Project ED(番外編)

 

                                          

 

<そして物欲は始まった>

 

ED115Sを手に入れて約2ヶ月。眼視、撮影に大いに活躍し、特に木星や土星の撮影においては期待以上の成果を出してくれています。今後は悲願の直焦撮影で、いろんな星雲・星団のクローズアップ写真をゲットしていきたい・・・て、これまでしつこいほど書いてきました。

この15年近く直焦撮影にチャレンジしながらことごとく跳ね返されてきた自分は、いつしか「直焦成功3箇条」というものを掲げるようになりました。どんなことかと言いますと、

 

          @赤道議は頑丈で、2軸モータードライブが備わっていなければならず、追尾精度も良くなければならない。

          Aガイド用のサブスコープは、EDレンズかフローライトを使った高性能な望遠鏡でなければならない。

          B使うカメラは、軽いボディーでかつピントが合わせやすいファインダーをもっていなければならない。

 

というわけです。その根拠?あえて言うとしたら、直焦撮影に失敗した責任を機材に押しつけたというところでしょうか。

ただ、3箇条を掲げたとは言っても実際のところは@以外達成していないわけで、あとは

 

          Aガイド用のサブスコープは20年前のアクロマートで我慢しているこの現実

          B使うカメラは30年前の骨董品(重いボディー、見にくいファインダー)で粘っているこの事実

 

で頑張って参りました。それでも最近になって一応標準的なレベルに近づいてきたので、今のシステムでも何とかなりそうな感触はありました。ですから、特に3箇条を遂行する必要もないかも。大体出費自体もバカにならないし。

・・・と、そこで終われば苦労しませんわな。

先日、Yahooオークションで望遠鏡関係の項目を見ていたら、ビクセン天体撮影用カメラVX−1なるものが目に飛び込んできましたした。ビクセンが天体撮影用に開発した一眼レフボディーで、たしか10年以上前に出たヤツだったと思います(今はVX−2に移行)。

当時欲しくて欲しくてたまらなかったのですが、本体価格が2万円を超えているし、結局買うことなく今に至っていました。それが今、オークションで何と1500円で入札中とあっては、見逃すわけにはいきません。もちろんオークションですから今後価格が上乗せされていく可能性もありますが、もしこれを手に入れたら3箇条のBを達成し、直焦撮影成功にまた一歩近づくわけです(?)

物欲です

「4000円までだったらいいよね?」誰に言うわけでもなくつぶやきながら、初めてのオークションに参加。こう言うときのフットワークってホント軽いです。

 

ところで、オークションはこれまで漫然と見ているだけでしたが、じっくりと見るとVX−1のように意外な掘り出し物もあって、おっ?と目を引くモノも少なくありません。

その中で再び物欲を醸し出しそうなアイテムが目に飛び込んできました。ボーグ76ED改 コンパクト化 3万円でした。見てみると、ボーグの76EDのレンズをビクセンの鏡筒に組み入れた異色の組み合わせです。おお、これって自分が思い描いているサブスコープにちょうどいいじゃん。3万円は仕様面から考えると妥当な金額だと思います(オリジナルのボーグ76EDは実売7万円弱)。ただ今後入札が増えていく可能性があり、多分5万ぐらいで落札される可能性が大だねぇ。うーーん、そう考えるとやっぱり高い。ここは冷やかし程度に入札状況をチェックしておくことにしました。

 

 

 

今回出品されていたボーグ76ED改

ボーグ76EDのオリジナルはこんな感じです

 

ところが改造品ということもあってか、このED哀しいくらい全く入札が増えません。わずかに1件しか入ってなくて、入札金額も開始価格の3万円のままなのです。他のタカハシFC−76とか、ビクセンFL80といったほぼ同クラスの望遠鏡が右肩上がりに入札&金額が増えていくのとは大違いです。

こんな76EDの動向を見ていると、何だか自分を誘っているようにも見えてきます。もしここでEDを買ってしまえば一気に3箇条が達成されるわけです。あぁ、そう考えると黒色のボディーはまさにブラックエンジェル。ジッと見つめていればそのうちスポークで刺される恐れがあります(分かる人には分かる)。早く入札が増えて自分の燃えさかる欲望を消火してほしいゾ。

