直焦成功祈願セットの船出

 

 

 


<直焦成功3箇条プラスツー>

 

 

以前プロジェクトED番外編で、「直焦成功3箇条」というものを紹介しました。で、ビクセンVX−1が引き金となってとにかく機材という機材をかき集め、めでたく直焦成功祈願セットを組み上げたわけです。

 

      撮影用天体望遠鏡: ビクセンED115S

      ガイド用天体望遠鏡: 防具76ED(3箇条のうちの2番目)

      赤道儀: タカハシEM200(3箇条のうちの1番目)

      カメラ: ビクセンVX−1(3箇条のうちの3番目)

      ガイド鏡搭載用マウント: ベルボンカメラ雲台PH250

 

 

 

ところが、このシステムでいざ撮影に臨んでみれば、VX−1はシャッターが勝手に切れる不具合があるわ、ベルボン雲台はガイド鏡の自重に根負けしてシレッと傾くわ、微動装置が無いカメラ雲台では星の導入に苦労するわで、あっさりと見直しを余儀なくされてしまいました(骨折り損のくたびれ撮影会参照)。これで、自分は思い直したのです。すなわち、

 

      追加その1: Y−daが扱うカメラはやっぱりデジタルでなければならない

      追加その2: ガイドマウントはやっぱりそれなりの強度と微動装置を備えていなければならない

 

というもので、直焦成功のためには3箇条ではなく5箇条でないと十分とは言えなかったのでした。

ご存じの通り、VX−1での失敗で我を忘れた自分はEOS Kiss−Dを買ってしまい、追加2箇条のうち「1」はなし崩し的に達成。めでたく(?)直焦成功祈願セットは下記の通りバージョン1.1に昇格しました。

 

      カメラ: ビクセンVX−1 → キャノンEOS Kiss-D (追加2箇条の1番目)

 

 

 

 

5月の半ば、このバージョン1.1で直焦撮影に再挑戦。結果は・・・むふッ?いいじゃないですか。フィルム撮影では10分以上露出をかけていたものが、デジタル一眼レフでは僅か5分以下で満足のいく写真が撮れたんです。

露出が半分以下ということは、ですよ、その分赤道儀の追尾エラー(ピリオディックモーション)の影響も少なくなるわけでして、ノータッチでも星が流れ具合は軽減されます。・・・とすれば、わざわざ星をガイドしなくても良いんじゃないか?→追加その2どころか、実は防具76EDもいらんかった?→3万6千円は無駄金だったのか?

いやいや、そこはやっぱりY−daスタイル。エントロピーはしっかりと増大の方向に動くんです。実のところ、自分のEM200のピリオディックモーションは5分で最大になることが分かっています。つまり、露出を5分とするとズレが最大にさしかかるタイミングと重なって、どうしても星の流れ具合は軽減されないのです。

更なる高みを望んでいるわけではありませんが、せめて星の流れが目立たない程度の写真は撮りたいじゃぁないですか。

 

そんな自分の思いが通じたように、ほほう?Yahooオークションにガイドマウントが出てますな。おや?ガイド鏡をしっかりホールドしてくれるバンドも出てますよ。うおっ?手頃なサイズのマルチプレートまで出てるじゃん。

物欲発動!!

 

自分の手は脳をバイパスしてマウスクリック。ガイドマウント、鏡筒バンド、マルチプレートの3点を一気に落札し、直焦成功祈願セットを更にステップアップしてバージョン2に昇格させたのでした。

 

     ガイドマウント: ベルボンカメラ雲台PH250 → アトム製ガイドマウント(追加2箇条の2番目)

 

 

 

 

さぁさぁ、これで直焦撮影は万全なはずです。さっそくその威力を試してみなければなりません。

 

 

 

 

 


<天の川には目もくれず>

 

 

ずいぶんと前置きが長くなりましたが、6月18日は新月と言うことで月明かりに邪魔されず、天体撮影には持ってこいの条件です。加えて更に嬉しいことに、この日家内とイオは実家に行くことになっているし、予定されていた飲み会も中止。何の気兼ねもなく星見に行くことができるんですよ!これは例えるならば「日曜日の午前10時から自分の地域で皆既日食が起こる」ような千載一遇のチャンスです。

しかし、万事に付けそうそう都合の良い方に流れるわけではありませんで、天気の方は晴れたり曇ったりの繰り返し、おまけに帰る間際にエンドレスモードの会議に招集されるしで、実にやきもきさせられました。

会社から解放されたのは9時過ぎ。空を見れば・・・おお!すっきり晴れているではないですか。「行け」という合図に違いありません。速攻で帰宅し機材準備して「船長っの場所」へ向かいます。あっと、その前にリンガーハットで成功祈願メニューを食べておきましょう。少し到着が遅くなりはしますが、「着いたら曇った」と言うことにならないよう念には念を入れておきます。

なお、この日の午後に船長っから「行くのかな?」と匂い付きメールが届いていました。どうやら船長っも狙っていたようです。現在の時刻は10時半。もし船長っが出張っているとしたら、おそらく既に現地に到着していて黙々と撮影に勤しんでいるのではないでしょうか・・・。ニコンD70対キャノンEOS-D、この対決見逃せません。

