ネタ作り王決定戦リターンズ

 

 

 

 

プロローグ

 

1月23日の週は、大変いい天気が続きました。透明度もよく、これが平日でなければ何を差し置いてでもすっ飛んでしまいたい、そう思わせる程の快晴でした。この天気はXデーに定めていた1月27日(金)も続きました。辛口予報で知られる天気EXCITEで星見指数を見ると、普段はどんなに晴れていても「ぼんやり」とか「ちらほら」とか、歯に物が挟まったような評価が多いのに、この日は最高評価の「くっきり」。当たる確率が多いサイトだけに、この「くっきり」は期待して良さそうです。

去る1月7日は、事を万全に整えて繰り出したモノの、結果はオリオン星雲2枚だけという寂しさでした。さらに遡れば、月一度の新月期はことごとく曇天攻撃にやられました。これまでの鬱憤を全てぶつけて、新たなY−da伝説を作りたいモノです。

 

この日は船長っも参戦を表明しました。ここのところバイクレースに集中し、天体撮影からは遠ざかっていた船長っでしたが、おそらくコーチさんやほうき星さんの天体写真に触発されたのではないでしょうか。「俺も頑張っぞ!」と言わんばかりの意気込みは到着時間の速さからすでに表れていました。

と言うのも、こちらがまだイオを寝かしつけてもいない8時半頃に、船長っから「今から出ます」メールが来たのです。これ早すぎです。いつもだったら船長っはお子さんを寝かせた後の10時過ぎぐらいに出るんです。もしかして、奥さんの実家に帰っているのでしょうか。そんな疑念すら浮かんできます。

ともあれ、こんなに早く行かれてしまうと、自分が到着する頃にはオートガイドでバッシバッシ撮影している可能性もあります。これはいけません。焦る気持ちを胸に秘め、イオをさっさと眠らせて、9時ちょい過ぎに彗星の如くエアッチ走らせて「船長っの場所」へ向かいます。

 

 

 

 

 

夢はもろくも

 

久しぶりの「船長っの場所」へは10時過ぎに到着。既にオートガイド撮影に入っていると思われた船長っはまだセッティング中でした。よし!今からチャチャッと組み立てて極軸調整すれば、船長っと同じタイミングで撮影に入れるかも知れません。

今日の目標はとにかくネタ無しで1日を終えることです。ネタがなければ全てが順風満帆に進み、結果サクサクッと数多くの天体を納めることが出来るはずです。

その点、船長っはきっとたくさんの思い出を作ってくれるものと信じています。結構ブランクがありますからね。前回はブランクに半泣きでしたが、今日は大泣きする可能性もありそうです。そんなことを思った途端、

あー!やけに星がずれていくと思ったら、極軸ば合わせとらんかったー!!(ポイント1)

 

来た来た!去年と全く同じ轍を踏んでしまった船長っ。やはりブランクは効いているのか!

船長っが極軸セッティング→再びオートガイド設定に逆戻りしている間に、自分はパパパッと組み立て、極軸の微調整に入ります。嬉しいことに、こちらは最初のセッティングがピタリとはまって、高度/方位とも修正の必要がほとんどありません。久しぶりじゃないですか、こんな会心の一撃は。前回2時間も準備にかかったうちの最大の原因だった極軸微調整が僅か20分弱で終わってしまいました。時刻はまだ10時45分。これならオードブルの土星撮影をしても、夜半前には直焦撮影にかかれそうな気がします。

ネタ無し観望会は滑り出し順調です。ちょっと気をよくして休憩を取り、船長っの様子を見に行きます。船長っは自作のタイマーコントローラーを付けている最中でした。そうそう、これ便利なんだよねーって話していたらふと、・・・・あれ?そう言や、自分ってタイマーコントローラー持ってきてましたっけ?・・・・・

あーっ!タイマーコントローラー持ってきてないやんけーっ!!(ポイント1)

 

Y−daの構想、もろくも崩れ去った瞬間でした。バックアップで持ってきていたマニュアルスイッチを使う羽目になりました・・・。

 

 

 

撮影開始保存の法則

 

とは言っても、致命的な失敗ではありません。ここは気を取り直して土星の撮影に入ります。

到着時の天候は晴れ。北からの風が時々強く吹きますが、シリウスの瞬き具合がそれ程ひどくないので、シーイングは割と良さそうです。この分なら結構いい写真が撮れそうな予感がします。

実際にPCのモニタ上で写してみると、時折吹く強風でたこ踊りするものの、シーイングによる揺れはほとんど感じられません。風が撮影の間の2分間だけでも吹かないことを祈りつつ、タイミングを見て、撮影開始です(ポチッとスタート)。・・・・?ありゃ?何か揺れがピタッと止まりましたね?モーターを強制的に動かしても土星が動きませんね?

 

またキタロウが壊れたかーーーーっ!!(ポイント2)

 

すわ、昨年の悪夢再び!!画像取り込みが機能しなくなりました。2分後に画面全体が緑色になってしまうのも、以前と全く同じです。うわっ、ここに来てコレ?こんな綺麗な土星を前にしてコレ?

