梅雨のち火星

 

 

 

 

【失敗は成功の母】

 

7月も中旬に入り、梅雨明け間近となってきました・・・と思ったら、九州南部が15日に梅雨明けしたそうです。北部の方でもまるで梅雨が明けたのではないかと思うぐらいのすっきりした青空が広がっています(気温の方は全然スッキリしてないのですが)。

Yahoo天気の「今夜の星空指数」によれば、15日金曜日は90%。7月から日曜と月曜が休日となってしまったので、出張ることは出来ませんが(ついでに月もあかるいころですし)、ベランダ観望はできそうです。特に、今秋最接近を迎える火星が夜半過ぎには程よく昇ってきていますので、今日当たり見ることができるかもしれません。あれこれ考えを巡らしてしまうと、「今夜は火星の撮影をしなければならない」と一種の義務感を覚えてしまいました。

今シーズンの火星を初めて見たのは5月の観望会のときでした。しかし、この時はまだ高度が足りずにオレンジ色の人魂みたいな見え方で、写す気力を完全に削がれてしまいました。それだけに、今夜の撮影には並々ならぬ気合いが充填されたのでした。

 

そして、邂逅するのはやっぱり2003年の火星大接近でしょう。たしか、2003年の最初の撮影も丁度この時期ではなかったでしょうか。あの時はボケボケの火星しか撮れず大敗北を喫しました。まっ、エアコンの室外機の横に望遠鏡を設置した時点でアウトだったわけですが、2年経った今、これまでに培った失敗を全ておさらいして今シーズンの撮影に活かしたいものです。

 

今シーズンの最大の目標はオリンポス山の撮影です。前回はデジカメやToUcamで連日のように写真を撮りまくりましたが、VC200Lでは今ひとつシャープな写真が撮れず、オリンポス山を明瞭に写すことができませんでした。今回のメインとなるであろう主砲ホタロンは口径でこそVC200Lに劣るものの、屈折望遠鏡ならではの落ち着いた星像でこれまで木星や土星の撮影においてそこそこ実績を上げてきました。ホタロンとToUcamのコンビネーションなら、きっとオリンポス山も写しだしてくれるに違いありません(できれば眼視でみたいところ)。

今年も火星の撮影に身を投じる所存です。

 

さて、7月15日から16日にかけての火星はどんな感じなのでしょう。撮影できそうな高度に達する2時半頃の火星の様子を見てみます。シミュレーションソフトによれば、この日の火星は視直径10秒ちょっとの大きさで、オーロラ湾から太陽湖にかけての模様が見えるようです。ありゃ残念。愛しのオリンポス山がもう少しで見えそうなんですが、時間的に無理でした。それはそれとして、最初の撮影を飾るには相応しい場所ではありそうです。

 

 

 

 

【やっぱり慌てる】

 

撮影にあたる準備は万全です。6月の中旬にPCが壊れるというアクシデントに見舞われましたが、無事復旧も完了して動画取り込みソフトもインストールし直しました。ToUcamを接続しての動作確認はしていませんが、無難に事は進むことでしょう(←大きな間違い)。

撮影は16日の2時半という事で目覚ましをセットし、一旦仮眠をとります。

・・・・・・・・・・(ZZZZzzzz)

ということで、いきなり2時半になりました。途中「火星を見ようとしたら、油まみれになったイオが邪魔をする」という、やけにリアルで奇妙な夢にうなされましたが、当の本人は汗まみれになって布団中をグルグルと寝返り打っていました。とりあえず、イオの寝間着を着替えさせて火星観望に入ります。

 

空の方は、薄雲が取れたようでそこそこいい感じの夜空になりました。星の瞬きが少ないのでシーイングも良さそうです。まずはタカハシのLE5mmで見てみますと・・・、かなり小さいですが極冠やぼんやりとした模様が見えています。模様の方は火星のあまりの明るさに埋没して輪郭がハッキリしません。もう少し倍率を上げてみます。

LV2.8mmで一気に325倍に引き上げます。この倍率は木星とか土星には全く役に立たなかったのですが、単位面積当たりの輝度が高い火星だと像が崩れず、しっかりとしたイメージを保っています。模様の方は・・・、ちょっとコントラストが出てきたような気がしますが、まだぼんやりしています。

ここで、アポダイジングスクリーンを取り付けて見てみましょう。・・・これは行けます。火星表面の明るさが軽減されて、模様が浮き出てくるようです。少し輪郭がハッキリし、1つの大きな固まりのように見えていた模様が実は2つぐらいに分かれていることが分かりました。もう少し火星が大きくなってくれば、もっと見やすくなることが予想されます。

 

一通り眼視観望を楽しんだところで、いよいよ撮影に入ります。ToUcamを望遠鏡に付けてUSBコネクタはPCに差し込んで、PCを立ち上げます。・・・「新しいデバイスが検出されました」のメッセージが出てきちゃいました。あっそうか、PC壊れた後初めてToUcamをつないだから、このメッセージが出ちゃうのか。でも、USBデバイスだから、きっとWIN2000に標準搭載されているドライバで大丈夫さ。

PCの回答: ドライバないけん、動かんよ!?

 

また、このパターンか!!お前はWIN2000やろうが。どっかからファイル見つけてインストールせんか!!

ブツクサ言いながら2、3回トライしますが「ドライバがなかばい」の繰り返しです。「USBデバイスだからと言って何でもかんでも用意されているわけではないんだぜ?」とでも言いたいんですか?ちくしょうめ、それならToUcamのインストールディスクを持ってくるから待っとけ。

CD入れたら、何の引っかかりもなくドライバが入っちゃいました。

 

 

 

 

【目指せ夢の山】

 

結局、すったもんだして撮影に踏み切れたのは3時近くになりました。PC見ながら火星を導入し、ピントを合わせて・・・小さいな?

木星や土星で常用していたPL17mmを使ってみたんですが、まるでToUcamで初めて撮影したときのプチ火星のような小ささです。これでは今ひとつ火星を撮った気分になれません。

考えてみれば現段階での視直径が木星の約5分の1ですから当然と言えば当然です。

火星の場合、拡大率を上げても像が崩れないのは先ほどの眼視観望でも明らかですので、LV9mmでもう少し拡大してみます(ちなみに木星にLV9mmというのは禁断の世界です)。すると幾分大きくなり、イメージもまだまだしっかりしています。さらに短焦点のアイピースを使うと輪郭がハッキリしなくなりましたので、LV9mmが落としどころのようです。これ以上の拡大はシーイングとの相談になるのでしょう。

 

驚いたことに、PCのモニタ上で見ると火星の模様がさらにはっきりしてくるのでした。明らかに自分の目で見るよりも細部が分かります。この時点で「あぁ、これがオーロラ湾でこれが太陽湖だな」と区別出来ました。

撮影結果の方はまずまずで、小さい割りにはよく写ったな、というところです。一昨年VC200Lとデジカメで撮った大接近間近の火星のイメージに早くも追いついてしまいました。この分なら、再接近前後で撮ればもう少し細部の様子が写し出せることが期待出来そうです。夢のオリンポス山激写が現実に向けて少し前進したような気がします。問題は再接近する秋口から初冬にかけてシーイングがどれだけ安定してくれるかです。

 

参考までにPL17mmで撮った火星を掲載します。同じ拡大率で撮った木星、土星と並べるとその大きさの違いが分かるかと思います。火星はこの後更に大きくなり、再接近時は今の2倍(直径)に大きくなります。

 

 

 

 

                             前に戻る    観望大作戦2に戻る     次に進む