現地に到着すると・・・ありゃ?船長っいません?あの匂い付きメール以降は特に連絡無かったから、てっきり来てると思ったんですが・・・。とあれこれ思案していたら、「明日仕事があるので見合わせる」とメールが入ってきました。そら残念。背丈ほどに伸びた雑草に囲まれて一人頑張ることとします。

ちなみにこの日の当地はものすごい夜空でした。微光星が散りばめられ、天の川もこれまでにないくらいくっきりと流れています。あぁ、これを見るとカメラレンズでさそり座〜いて座付近も撮りたくなってきました。しかし、今日の目的は直焦です。後ろ髪を引かれる思いですが、天の川撮影はまたいずれの楽しみとしておいて、「直焦いぃっぽん カメラを付ぅけ〜てぇ♪」と口ずさみながらいそいそ準備を始めるのでした。

直焦成功祈願セットバージョン2

(6月8日金星日面通過の時に撮影)

 

 

 

 

 

 


<完璧ではないけれど・・・>

 

機材のセッティングも終わって、さあ撮影・・・の前に、まずはガイドマウントの強度チェックをしておく必要があります。ED115Sで見た星のズレ方向と防具76EDで見た星のズレ方向が一致していればOKです。防具をベルボン雲台に取り付けていた時は、防具で見た星が全然違う方向にズレていたので、雲台が妙な方向に傾いているのが推察されましたが、さて、今回新調した中古のガイドマウントはどうでしょう。

 

・・・‘ムフッ’。闇夜に怪しい含み笑いが響きます。いいですよ。ちゃんと同じ方向にずれていってます。少なくとも5分間なら問題なくガイド撮影できそうです。

時刻は24時ちょっと前。さぁ今度こそ撮影開始と行きましょう。この日のファーストショットはいて座の球状星団M22。前回も撮りましたが、今回は露出をたっぷりかけての撮影です。続いてM4(球状星団)、M80(球状星団)、M10(球状星団)、M12(球状星団)・・・また球状星団ばっかりですので、たまには趣向を変えてM7(散開星団)も行ってみましょうか。

ガイドの方は順調・・・と言いたいところですが、ここで困ったことが1つ発覚しました。赤道儀を東西方向に駆動するモーターの調子が今ひとつなんです。西に星がずれていったので、東に修正しようと左ボタンを押すと、おおお?更に西に動いていってしまうではありませんか。なんじゃこりゃー!!!逆に押したんかな?じゃあ逆のボタンを押してみまひょか?(ポチッと)・・・ぐわあああ!星が加速してどんどこ西に動いて行くっーー。こうなると何が何だか分からなくなって、西に東に大騒ぎ。目まぐるしく星があっち行ったりこっち行ったりするわけです。結局最初押したボタンが正しかったのですが、押した直後のこの挙動は一体何ぞや?バランス合ってないのかなぁ・・・。

 

そんなトリッキーな赤道儀の動きにもめげることなく、撮影は続きました。球状星団コースでお腹(=コンパクトフラッシュ)を満たしたら、お次は散光星雲コースと言うことでM8&M20、そいでもってM17と立て続けにいっちゃいます。

・・・あとは惑星状星雲コースを満喫して、メインのアンドロメダ大星雲でフルコース。

そう考えていたら、時刻は2時を過ぎて雲行きが怪しくなってきました。さっきまで薄い雲が所々に出てはいたのですが、ここにきて一気に広がり始め、アンドロメダ大星雲付近はベタに近い状態になったのです。ならば南の空は・・・ほぼアウトです。リンガー効果が薄れてきたかな(かと言ってまた食べに行くほど食欲があるわけないし)。

その後も雲はあちこちに広がってこれ以上粘っても好転する兆しはなさそうです。こうなればダメもとでアンドロメダ大星雲でも撮って撤収とします。露出は5分。どうせまともに写りゃしないさ・・・と半ば自虐的です。普通だったら、少しは天気も哀れんでちょこっと晴れ間をのぞかせてもいいはずなんですが、撮影中も雲は好き放題に流れてくれます。「ダメもと」と言いながら、健気にもちゃんとガイドしているんだから、もう少し遠慮して流れなさいよ、と舌打ちしたくなります。

5分後、液晶にプレビューされたアンドロメダ星雲は・・・、コントラストの「コ」の字もないほどボテッとした画像になっちゃいました。こりゃ画像処理の格好の練習台(=エジキ)です。

 

 

 

 

元画像: 中央部分がぼんやりと写っているだけ

 

画像処理後: 何とか暗黒帯が分かるレベルになりました

 

 

撤収後、本日撮った画像を確認して星の流れ具合を見てみましたが、ノータッチよりはズレの量は小さくなっていていました。完璧とまでは行きませんでしたが、ガイドマウントを装着した成果はそれなりに手応えあり、と言っていいでしょう。ここに直焦成功祈願セットは無事船出を済ませました。

あとはひたすら実戦に実戦を重ねて更なる精進を・・・ドスドスドスドスッ!あぅっ!どこからともなく冷たい矢が・・・!!

 

 

 

 

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