   そ ん な こ と ワ タ ク シ が 許 し ま せ ん

 

きっと周りの寒さでビックリしただけなんです。キタロウのUSBケーブルを一旦引っこ抜いて全てを忘れさせ、差し込んで再トライです。・・・・・・・・・今度は首の皮一枚つながって何とか撮影できました。ホッ・・・。

 

その頃、船長っはオートガイドの設定に手間取ってました。自分が土星撮影をしているときから向こうの方で「げっ」とか「何やコレ!」とかブツブツ言ってます。何事かと思って、土星撮影が一段落した後に様子を見に行くと、何と船長っのPCでは

スライドパットに触ってもいないのに勝手にカーソルが動いている!!(ポイント2)

 

奇妙な現象でした。オートガイドを走らせるためのPBにカーソルを置いて、他の操作のためにちょっと手を離した瞬間、スルスルスル〜〜〜っと、カーソルがその場を離れていくのでした。いくらPBにおいても手を離せば動くものだからいつまで経っても先に進めません。この時点で、船長っが早めに現地到着したアドバンテージは完全になくなったと言ってもいいでしょう。「早めに来れば手間取り、遅めに来れば円滑に進む」という撮影開始保存の法則が成立した瞬間でした。

 

 

 

絶叫また絶叫(Y−da編)

 

そんな船長っを尻目に、こちらはピントチェックを終わって夜半過ぎの0時頃最初の撮影に入りました。目標は散開星団M46。以前ED115Sで撮影し、ピンぼけに泣いた曰く付きの天体です。ホタロンを目標天体に向けて構図を合わせ、時間を計りながらいざ撮影開始。今年は失敗しま・・・・

ヒュゴオゥゥゥゥ!!!!!!

 

うわぁ、さっきまで大人しかった風が突然ひどくなりましたよ?おおお、ガイド星が右往左往しています。入魂率がまだ高まってない状態でのこれは辛いモノがあります。船長っからは、「Y−da、お前撮影中止!!」と言われる始末。

                                    負 け て な る モ ノ か

 

困難にめげず、サッサッと5分露出で3枚撮影(撮影終了と同時に風がピタリと止まるこの事実!!凸▼▼〆)。撮った後、一度PCに落として画像をチェックします。主にピントが合っているか最終の確認・・・だったんですが、案の定

うわっ!?ピントがボケとる!!(ポイント3)

おまけに、

ぬはっ!?ガイドもずれまくり!!(ポイント4)

さらに衝撃的だったのがコレ。

ゲゲーっ!!!ISO設定が200のままじゃないか!!(ポイント5)

 

以前自宅で月の撮影をしたときに設定したまま、ISO800に戻していませんでした。

実は撮影直前まで船長っの「ISO1600疑惑事件」の事を話してたんです。船長っに対して「今日は1600にするんじゃねぇぞー」とか得意げに言ってたんです。それが、いざ蓋を開けてみたら自分が200ですか?もうね、一体何やっとるのかと。ええ、もちろん船長っからは逆襲され、臓腑をえぐられました。

どうもM46は相性が悪いみたいですね。この界隈の星団は2月に持ち越しましょう。再度ピントチェックを入念に行い、心機一転、今度はうみへび座にある散開星団M48に対象を写します。何度か試写して構図を決め、さぁ本番行きますよ?(スカスカ)・・・あれ?カメラが動きませんね。うっ電池切れですか。絶妙なタイミングに頭が痛くなります。一旦深呼吸して新しいのに取り替え撮影開始です。

この後はM95周辺、M105周辺と、撮影の方は比較的スムーズに進みました。特に「これは写したい天体」の筆頭、かみのけ座のNGC4565を一発導入出来たのには我ながら感動を覚えました。昨年手こずりましたから、こんなにすんなり導入できると俄然気合いが入ります。気分良くして2、3度試写し、構図を合わせてさぁ本番!(スカスカ)・・・あ?

また電池切れかっ!!!(ポイント6)

 

何でじゃ!つい1時間ちょっと前に電池交換したばかりじゃないですか。もうね、ふざけんなという思いです。寒さで電池の消耗が早いと分かっていても、1時間しか持たないようじゃお話になりません。この電池、純正品ではなく怪しげなメーカーのコンパチ電池なんですが、やっぱりダメなんでしょうか。

気分が滅入りますも、次に控える最後の電池は純正品ですので残る数時間はこれで持ってくれるでしょう。もう一度気合いを入れて撮影を再開です。

NGC4565はプレビューで見る限りはばっちり撮影できたようです。この後は、うみへび座にある球状星団M68、久しぶりのおとめ座ソンブレロ星雲と行きましょうか。M68には久しぶりに望遠鏡を向けたので導入に時間を要しましたが、何とか見つけてお約束の構図決めの後、1枚目撮影です(カシャっと)。

ところがここから事態が急変しました。5分後にちゃんと撮影完了したのですが、普通液晶にプレビューされるはずの映像が出てこないのでした。ん?おかしいな、見落としたかな?と訝りつつ、次の撮影に入ろうとしたら、(スカスカ)・・・ほ?