しかしそんな期待も空しく、入札は増えても残り2日を切ったところでその金額3万3千円。ここで、自分の分身がいつものように激しい葛藤劇を繰り広げます。

    分身A:「ほら、3万ちょっとでEDよED。」

    分身B:「いや、いかんいかん。3万円と言えば大金。これ以上のカンフル剤は麻薬になってしまうじゃないか」

    分身A:「せっかくVX−1も手に入りそうなんだから、一気に3箇条達成して直焦完璧セットを作り上げようぜ」

    分身B:「機材を手に入れたからと言って、成功するとは限らないって。今の機材で成功することに意義が・・・」

 

入札実行!!やっぱりEDの魅力には勝てません。大体、分身が登場した時点で負けだったのです。

入札は終了間際にやることにしました。と言うのも、今入札すると堰を切った洪水の如く一気に入札が増えていく恐れが考えられるからです。自慢じゃありませんが、自分は人を呼び込む招きネコ体質なところがあって、人のいない店に入るとそこからどんどん客が増えていくということ現象が少なくないのです。

入札は終了5分前、卑怯と言いたくば言ってくれ!こんな心境です。

ちなみに当初計画した入札の上限は、3万6千円。なんとなれば、VX−1が4千円で落札出来る見込みだったからです。実購入価格を切りよく4万円とするには3万6千円しかなかったのです。…とかなんとか偉そうに言いつつ、入れた最高入札額は3万8千円。・・・ポリシーとは何ぞや?

さぁ、5分前になりました。入札します。これで5分間ドキドキすればいいのです。あれ?終了時間が更に5分延長されちまった…?どうやら自動延長の設定がされてあって、終了5分以内に入札したために、更に5分間延長されたのでした。セコい生き方は許してもらえないものなのね。

幸いにして他の入札はなくボーグ76ED改造品は無事自分が落札、ついでに元々の目的だったVX−1も4千円で落札したのでした。

これで、直焦成功祈願3箇条は全て満たされ、失敗しても言い訳が出来なくなりました。

でも、その前にどうやって家内を騙そうかしら?

 

 

 

<その名は‘防具’>

 

4月10日に落札して12日に入金。VX−1は13日に、76EDは15日に届きました。届け先は当然自分の実家です。自宅に持ち帰る際に特に76EDなんかは結構な荷物になるのではないかとちょっと心配でしたが、何とその長さ高々33cm!スクーターに取り付けているボックスの中にすんなり入る大きさでした。

おまけに、さすがに中古とあって外観はそれほど綺麗でもなく、つや消しの黒い鏡筒は所々でテカっている部分も。こりゃ好都合です。家内に見つかった場合は「昔の望遠鏡が出てきた」と言っておきましょう。

さて、自宅に戻って早速中身を取り出してみましょう。梱包内容は、「76ED本体」「2インチ天頂ミラー」「鏡筒バンド」の3つでした。鏡筒本体には2インチ天頂プリズムを取り付けるためのアダプター類があって、そのウチの一つは引き出し式の可変長チューブになっています。ほほー、ドローチューブをいっぱいに引き出しても焦点が合わない場合は、ここのチューブを更に引き出すわけですな。なるへそ。

ところで、元使用者の方はこの望遠鏡を2インチサイズ(50.8mm)のアイピースで観望することをメインにしていたと見受けられますが、自分は2インチサイズのアイピースを使うことはほとんどなく、もとよりガイドスコープとして買ったわけですので、自分がいつも使っている31.7mmサイズのアイピースが使えるようにしなければなりません。

そこで、去年火星撮影用に買って最近全く使われなくなったデジカメアダプターの登場です。このデジカメアダプターのうちアイピースホルダーを付けてやればいいわけで、取り付け径は同じですからおそらくピッタリ合うはず…おお!!テトリス!!(ピッタリはまったときの感動語)

 

納入された時の状態

デジカメアダプターの部品と交換(2インチサイズは撤去)

デジカメアダプターの接眼部を取り付けた状態

 

我ながら自分の読みの鋭さについつい酔いしれました。これで何とか31.7mmサイズのアイピースを取り付けることができるようになりました。あとはこれでピントが合うことを確認できれば、とりあえずすぐにでも使用できそうです。…う゛っ!合わねぇ!

