無理を承知で観望会

 

 

 

 

【プロローグ】

 

9月になりました。もはや恒例となりつつある月イチの出張り観望会(撮影会?)の時期がやってきました。今月のXデーは2日〜4日かけての新月期です。この前の週は、1週間にわたって雨とか曇りのスッキリしない天気が続きましたが、一転してこの週は晴れの日が続いています。もちろん、カレンダーには「父ちゃん星見」を書いたのは言うまでもないことです。

9月最初の週までは、日・月曜が休みになっている関係上、当初は3日(土)に出張る予定でしたが、Yahooの星見指数は70%。対して2日は100%になっています。「当てにならねぇんだよなぁ」と口にしつつ、どういうわけか心の方は2日に傾いてきました。大体3日は土曜日です→土曜日の仕事というのは気分が乗らないんです→そう思うと何だか休みたい気分になってきました→ならば2日(金)に出張っても何ら問題はありません。(よくこれで仕事が成り立つな?)

 

ところがここで思わぬ茶々が入りました。実は3日は「主任・係長研修」なるものが予定されていたのでした。不肖Y−daは、今年から主任にさせてもらった関係上これに出なきゃならないのです。2日に星見に行ったら、間違いなく睡眠不足にかかります→それに加えて丸一日講義(ラリホー)攻めに遭います→爆睡間違いなし→降格の憂き目にあうかもしれない?こんなストーリーが成り立つかもしれません。

 

何で3日に予定するんだよ!!とブツクサ文句を言いつつ、さて2日は星見に行くべきか迷いが生じました。それほどまでして星見に行かなければならないのか?星と仕事とどっちが大事なんだ?星で家族を養っていけるのか?・・・

何とかなっさ!迷ったときはどっちも取れ!これが身上です。たまには自分を追い込むことも必要でしょう。

そういうことで、2日(金)に行くことにしましょう。

しかし、いざ蓋を開けてみると2日は曇ってペケ。えーーー?せっかく機材をクルマに積み込んでスタンバイOKだったのにーーー!!

 

 

 

 

【やはり苦労する男】

 

翌3日は、前日と違って日中から晴れています。あまり透明度はよくなさそうですが、まだ青空が見えるだけマシと言えるでしょう。定時の鐘が鳴るが早いか、ダッシュで帰宅したのでした。

しかし!ここから文字通り雲行きが怪しくなってきます。日が落ちると同時に雲が張り出してきたのです。出撃する?中止する?船長っとこの日の星見の敢行について2転3転します。最終的にはまだ望みがありそうだとの判断で、「いつもの山」に9時半頃出撃しました。

 

自分が現地に到着したのは10時半頃。空を見ると何とか星が見えるぐらいの状態で、お世辞にもコントラストがいいとは言えません。特に北の空は霞が市街地の光を反射して明るいこと明るいこと。予定していたカシオペヤ辺りの散開星団はどう考えても撮影するに値しません。ものすごく中途半端な晴れ具合です。

とは言え、星が見えている以上は、望遠鏡を出さないわけにはいかないじゃありませんか!嬉しさ半分悲しさ半分で機材のセッティングを始めます。

前回の観望会では、北極星を導入できないというお粗末な場面を見せてしまいました。今回は違いますよ?パパパッと電光石火のごとく北極星を導入し、10時45分頃にはセッティングを完了です。ワハハ!どうだ、もはやブランクに半泣きって言わせんぞ!?・・・あっ、船長っはまだ到着してませんね・・・。

 

お次は極軸の微修正です。星のズレを南北方向に出さないためにはこのプロセスは必須です。前回は20分程度で追い込みましたから、今回は15分で決めたいですね。・・・(40分経過)・・・。

ぬがーー!!!まだずれるんかい!!!

