてシャッターを戻そうとしましたが、次第に荒くなってくるその叩き方。1分後はほとんどビンタです。実はこの間、シリウスが撮影されていたことなどつゆ知らずベシベシ叩いていたのでした。

 

踊るシリウス

 

「踊るシリウス」。出来上がった写真を見ても最初は「何コレ?」と思いました。久しぶりのヘボショットです。見れば見るほど、その時いかに慌てふためいていたか、憎らしいほど鮮明に甦ってきます。

それにしても困りましたね。何度やってもシャッターが閉じないところを見るとどうも慢性化してしまったみたいです。これではせっかく時間をかけて撮っても、最後のビンタで全て台無しになってしまいます。…しょうがない、撮影時間が完了したら一度望遠鏡のキャップを閉めて、カメラを叩いてシャッターを戻すことにしましょうか。全く、いつも一筋縄でいきません。これがワタシのスタイルなんですかねぇ。

 

 

<撮っても撮っても>

 

まぁ、いくつか問題はあるようですがかろうじて致命傷は免れているみたいですので、直焦撮影を始めます。最初はやはり「オリオン大星雲」です。撮影中に星がずれないよう、ガイドアイピースを使って星のずれを慎重に修正します。慎重に慎重に(…略…)慎重に、ぐわっ!ずれたっ!!だ、大丈夫。ほんのちょっとずれただけだから、きっとそんなに星は流れていないさ。でも念のためもう1枚撮っておきます。←でもやっぱりずれた。

面倒だ!!星のズレを修正するなんて緻密な作業は次回だ次回!!大体、今日は雲多いし真剣にガイド撮影してもどうせまともに写りゃしないんだ!!

本日はノータッチの直焦撮影にケッテーイ。こんなことならサブスコープ持ってこなければ良かったですねぇ…。

しし座の銀河、おとめ座の銀河、りょうけん座の球状星団、へび座の球状星団、と次々に撮影していきます。あざ笑うかのように雲は遠慮なく流れていきます。

ワハハハハハ…もう、どうにでもなれ!

 

 

 

 

 

 

上: M42(オリオン座)

右上: M3(りょうけん座)

右下: M5(へび座)

右側はノータッチで撮りました。やっぱり星が流れちゃいました。

 

ということで半ばやけくそ気味に撮った直焦撮影は、案の定雲に覆われたコントラストもへったくれもない写真になりましたが、それなりにいい結果も中にはあって、やっとまともな写真になってきたな、という実感が湧いてきました。直焦の成功を夢見て十数年、今ようやくその階段を一歩上がったのであります。後は財布との相談をしながらただひたすら精進あるのみ、です。

ちなみに、船長っは木星のビデオ撮影をやっていました。船長っも本当は星雲の直焦撮影をしに来たのですが、いざ蓋を開けてみると夜空は雲だらけ。長時間の露出を必要とする星雲撮影が満足に出来るわけもなく、現に撮影を強行したY−daはすっかり火だるま状態です。雲がなくなるまで惑星撮影で時間を潰す船長っ。ところが木星の写真を撮りに来たわけではないので、バッテリーは1本しか持ってきてなくて、しかもついてないことに途中でバッテリー切れを起こしてしまったのです。撮影が始まるとそこは競馬の世界。いつ切れるか分からないバッテリーを相手に、「それ頑張れ!もう少しや!」とむち打つ船長っの姿が涙ぐましいです。でも、そんな船長っのエールに応えてか、瀕死状態のバッテリーはかろうじてその役目を果たし、翌日恐るべき木星のショットをたたき出す原動力となりました。この木星はいずれ船長っのHPで紹介されることでしょう。とても10cmで撮ったとは思えない写真ですので、是非見てみることをオススメします。

空の方は3時ぐらいになると一面ベタ曇りになってしまって、全く見えなくなってしまいました。明け方まで粘るつもりだった船長っも、結局1枚直焦撮影しただけで断念。不完全燃焼状態でこの日の観測を終了しました。

 

観測後は久しぶりにリンガーへ直行し、朝の4時前だというのにチャンポンと餃子とおでんを食って帰宅。翌朝もたれながら画像処理に励んだのは言うまでもありません。

 

  

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