突 風 撮 影 会

 

                                          

 

 

<再び晴れた夜空が呼んでいる>

 

3月26日、日中は恐るべき快晴でした。雲一つない日本晴れ、透き通った青空は透明度の良さをアピール。唯一気になるのは風が少し強めなことですが、こんな空を見せられてしまうと私の心も魅せられてしまいます。そうです、自分はこんな空を待っていたんだよ。

先週の19日は新月で、船長っ、オクヒデ君とともにレディゴー(注:気合いを入れて出向くときに出る言葉で、オクヒデ君の登録商語)したんですが、一晩中雲に覆われ結局嘉門達夫コンサートとなってしまいました。

この日は、不完全燃焼に終わった19日のリベンジを果たすにふさわしい空です。

会社はフレックスで4時上がり。5時に自宅を出発し、6時前にリンガーハットでダブルチャンポンと餃子とおでんとおにぎりという成功祈願セット(?)を食べ、いつもの山へと出向きます。

このあたりは普段暗くなってからしか通らなかったのですが、日が明るい内に行くとなかなか景色が良く、特に満開の桜ロードが延々と続いていて、その美しさにビックリウットリ。これなら、午後休暇取ってゆっくり桜散策しながら出向けばよかったです。

ちなみに、今回も船長っやオクヒデ君にそれとなく匂ったメールを送ってみましたが、船長っは週末も出勤、オクヒデ君は週末にかけて飲み屋街にレディゴーということで、星見出動はできなかったようです。ここのところ、集団で星を見る環境に慣れていたので、ちと寂しい一人撮影会となりました。

 

 

 

 

<見上げれば雲>

 

現地には6時半頃到着しました。車外に出ると思ったより北風が強く、体感温度は真冬並み。あまりの寒さに今日の防寒レベルは最大の「樹海の熊さんルック」。これまでは「森の熊さんルック(昨年11月)」や「林の熊さんルック(2月や前回)」と、比較的中〜低レベルの着込みで対処できたのに、今頃になって最大レベルに引き上げるとは思いにもよりませんでした。おかげで動きにくいこと。

望遠鏡の組み立てが終わり、まずは以前見ることが出来なかった金星に向けてみます。久しぶりの金星は半月の形をしており、非常に明るく目が潰れそうです。

さすがにこれだけ明るいと紫色のにじみも目立ち、青金色という不思議な色合いです。おまけに強風の影響か、シーイングが乱れに乱れまくって視野の中でたこ踊りするから始末に負えません。無駄と知りつつToUcamで撮影してみましたが、案の定画像処理の結果は青いクラゲがゴーストをまとってブヨッと膨らんだものばかり。かろうじて見るに堪える金星はわずかに1枚と寂しい出来でした。

 

金星  (3月26日撮影)

 

さてこの日の予定としては、金星や土星を撮影した後に9時ぐらいまで極軸の微調整を行い、9時からは木星の撮影、12時過ぎ頃から本番の直焦撮影、と目論んでいました。

この日、木星ではイオとエウロパという衛星が木星面を通過していく現象が9時頃から見られ、特にイオの影がエウロパの影に追いつき追い越すという面白い場面に遭遇するのです。時間にして9時ぐらいから12時20分までの約3時間半。これを約20分おきに撮影して衛星と衛星の影の動きを追ってみたいと思います。

一連の現象を追うにはおよそ10回の撮影が必要となります。1回の撮影に要するHDD容量(注:ToUcamで撮った動画はPCのHDDに保存される)を約450600MBとすると、最大約6GBの容量を必要とします。ううっ、今のHDD残りが6.3GBしかないから、終わってしまえば残りの要領は高々300MBになっちゃいます。これではPCの処理そのものが危ういですね。

撮った動画はすぐLHAで圧縮しないといけませんか。圧縮すれば大体10分の1にサイズを抑えられます。経験上450MB600MBのファイルを圧縮するのに要する時間は、約7〜10分だったなぁ。・・・??待てよ?PCの完全起動には大体3〜4分かかるので、撮影する5分前にはPCを立ち上げる必要があります。