 

何と言うことでしょう。今回は微調整で苦しむ羽目になってしまいました。どこでおかしくなったのか、やればやるほどスレの量が大きくなってしまいます。そうこうする間に1時間遅れで船長っも到着し、機材の組み立てに入りました。極軸合わせで苦しんでいる自分を見て、船長っは言います。「わはは、ネタ作りに邁進しているな。どうやら、合わせ終わった頃には薄明になりそうだな。」

 

く、悔しーっ!こうなりゃ意地でもあと5分で合わせてやるわ。・・・(でも20分経過)・・・

依然として星のズレは収まりません。もはやどこかで間違ったことをしたのを認めないわけに行かなくなりました。ここは一旦初心に戻る必要がありそうです。そう、もう一度北極星の導入からやり直しです。このまま微修正作業だけに固執すると、遅れてやって来た船長っの方が先に撮影に入ってしまいそう。これだけは何としてでも防がなければならないのです。

 

 

 

 

【ツボにはまる】

 

かたや船長っは順調です。機材組み立て、北極星の導入、オートガイドシステムの配線などなど。オートガイドシステムを使う船長っの場合は、極軸の微修正は必要ないので、撮影に入るまでの時間がかなり短縮されます。このままでは本当に自分よりも先に撮影に入ってしまいます。

普通であれば(?)、ここで船長っは何か起こすはずです。本人は「もうオートガイドシステムは使いこなした!」と豪語していますが、でも何か起こさないと面白くありません。何か来ないか?来そうな予感!

船長っ 「あれぇ!?何かモータードライブの調子がおかしかぞ?」

 

 

 *これはイメージです。 

 

そうです、これが来ないと船長っらしくありませんって!

船長っによれば、ギアのかみ合いが固くなってスムーズに動かなくなったんだそうです。チャチャッとかみ合い調整したら問題なく動いたみたいです。

 

自分はと言いますと、ようやく極軸の微修正も目処がついてきました。組み立て始めてから既に1時間半。もう時刻は12時近くになろうとしています。当初の計画を大幅に狂わす時間帯でのセッティング完了です。これから今度はピントチェックに入らないと行けません。前回は、あれほど丹念に調整したにも関わらず最終的にはピントがずれていました。今回は撮影前にPCでチェックしてベストなピント位置を探り当てます。・・・(10分経過)・・・

よし、これは何事もなく通過しました。見るからに針でつついたようなシャープな星像(に見えます)。これなら今日は目が痛くなりそうな写真が撮れるに違いありません。早速撮影対象に望遠鏡を向けます。本日のファーストヒットはさんかく座にある系外星雲M33です。・・・が、

雲が張ってますやん!!

 

こ、こ、こ、こんちくしょう!!人が苦労してようやく撮れる段階にこぎ着けたのに、撮ろうとしている場所に雲が出るとは何事ですか?もうよかっ!今日はM33はパスや!次のターゲット「すばる」を撮りますよ!

でかすぎ

 

くくくっ、ホタロンの焦点距離が長すぎて6つの主要な星がギリギリ収まる程度です。これではメローペを包む青い星雲とかは途中でちょん切られてしまいます。どう考えても美しい写真になるとは思えません。涙を飲んでこれもパスです。ならば次のNGC253(系外星雲)はどうですか?ここは幸い雲もありません。ところが・・・

星雲はどこにあるのか?

 

場所が分からないわけではないのです。コントラストが悪くて、望遠鏡のファインダーで見えないのです。もちろんカメラのファインダーでは見当がつきません。これでは写真の中央に星雲を持って行くのも至難の業です。試写を繰り替えしながら地道に中央におびき寄せていくしか方法はないでしょう。

ということで、1回目の試写。結果は写真の端っこの方に半分だけ写っています。よしよし、ならばモーターをこれだけ動かせば真ん中に入るだろうな(カメラでは何も見ないので大雑把な見当で誘導します)。しからば、2枚目行きましょう。・・・さて、結果は?

影も形もなくなりました!?

 

し、しまった。逆側にモーターを動かしてしまったのでした。見えなくなると大変です。試写している間に、どれだけモーターを動かしたのか忘れてしまったので、また最初から導入し直しになってしまいます。・・・(8分経過)・・・

ハァ、ハァ、やっとの思いでほぼ真ん中に持ってきました。これでやっと撮影にこぎ着けました。時刻を見ると、ゲッ!1時過ぎてるじゃないですか。しかも、船長っが今まさにM74(系外星雲)を撮ろうとしているじゃないですか。いけません。これ以上後れを取ったら、船長っの鼻はピノキオになってしまいます。最低でも同時撮影止まりにしておかなければ!!心の準備もままならないまま、いざ、撮影開始。ガッツン!!