うわーーーっ!もう電池が切れやがったっ!!!!!!(ポイント7)

 

こ、こ、この軟弱モノが。それでもお前は純正品か。「CANON」のロゴはまさか「CAMON」ではあるまいな?動け、悔しかったらもう一度息を吹き返してみろ!

と叱咤激励しますも、完全にご臨終されておりました。Y−da、数時間も残しての無念のリタイヤです。

涙にむせぶ(?)Y−daを気の毒に思ったのか、船長っは「よかっじゃ?収穫は0じゃなかけん」と言葉で肩をたたきます。そうだ、今日は珍しく何枚も撮ったんだ。ピントも合ってそうだし、前向きに考えましょう。で、時間が空いたので今日の成果をPCでチェックしてみます。・・・あれ?・・・・・・・・・

全部星が流れているやないかっっ!!!!(ポイント8)

 

 

 

NGC4565の例です。

ほとんど同じ方向に同じ量だけ星が流れていました。おかげでコンポジットする際に、基準点の指定がやりやすいこと(自虐的)

 

各画像とも5分露出

 

我が目を疑いました。ピントはOKでしたがガイドミスで星が流れていたのでした!!全部ですよ、ぜ・ん・ぶ!かろうじて使えそうなのはM48ぐらいで、その他はスイスイ流れまくりです。しかも同一方向にほぼ同じ流れ具合という、考えようによっては神業に近いガイドミスです。でもタッチガイドの神髄がこんなところで発揮されても嬉しくありません。

寒い思いをして頑張った約3時間半、こんな事が許されていいのでしょうか。自分のミスとは言え、あまりにもご無体な結果に呆然とするしかありませんでした。

 

 

 

 

絶叫また絶叫(船長っ編)

 

カーソルが勝手に動くという障害にもめげず、何とか全ての設定を完了した船長っ。後はピントを合わせれば撮影に入れます。船長っの場合は、自作ピントゲージを使って合わせるため、実際の星像を見ること無しにゲージの数値を合わせるだけでOK・・・のはずでした。ところが、実際にM42を撮ってみると、

げーっ!ピントが合ってねぇぇぇ!!(ポイント3)

 

ピントは問題ないと高をくくっていた船長っにしてみれば、まさかピント合わせツール2穴式のお世話になろうとは思っても見なかったのではないでしょうか。聞けば以前よりも1mmほど位置がずれていたそうで、こっちの方がショックだったようです。

苦難はその後も続きます。オートガイドが突然拗ねるという現象はなかったものの、

うおー!PCが動かん(←PCフリーズ: ポイント4)

 

と、Y−da張りのトラブルに見舞われ再起動を余儀なくされたかと思えば、バラ星雲を撮影すると

バラが写らん!!!(←ホワイトバランス設定ミス?: ポイント5)

 

と、バラ星雲が沈む直前まで撮影を繰り返し、一時は完全にやる気を失ってクルマの中に引きこもる程のショックを受けておられました。それでも、久しぶりの参戦を敗北の形で終わらせたくない気持ちが勝ったのか、一時の休憩で体をリフレッシュして撮影再開。この後撮影したM97とM108のペアや、M44(散開星団:かに座)、M67(同じくかに座の散開星団)、M106(系外銀河:りょうけん座)をサクサクッと撮っていました。なお、M106を撮影していた頃、Y−daはバッテリー切れで逆上していました。

船長っの方は再開後はそれ程大騒ぎすることはなかったようで、撮影結果も上々だったみたいです。ただ、目標天体を導入した後、明るいガイド星を探すのにかなり手間取ったらしく、「撮影する時間よりもガイド星を探す時間の方がかかっちょるばい」のお言葉が大変印象的でございました。

 

 

 

 

船長っが苦労して撮影したバラ星雲を送ってもらいました。

どんなにすさまじい写真かと思って、大変「期待」して見てみたんですが、えーっと・・・・いい感じじゃないですかね?

自分としては、なんと言いますか、IRカットらしからぬ青いバラ星雲を想像していたんですが(^^

 

 

 

 

 

エピローグ

 

今回も蓋を開ければネタ満載の観望会になりました。およそ3ポイント差をつけてY−daの勝利(?)という嬉しくない結果になり、自分としては大変納得のいかない観望会でした。毎回毎回リベンジ項目ばかり増え、そのうち債務超過で自己破産しそうです。

ということで、翌土曜日に憂さを晴らすべく「いつもの山」に出張ることを計画します。疲れていますが日中のこの青空を見ると、「オレは今日撮影に行かねばならない」という使命感を覚えました。嫁さんの怒号は馬耳東風。イオを寝かせた9時頃に颯爽と向かいます。そんな自分を迎えてくれたのは、雲一色の毒々しい夜空だったのでした(ポイント9)。合唱・・・・

 

 

 

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