困ったなぁ。右のように天頂ミラーを使って90度曲げた状態だとこのままでピントが合うのですが、天頂ミラーを使わずにストレートにアイピースを入れてしまうと全てをいっぱいに引き出してもピントが合わないのです。ということは、76EDで直焦撮影しようとすれば今の状態ではピントが合わない可能性があります。うう、どげんすっべぇ?

…まぁいいや。あとで考えます。ガイドスコープとしてなら天頂プリズムはいつも使うわけだし。

 

レンズ面はそれほど綺麗というわけではありませんで、コーティングが剥げたようなムラが見られます。一番ビビッたのは、レンズの表面に黒い煤みたいなのがびっしりとこびりついていたことでした。初め「うおお?レンズに傷が入ってるんかぁ!?」と目の前真っ暗になりましたが、レンズ表面にブロアーをかけるとあっさり吹っ飛ぶんです。どうやらゴミみたいですね。ちょっとホッとしました。でも、この黒いヤツ何なんでしょうね。…あっ分かった。フード内部の植毛紙じゃん。

そうなんです。この鏡筒はコンパクト化を狙っているためフード部もスライドできるようになっているんですが、内側に張られている植毛紙が劣化してあちこちで細かく千切れているのでした。そのカスがフードをスライドさせるたびにとれてしまってレンズに付いてしまうわけです。もちろん、さっきのようにブロアーをかければ吹き飛びますんで致命傷には至りませんが、これ毎回掃除せんといかんの?スライド機構も一長一短ですねぇ。

なお、フードのスライドは割と渋め(固い)です。ED115Sの鏡筒バンドのように「滑る」ような滑らかさではありません。

とまぁ、スライドフードについてはあまり好印象はあまりないのですが、それでも縮めた時のコンパクトさは恐るべきものです。さっきも書きましたけど、スクーターのボックスに入っちゃうんですよ。一番縮めた場合は約33cm、普段使用するときが大体50cmなので約20cmも縮んでしまうのです。

 

縮めた状態(上)と

一番引き出した状態(下)

 

ただし、下の一番引き出した状態でも、天頂ミラーを使わない場合はピントが合いません(ToT

アイピース直視でピントを合わせるためには更に延長チューブを付ける必要があり、その場合は更に5cm程長くなるようです。

 

フードの内側のフェルトがレンズに付着している様子

最初見たときは、コーティングがはげるどころか、レンズに傷が入っていると勘違いしてしまいました。

コーティングが薄くなっている部分もあるのですが、この写真では分かりにくいです。

 

 

次にビビッたのが、ファインダー取り付け部に固定ネジがなかったことです。実はこの機種を落札しようと思ったのも、鏡筒部がビクセンのものを流用していたからで、その理由というのが今持っているファインダーをそのまま取り付けられると踏んだからです。ところがいざ見ると固定ネジがありません。ぐわっ!不覚じゃ。

何とか使えるネジはないものか。しかし、探せど探せどネジ径が小さくてなかなかフィットしません。1時間ぐらいかけてようやく径が合うネジを見つけたときは涙が出そうになりました。

これで、ガイドスコープ側にもファインダーが付けられます。イヤ、助かった。

鏡筒にファインダーを付けてカメラの三脚に取り急ぎ載せてみました。うーーん、コンパクトさと相まって意外とカッコイイじゃないですか。カラーリングのミスマッチはこの際置いときましょう。どうせ、これをED115Sと並べると益々ミスマッチが際だつことですし、ここで四の五の言っても仕方ありません。

さて命名式です。オリジナルは「ボーグ76ED」ですが、これは改造品でもありますしなにやら漢字が似合いそうなブラック基調ですから、「防具」としましょうか。よし、いまからコイツは「防具76ED」に決まりです。

ちょっと冷や汗をかくような場面もありましたが、一応これでガイドスコープの新調も目処が立ちました。あとはこれをED115SとともにEM200に搭載して、「直焦撮影成功祈願セット」を組み上げるのみですが、育児に追われる身とあっては実戦投入の機会を探し出すことから一苦労です。せめてニート彗星、リニア彗星の観望好機前に一度は祈願セットの使い心地を試してみたいんですけど。

今のうちから家内に派遣申請をしておかなければならないようです。

 

固定ネジがない!

何とかネジを見つけてファインダーを搭載

とりあえず完成した状態

 

  

 

 

                                前に戻る    観望大作戦2に戻る     次に進む