準備は2時間 撮影10分

 

 

 

 

【飲み会をキャンセルしてでも】

 

2006年がやってきました。今の時期は月末から翌月初めが新月にあたるので、正月休みにでも出張りたいなーと思っていたら、「夜になると曇り出す」という摩訶不思議な天気に悩まされ、クルマの中に積み込んでいた機材はあえなく部屋の中に撤収となってしまいました。

次のXデーは1月末になるのでしょうか。否!そんなことはありませんでした。なんと正月休み明けの7日(土)の夕方になって、急に晴れ間が出てきたのです。月は上弦にさしかかる頃で月明かりがかなり効いていますが、夜半過ぎになれば沈みますので、夜が長い冬なら撮影する時間はそこそこ取れます。

今日は係の飲み会なんですが、こんな空を見せられると・・・

ぶっちぎろうぜ!?

 

ああ、頭の中に響いてくる悪魔のささやき。天秤にかける隙すら与えず、迷わず出張りを選ぶことにします。

夕食は、この日の成功を祈願してリンガーハットで「ダブルチャンポン+餃子+おでん2本」のスペシャルメニューを食します。これで今日の成功は間違いありません。ただ、イオのご機嫌は気になるところです。是非とも斜めに傾かないことを祈るばかりです。

 

家に帰るとそそくさと機材をクルマに詰め込み、9時半頃出発。場所はどこにしましょうか。

「船長っの場所」はこういう時こそいいんでしょうが、今日は夜から冷え込むそうです。「船長っの場所」はとにかくクルマの通行が少なく、道路凍結でもされた日には生きて帰れないかもしれませんから、涙をのんでパスします。

また、去年2月に久しぶりに行った「百武彗星記念の地」なんて、あの話を聞いてしまった以上はもはや行く気になれません。

で、残った選択肢は行き慣れた「いつもの山」ということになったのでした。

 

 

 

 

【星より道具】

 

現地には10時半前に到着しました。夜空を見上げてみると、上弦の月が凛と輝いていて透明度が大変良いことを伺わせます。出張ったときにこんな夜空に巡り会えるのも久しぶりです。やはりダブルチャンポン+餃子+おでん2本の威力は絶大です(ただし、効き目に制限時間あり)。

さて、今回は観測/撮影環境をより快適にするために各種小道具を揃えておきました。どちらかと言えば、今回は撮影よりも小道具の効果を見ることにウェイトをおいていました。どんなものを揃えたかと言いますと、・・・。

 

その1: 完全防寒作戦

冬期の観望は、油断すると後でどんな目に遭うか分かりません。去年2月の撮影では、2、3日後に高熱を出して寝込む羽目になってしまいました。

あの時の敗因は、上半身の防寒は完璧だったのに下半身がおろそかになったことでした。今回は下半身のパワーアップを図り、従来の綿パン+スウェットパンツ2枚に加えて、釣具屋で売っているナイロンパンツ(980円)を導入。さらに足先の冷えを防止するため、厚手の防寒靴下も2枚重ねる念の入れようです。上半身は、Tシャツ+Yシャツ+チョッキ+ウインドブレーカ2枚+革ジャン+はんてん+マフラーに加えて首元にカイロ。

これで寒さ対策は万全でしょう。見た目はイケてなくても、そんなことは気にしないことにします。

 

 

その2: 望遠鏡の結露防止

これまでは望遠鏡の対物レンズや補正板が結露してしまうのが悩みの種でした。

今回もバリバリに曇ってしまうことが予想されます。そこで桐灰カイロの導入です。スティック状の桐灰を燃やすため、ホッカロンと違って周囲が寒くても冷めることがなく、レンズ付近に設置すればカイロの熱でレンズに結露するのを防止することができます。

星見仲間の間では定番のカイロを遅ればせながら使ってみました。

 

その3: ピント対策再び

いつも悩まされるピント合わせ。今回は原点に戻って再び「2穴式ピント合わせツール」を使ってみました。従来のツールに改良を施し、ネタ作りの撲滅に努めます。

改良点は単に穴の直径を大きくしただけですが、これにより星の明るさを確保し、なおかつデジカメで試写して星が1つに重なっているかを検証するダブルの対策で万全を図ります。

長らく続いているピンぼけとの戦いにはそろそろ終止符を打ちたいものです。

 

 

 

 

【高まる闘志を冷やすモノ】

 

今回の最大の収穫はナイロンパンツ980円の効果でしょう。この日は結構冷え込みましたし、風も多少あったのですが、全然寒さを感じませんでした。

防寒靴下もピタリときまり、つま先から寒さが染みこむということもありませんでした。この暖かさは癖になりそうです。是非バイク通勤にも活用したいと思います。

上半身もこれだけ重ね着すると全く寒くありません。特にマフラーとカイロで念入りに固めた首周りが功を奏しています。これなら今日の星見は寒さに惑わされることなくじっくり集中できます。

 

と思ったのですがここから色々と誤算が続出しました。

まずはピント合わせから始まりました。ピント合わせには南中したシリウスを使います。あんまり星の高度が高いと首を大きく上げないといけないので、首に負担がかからないようにするにはシリウスぐらいの高度の星が最適なのです。ところがシリウスを導入してカメラのファインダーで星の重なり具合を見ようとしたら・・・、

 

く、首が上がらんわ!

