春の気まぐれ天気に泣く

 

 

 

 

【このままでは終われない(4月15日)】

 

4月8日の撮影会は惑星撮影こそ満足のいく結果を残したものの、本来の目的である直焦撮影は達成出来ず悔しい思いをしました。

不完全燃焼もいいところで、これでは一酸化炭素中毒になりそうです(?)

「翌週は週の後半から晴れが続く」という予報も後押しして、心の中では15日の再挑戦を固く決意するのでした。

ここで毎度の事ながら1つの問題が浮上します。言わずと知れた星見申告です。

前回の観望大作戦でも触れましたように、15日は「8日に星見に行けなかったときの予備日」として充てられていました。その上で8日に「勝率0の星見」に出かけたわけです。当然母ちゃんとしては「8日に行ったから、15日はあり得ない」と考えます。おまけに15日は母ちゃんが職場の飲み会に行くことになっています。そういった状況の下で「やっぱり15日も行くわ」と言ったらどんな目に遭うことでしょう。何とか穏便に星見を敢行出来る言い訳はないものか?

・・・・・・・・そうだ、こう言ってみてはどうでしょう。

@8日は夜半ぐらいに帰ってきた。残り半分の星見を15日に敢行したい

A星見に行くのは23時頃だろうから(夜半までは月が明るいので行っても無駄)、存分に飲んでこい

ホッホッホッ、パーフェクトです(自画自賛)。これなら母ちゃんも納得するに違いありません。ってことで、いざ申告。

母ちゃん: 何だと!? (←@の時点で形相が一変)

 

ありゃ?大魔王が降臨しちゃいました。結局2段論法では快諾は得られず、5段論法ぐらい有して何とか丸め込んだのでした。

こうして迎えた15日は朝から素晴らしい天気です。心のよどんだ空気が一掃されそうな程の青空。これなら期待が持てそうです。

…と思うでしょ?そうならんのですよ、実際は。

朝10時を過ぎた頃から薄雲が張り始め、そのうちどんよりしてきたのです。衛星画像を見てみると、大陸の方から雲が流れてきていて、九州全体にかかり始めてきています。幸いなのはこの雲が連続的なものではなく、その後ろには晴れた領域が待ちかまえていることでした。雲の流れ具合から推測すると夜10時頃からはまた晴れた夜空が見えそうな感じです。まだまだ勝負は終わっていないのです。

夜9時、ベランダから見上げてみればそこには・・・薄雲一辺倒の空でした。おぼろ月夜の輝く風情のある情景です。が、自分にとってはそんな風情を感じる余裕はありません。「ホントに晴れるのか?雲が切れても薄雲で結局ダメなのではないか?」、そんな思いが交錯してだんだんやる気も削がれてきました。そして自分が「晴れる」と予想していた夜10時、一向に改善の兆しが見えない夜空を見て爆発します。飲み会から帰ってほろ酔い気分の母ちゃんに遅れてなるものかと、1リットルビールを一気に飲み干し沈没したのでした。

・・・あとで聞いた話ですが、実は船長っも呪いをかけていたとか。ダブルパンチを喰らっては晴れるものも晴れません(?)

 

 

 

【このままでは終わりたくない(4月16日)】

 

1リットルビールで沈んだその夜、2時頃喉の渇きを覚えたのでやおら起きて水を飲みました。何気なく空を見ると、

晴れてますって!!

 

いつ頃晴れだしたのか分かりませんが微光星がくっきり鮮やかに映える見事な星空です。激しく後悔したのは言うまでもないことです。

もし自分が正常な判断力を持っていれば、今月は15日をもって出張りを断念したでしょう。これから月末にかけては月明かりの影響で天体撮影には適さないのです。しかし、読みが外れた怒りと翌日のものすごい青空が自分の思考回路を寸断したのでした。このまま終わるつもりはありません。16日にかけてやる。

もはや母ちゃんもあきらめ顔(あきれた顔?)で、呪いをかける気力もないようです。するとどうでしょう。まったく雲一つでないではないですか。そうです、自分は今まさにコンクラーベに勝利しようとしています。もしここでビールを飲んでいれば勝利は確実・・・ですが、そうなっては出張れませんのでジッと我慢です。

夜10時、見上げれば透明度の高い星空が広がっています。涙が出そうです。気力を高めて、行く先は「いつもの山」へいざ!待ってろオメガ星団、待ってろ小宇宙ども。このY−daが一斉検挙してくれようぞ。