ガイドアイピースに目をぶつけてしまいました・・・(アイタタ)

 

 

 

 

【報われない2人】

 

今回船長っのオートガイドシステムは比較的順調です。やっぱり帰省先で調教したのが功を奏したようです。こちらも堂に入ればトラブルらしいトラブルにも見舞われることがなくなりました。

ただ、天気が最悪です。2人とも最初の対象を取り終えた後から、ズンズン雲が張り始めてきたのです。ここで直焦にやる気がなくなった自分は、程よく上がった火星の撮影に切り替えるべく準備を進めます。多少雲が出ていても、火星撮影ならやれます。・・・て、どうして厚みが増すかなぁ!!

全く人をおちょくっているとしか思えない天気です。鬼太郎くんを出した頃には一面真っ白。火星も情けない明るさで輝くにとどまっています。この時点で、ふとリンガーハットのチャンポンが脳裏をかすめてしまいました。

・・・行くか?いや、まだまだこれからです。もう少し待てば晴れ間が出てくるかも知れないじゃないですか。しばらく火星を見て時間を潰しましょう。

 

この日は天気は悪いもののシーイングは良くて、丁度中央に出てきた大シルチスが良く見えました。どれだけシーイングがいいかというと、船長っが持っている2mmのアイピースでもしっかりしたイメージがあるほどなのです。2mmのアイピースだと都合450倍以上で見ていることになり、130mmの口径しかない望遠鏡にはかなり荷が重い倍率ですが、揺らぐことなくしっとりした感じで見えているのです。

も、もしこの状態で撮影したなら、ひょっとして失神しそうな火星が撮れるんじゃない?思わず気分が高揚してきます。

しかし、そういう期待とは裏腹に、待てば待つほど雲は増え、とうとう火星も何も見えなくなってしまいました。その代わりと言っては何ですが、リンガーハットのチャンポンが月のように自分の周りを飛んでる錯覚に襲われます。時刻は3時前。ここで片づけてパーッと帰れば近くの店でチャンポン食えます。

撤収だ!ついに、リンガーハットの勢いを止めることが出来なくなりました。結局、この日は僅かに一天体しか撮ることなく、火星も撮れず終いで撤収と相成ったのでした。

 

一方船長っはどうなのでしょう。M74の撮影を無事終了して、ダーク補正用の写真を撮っています。そして出来上がった写真を見て驚愕です。まるでエクトプラズムが写ったのかと錯覚するほど、熱ノイズが一面に広がっているのです。最初何気なく見ていた船長っですが、そのノイズの広がり方にちょっと疑問を覚えたのか、どんな設定で写したのかチェックしました。何と

間違って超高感度設定(ISO1600)にして撮っていたのでした!

 

船長っはもう信じらんなーいと言った表情です。「ISO800にしたはずなのに、どこで1600に変わったんだ?ま、まさか今まで撮ったM74も全部1600で撮ったのか??」←そうでした(ToT

船長っは最後の最後で最強のネタを奉仕してくれました。改めて言いたいと思います。これからは船長っの時代なのです、と。

加えて曇り空のコンボ攻撃により、船長っも不完全燃焼のまま撤収することとなったのでした。

 

・・・翌日、苦心して撮影したNGC253ですが、やっぱりコントラストが悪い中で撮ったのでは、バックのノイズまで引き上げられてしまい、昨年と同じような変な色合いの写真になってしまいました。

船長っの場合はもっとひどかったようで、エクトプラズムでダーク補正をした時点でやる気を失ったみたいです。できれば是非どんな結果になったのか見てみたいものですね。

 

NGC253(9月4日1時18分〜撮影)

 

改めてみると昨年のよりはマシみたいですが、

フルサイズではノイズがひどくて、とても見られた

ものではありません。

 

 

 

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