 

厚着とマフラーのせいで首がほとんど上がりません。シリウス程度の地平高度でこれですか!こんな状態ならさらに高度が高い(=ますます体勢がきつくなる)オリオン星雲とか、M78ウルトラの星なんてどうしますか!

かと言って、マフラーを取り去るとすきま風が首筋から入り込んできてゾクゾクします。風邪引いちゃうかもしれません。ここは、無理矢理首を上げて・・・・。

くくくっ、首がつりそうでピント合わせに集中できません・・・。アングルファインダー付きのカメラだったらこんな苦労もしないのに!

 

と愚痴を言いつつ、気力を振り絞ってピントチェック。1分と持たず首がぷるぷるしてきますので、首をトントン叩きながらの涙ぐましい作業となってしまいました。

幸いだったのは、ピントツールの穴を大きくしたことで予想通り星の重なり具合が分かりやすくなったことでしょうか。何回かドローチューブを行き来させて星の重なりをチェックしてみたところ、星が2つに分かれ始めるポイントがかなりの確度で判別できるようになりました。あとはデジカメで試写してシリウスが2つに分かれていないことを確認できればピント対策はばっちりです。

 

ピント合わせが終わり、いよいよ撮影に入ります。時刻は既に0時過ぎ。・・・・はぁ?準備だけでもう2時間以上も費やしたとな?

極軸チェックは今回はいつも通りに進んだはずなんですが、防寒を高くしたことでフットワークが重くなってしまったのか、随所でこつこつ時間を消費したみたいです。とは言え、これから本番に入れるんですから、細かいことは言いっこなしです。

 

撮影前にレンズが曇っていないかチェックをしてみます。結露していたらどんなにピントが合っていてもアウトですからね・・・。

おし!ホタロンの対物レンズもバイパーの前面補正板も曇っていません。やはりカイロの効果はあるようです(と、このときはそう思っていました。このときは・・・)。これなら結露の心配はすることなく安心して撮影に臨めそうです。

 

まず1発目は定番のオリオン星雲に行きます。空を見上げてオリオン星雲の位置を確かめると・・・?

 

く、雲が張ってきてますやん!!

 

ああ?もしかしてリンガー効果が切れてきたと言うんですか?それってありですか?今年もまたこのパターンに泣かされるんですか?

いやいや、ここでやけをおこしてはいけません。雲の流れを見ると北から西にかけて流れていて、天頂付近や東から南にかけてはほとんど雲はかからないようです。ただし、いつ雲がかかってもおかしくない状況なのでパッパッと撮影する必要があります。素早くオリオン星雲を入れて、構図を決めて・・・首が上がんねーよー!!苦しいよー!何だかこのつらさでやる気がそがれてしまいそうです。

 

それでも数分後には写るであろう美しいオリオン星雲の姿で自分を騙し、残り少ないモチベーションをキープして撮影開始です。あっ、ガイドミスった・・・

気を取り直して撮り直し。焦りは禁物です。十字線上のガイド星を時の経つのも忘れるぐらい集中してガイド、ガイド、ガイド・・・ええぃ、まだ5分経たんのかい!(全然時を忘れてません!)

とまぁ、何とかオリオン星雲を2枚撮りました。プレビューしてみると、ははは、星が微妙にずれてますわ。

 

この日は、この後急速に雲が張ってきて、それを機に撤収することにしました。わずか10分の撮影で終わりとは情けない話ですが、まぁ、今回はリハビリですから、本番は1月末の新月期ですから・・・。ちなみに、撤収した本当の理由とは、実のところ首がつりそうになってこれ以上星を導入するのがいやになったという話もあります(^^。

 

ところで結露防止のカイロですが、片づけているときにやけに冷たく感じたので、中を開けてみると、灰になっていたのは火をつけた先端部分だけでほとんどと言うか全然燃えていなかったことが分かりました。え?ということは、レンズが曇っていなかったのは単に湿気がなかっただけのことだったんですか?うわ、がっくり・・・。

次回の出張りまでにカイロの火の付け方も学んでおく必要がありそうです。とほほ・・・。

 

 

 

 

久しぶりのオリオン星雲(1月8日0時19分〜31分: 5分×2枚)

 ガイドがうまくできずに、星が流れた写真になってしまいましたが、ピント自体はここ何度かの撮影の中

 では一番マシでした。経験値を積めばもっと精度を上げられるでしょう。「さらばピンぼけ王」からの脱却

もそう遠い話ではなさそうです(?) 

 

 

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