 

そうすると、(PCの起動時間)+(撮影時間)+(圧縮時間)+(PCのシャットダウン)=5分+2分+10分+1分=18分。うぉつ!!これではPCをシャットダウンしてもすぐ起動しなければならないではないか。そしてその間クルマは延々アイドリングを継続しないといけないのか。これでは自然保護団体に訴えられそうです。

さすがに全ファイルを圧縮することは止め、3つ程度を圧縮することで進めてみましょう。これならトータルで約4.5GB程度に抑えられるはずです。

よし!これで方法は決まった。さぁ木星撮影に入りましょう、って、雲出てるじゃん!!

何と言うことでしょう。確かに先ほどから薄い雲が張ってはいたのですが、ここにきて厚みを増してきたのでした。

 

 

 

<断腸の思い>

 

雲は、星が沈もうという西の方角はほとんど流れず、木星のある天頂付近から東にかけてはひっきりなしに流れて、南の方角にどんどん溜まっていってます。何というふざけた雲でしょう。石投げてやる。

・・・くさってもしょうがないですね。一応晴れたり曇ったりしているので、晴れ間を狙って木星を撮ってみましょう。いそいそPC立ち上げてToUcamつないで、モニタ上に木星を導入して・・・、う゛っ、木星がグニャってます。極々たまに衛星が見えたりしてますが、アメーバのような木星を見ると、「このまま続けるべきなのか?」と自問自答したくなります。

・・・悩んでもしょうがないですね。一応時間が経てばシーイングが良くなるかもしれませんし、それを期待して始めましょう。

ということで、撮影→シャットダウン→クルマの中で休憩→PC立ち上げ→撮影、の単純なルーチンを繰り返します。クルマの中で休憩を取っていると、時折ゴゥっと突風が吹いてクルマが揺らいだりしてます。おおお?外に出している機材は吹っ飛ばされないだろうなぁ。

シーイングは、時間が経っても一向に改善の兆しが見れず、逆にますます混迷の度を深めてきました。衛星の影が見えているだけでもまだマシといった感じで、それを発憤材料にしてまだ撮ろうとする自分がいじらしいです。

0時20分頃に一連の現象がほぼ終わり、とりあえず今日の目論見のうち木星撮影までは(結果は求めないものとして)完了。後は直焦をやるかどうかです。

20:44撮影

木星の左側にイオ(右)、エウロパ(左)が今まさに木星面を通過しようとしているところ。

22:40撮影

イオの影がエウロパの影を追い越そうとしているところ。衛星本体は影よりもやや左側にあります

23:58撮影

木星の左側にイオとエウロパがほとんどくっついたような格好で通過終了。

 

直焦をやるかやらざるべきか、正直言いますと木星撮影の途中からやる気はかなり冷めていました。寒いし、風はひどいし、雲は多いとあっては、心の内は氷点下の世界と言っても過言ではありません。

大体、極軸のずれを確認しようとガイドアイピースで星の動きを注視していたら、突風が来るたびに許容円を超えて星が「さいならー」とはるか彼方にすっ飛んでは、おもむろに「ただいまー」とちょっとずれた位置に戻ってくる始末なんです。とても頑張ろうという気になりません。

ということで、木星の撮影を終了した時点で断腸の思いに駆られながら機材を片づけることにしました。

イオが自宅に戻ってくると今後遠征することもままならず、この機会を逃せばしばらく直焦は出来ない可能性がありますが、夏ぐらいに一度カムバックすることを夢見てここはじっと我慢の子。当分は直焦成功への対策をじっくり練りたいと思います。

で、お約束なんですが、機材を片づけた時点でピタッと風は止み、自宅についた時点で晴れ上がる・・・。

あぁまたまたアクタガワになってしまいそう・・・。

 

  

 

 

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