アンタレス食に泣く

 

 

 

<プロローグ>

 

3月31日の未明、さそり座の一等星アンタレスが月に隠されるという、珍しい「アンタレス食」がありました。

最初見るつもりはなかった自分ですが、ここのところ晴れの日が続いていましたので、木星観望の延長でベランダ観測(デジカメでの動画撮影中心)してみることにしました。

現象は月が出始めた頃に起こるため、東側が遮られているベランダではアンタレスが月に潜入する様子を見るのは無理っぽいですが、アンタレスが月から出てくる頃は高度もそこそこ高くなりますので何とか撮影することが出来そうです。

まぁ、メインは木星観望でアンタレス食はおまけ程度にしか考えていませんでしたので、例え現象が見られなくてもそう大してショックは受けないでしょう・・・と思っていました、この時点では!

 

 

アンタレス食の様子

 

福岡での現象は、

潜入:31日00:26

出現:31日01:23

となっていました。

 

アストロアーツの特集から引用

 

 

 

<敵は外から内から>

 

アンタレス食はさておき、メインの木星の方は23時頃から見頃になります。

この日は大赤斑が出てなかったのでちょっと寂しい木星面の観望になるとは言え、鬼太郎君での撮影に一筋の光明を見出した自分には、んなことは関係ありません。今日こそビシッとした木星の写真を撮るべく燃えに燃えています。

ところが、この燃えさかる情熱に呼応して、本日の木星も激しくマツケンサンバを踊っているのでした。シーイング最悪じゃないですか!!前日よりも今日の方が大気は安定しているはずと踏んだ自分の読みは、見事なまでに外されました。

さらに追い打ちをかけるかのように、この日はイオの夜泣きがヒドくて、周期的に「ふぇぇぇぇぇぇ・・・!!」と泣きを入れるのには困りました。辛抱強く大気が安定するのを待って、ようやく今こそ撮影のチャーンス!な瞬間が来たのに、それを待っていたかのように実にタイミングよく泣き出すのです。この日は何度やられたことでしょう。4回、いや5回はやられたかな?

しかも、木星がベランダの屋根に消えた頃からスヤスヤ寝るのですから、憎たらしいことこの上ありません。結局、1枚だけ撮ったあとは諦めざるを得ませんでした。

 

数少ないチャンスを狙って撮った木星

思ったよりもよく写ってくれてました。(データは、

ギャラリーを参照下さい)

 

 

 

<ただくたびれただけ>

 

こうなりゃアンタレス食の動画撮影に全てを注ぎ込みましょう。東の方向を見ると、お?月が見え始めているではないですか。しかし、何か薄雲はってますよ。この時点で初めて気付いたのですが、晴れていると思っていた夜空は、全天薄雲に覆われていたのでした。あああ!ここにもイオの呪いがーーーーっ!!

 

負けるな、Y−da!

たしかに月は薄雲の前にかき消される寸前で、輪郭すらよく分からないほどボヤッとしていますが、こちらには虎の子ホタロン130mm砲があるのです。ホタロンの威力を持ってすれば、薄雲などないも同然です。まだ高度は低いですが、とりあえずどんな感じで見えるのか月に向けてみましょう・・・カツン・・・

ベランダのひさしにホタロンが当たっちゃった!!

 

ええいくそ、こんなの鏡筒を少し後ろにスライドさせればいいんや!バランスが崩れるけど、この際目をつぶれ! エイヤッと強引なまでに月を導入します。

うさぎはいずこ!?

 

予想外にも、望遠鏡で見る月は単なるオレンジ色の物体で、表面の様子が全然分からないほどコントラストが低下しているのでした。月の模様を頼りにアンタレスの出現場所を特定しようとした自分には致命的です。

撤収する?明日も早いぞ。

 

悪魔の囁きが聞こえてきました。しかし、出現時刻まで残すところあと約20分。ここで引き下がってはY−daがすたるというものです。いちかばちかデジカメをセットして、撮影の準備をば・・・

ふえぇぇぇぇぇ・・・・・・・

 

ウガーーーーーっっっ!!!何でここで夜泣きばすっとですかっ!!!麻酔ば投入したろうか!?

あーっ、もうっ、やむなくあやしに行ってきます。しばらくお待ち下さい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

10分経過しました。何とか麻酔薬無しで寝てくれました。アンタレスの方はもう時間がありません。液晶で見る月は何が何だかよく分からない物体としか思えませんが、とりあえず全体が入るように構図を決め、試し撮りなしの一発本番にかけます。出現時刻の約3分前、デジカメ動画スタートです。

1分経過、2分経過、3分経過・・・うーん、アンタレスのアの字も見えないなぁ。あと2分ほど延長してみますか。

4分経過、5分経過、全然見えません。いくら何でももう出てきているはずです。PCで流してみるとひょっとすると写っているかも知れませんから、5分ちょっと経過したところで撮影を止めました。

 

デジカメを外して眼視で見てみると、アンタレスはすでに月から出てきていて、結構離れた位置にあるのがうすぼんやりと分かります。あとは動画に写っているか確認してみましょう。まずはデジカメで再生してみま・・・、おや?

デジカメの嘆き: このファイルは再生できんとばい

 

ふ?フッフッフッ・・・・・・何をぬかすか、この意気地なしがっ!根性あるとこを見せんかい。・・・と怒鳴り散らしても、デジカメは「できんばい」「できんばい」の繰り返しです。もしかしてファイルサイズがでかすぎて、デジカメでは再生出来ないのかもしれません。こめかみ辺りに血管が浮き出る思いですが、努めて冷静さを装い、ならばとPCで動画の再生を試みることにします。

PCの弱音: こいはデータが壊れとっばい

 

バカやろう!!気合いが足りんのじゃ。粘りを見せろ、粘りを!!・・・と当たり散らしても、PCは「壊れとるばい」「壊れとるばい」の一点張りです。もはやこめかみの血管はぶち切れ寸前。髪をかきむしり、何でもかんでも投げつけたい衝動に駆られてしまいます。ビールだ!もはやこれを冷やすにはビールしかありますまい。

もしかしたら写っていたであろう5分間118MBのアンタレス出現の動画は、ためらうことなく消去され、前日に続いて(注:その前日も、会心の出来と思われた木星の動画がデータエラーで再生出来なかったのです・・・)、悔しビールに明け暮れるのでした。

一体、オレは何をやったんだ!?

 

 

                             前に戻る    観望大作戦2に戻る     次に進む