はやる気持ちを抑えつつ、1時間足らずで久しぶりの「いつもの山」に到着。さぁ来た!まずは満天の星空のエキスを浴びま・・・。

 

 

雲 広がってます(撃沈)

 

こ、こんちくしょうが!!おちょくっとるのか、この天気は!!薄雲がまだら模様みたいに断続的に広がり、オメガ星団があるだろう南天は帯みたいに広がってます。あっ・・・萎えてきた・・・。

しかし、昨日は早々と断念して失敗しました。夜はまだまだこれからです。ええ、今日は粘ってみせますよ、フン。

 

 

 

【やっぱりただくたびれただけ】

 

とりあえず機材も組み立てました。極軸のセッティングもばっちりです。カメラのピントは合わせましたし、今日は湿気もありません。全ての準備は万端です。

ただ、

晴れ間〜が来ない〜♪

待ち続けること1時間、ちょこっと晴れ間が出てきたから「お?そろそろか?」と期待をすれば、大量の雲が流れてきてわずかな希望をぶち壊します。雲が切れても心なしコントラストが冴えません。ますます気が滅入ります。

そんなところへ更なる追い打ちが待っていました。カップルが乗ってると思わしきクルマがすぐ近くにやってきて、事もあろうにオメガ星団のある南側に停まっちゃったのです。ご丁寧にヘッドライトとルームライトまで照らしてます。

 

素敵な思い出を作りたいならまずは暗くすることが肝心だ!

(「Y−daのトキメキ恋愛術」より)

 

自分は祈りました(ライト消せ〜)。ひたすら祈りました(ライト消せ〜)。そんな祈りが通じたのかムードが高まったのか、しばらくしてライトを消してくれました。これからアチラで何が起こるのでしょう・・・なんて自分の知ったこっちゃありません。何となればオメガ星団の付近も雲が晴れてきていたからです。今こそチャンス。望遠鏡を思いっきりクルマの方に向けてオメガ星団を導入し(何とクルマの屋根から握り拳2つ分ほどの高さ!!)、ガイド星を選定して撮影の準備に入ります。端から見れば堂々と覗きをやっていると思われかねない光景ですが、そんなことを気にしていては天文人は成り立たないのです。

機は熟しました。万感の思いとありったけの気合いを込めてシャッターを切ろうとしたその時っ!!

「すいませ〜ん、星を見てらっしゃるンですかぁ?」

 

こ、こんなことがあっていいのでしょうか。これ以上はないほど絶妙なタイミングで運転手の男の人がこっちに駆け寄ってくるのでした。神よ、どこまで純粋な男の心を弄べば気が済むのか?

ともかくせっかく興味を示してくれているのですから、無下に断るわけには行きません。顔で笑って心で泣いて、せっかく組み上げた撮影環境を一旦眼視モードにして、ホタロンで木星を見せました。男の人は初めて生の木星を見たそうで、「うぉーすげー!縞模様がはっきり見えるよっ」と歓喜の渦に引き込まれてます。うんうん、そんなに喜んでくれると自分も少しは救われます。しかしこのあとクルマに戻っても、その場から離れることはありませんでした(またライト点けるし)。

おまけに夜空は再び曇りだし、どもこもなりません。完全に気力が萎えてしまった自分は、粘りの宣言もどこへやら。諦めて撤収することにしました。

クルマのお人、ごめんなさい。邪魔者は今から帰りますので、どうぞ素敵な夜をお過ごし下さいね・・・・・・・ン?

帰るんかい!!

 

またしても見事なタイミングと言いますか、機材をあらかた片づけた頃に「どうもありがとうございました」とお礼を残して帰っちゃったんです。そして夜空は先ほどまでとはうって変わって晴れてます。ふっ・・・、フッフッフッ・・・、神よ、愛は死にますか?空は泣きますか?鹿は鳴きますか?あなたのおウチはどこですか?(意味不明:錯乱状態にあると思って下さい)。

時刻は月が沈もうとする1時半。これから機材を組み立てればまだ挽回出来る時間です。しかし、一度「撤収」と決めた心のベクトルを逆方向に戻すだけの気力はなく、失意のまま「いつもの山」を後にしたのでした。

この後?そりゃもちろんリンガーハットで怒りのダブルチャンポンですよ(←この1週間で3度めです)。

天文やって20数年、久しぶりに「星見んのやめようかなぁ」と感じた4月の大作戦でした。

どうもテキストだらけの大作戦を最後まで読んで頂きありがとうござます。お後がよろしいようで(?)

 

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