防具夏の陣

 

 

 

 

 

 

プロローグ

 

九州地方は、7月26日に梅雨明けしました。梅雨明け後の空は、澄んだ青空で久しぶりに見る爽快な天気でした。こんな青空を見ると、当然夜空の方も期待したいところです。経験上、昼間あまりにも暑いと、夜は水蒸気が出てベタ曇りになりやすいと思っていたのですが、意外にもベタになるまでには至らず、綺麗な星空が見えるのでした。

ちょうど会社の方は22日から31日まで夏期休暇に入り、平日でも出撃は可能です。新月期を狙って、28日(金)に出張ることにしました。

場所は「船長っの場所」です。ここは夏の間は南からの海風に乗ってガスが出やすい場所ですが、夕方見た限りでは雲が湧いている様子はありません。雲さえなければ、南天の天体を撮るには絶好の場所ですから、イオを寝かしつけた9時前、気合いも電池もフル充電で出発します。チューナーからCDにモードチェンジして、かけるBGMは10数年前に買った中西圭三の「SINGLES」・・・・のはずが?

         ♪汽車汽車ポッポポッポ、シュッポシュッポシュッポッポ〜

 

?・・・あぁ、イオCDじゃないですか!!先日ドライブしたときに入れたまま、入れ替えしてませんでした。おまけに、他のCDは全て家の中。引き返せば済む話ですが、しかし今は一刻も早く現場に行きたい気持ちです。

飽きればチューナーに替えていいのですから、ここは開き直ります。ロンパールームと化したエアッチは、「船長っの場所」めがけて突進し、1時間後に到着。そこで待っていたのは、星1つ見えない曇り空でした。

また、このパターンかっ!!!!!!

 

 

 

 

 

  【近くてよかった】

 

明けて29日。この日も日中は素晴らしい青空です。ネットで衛星画像を見ても雲、水蒸気ひとつない、見事なまでの快晴です。

昨晩はあれから(童謡を延々かけたまま)他の場所にも行ってみたものの、さらに雲の量が多くなって夜半前に撤収。今日再度の出張りを決意しました。え?家内の反応ですか?ここのところ、ドライブとか水遊びに言ったりとか、家族サービスを十分にやっておきましたから、無問題です(?)

 

さて、昨日は南に行って玉砕しました。やっぱりこの時期「船長っの場所」はガスが発生しやすいようです。今日は、思い切って北へ行くことにします。

でも・・・、どこに行ったもんかなぁ。大体、北の方角はここ何年も星見に行ったことがないので、どこがスポットなのか、皆目見当が付きません。更には、行ったはいいけど曇ってしまえば終わりです。こんな時、遠くに行けば行くほどその失望感は大きいものです。

あれこれ考えていますと、3年前に観望地巡りをしていたとき、自宅から5km程北に行ったところに、まぁまぁ星が見える場所があったのを思い出しました。

よし、ここに行くことにします。

距離が5km程度ですから、9時半頃出ても到着するのは10時前でした。空を見ると思ったよりもよく、「いつもの山」と同じ印象があります。5分程度の露出なら、そこそこ撮影できるレベルにありそうです。問題は、南側は道路に面していて、10分に1台はクルマが通るという結構な交通量のため、ヘッドライト攻撃が半端でないことです。これもまぁ気軽な撮影だと割り切れば、我慢できる・・・・のかい?

 

しばらく逡巡するも、これから観望地探しするのは億劫との自己結論に達し、ここに落ち着くことにします。三脚出して、架台を取り付け、バランスウェイト付けて、ホタロン載っければ、次は極軸合わせ・・・・・

         ガイドアイピースの暗視野照明装置がありません!!

 

ぬはーーっ!よりにもよって、照明を家に置き忘れるとは!!コレがないと、暗視野ガイドアイピースの役目を果たさないではないですか。つまり、ガイド撮影できないちゅうことです。

ここで、4つの選択肢が自分に与えられます。

            @機材を一旦片づけて、照明を取りに帰る

           Aホタロンだけ片づけ、架台はそのまま置き去りにして、照明を取りに帰る。

           B失敗覚悟で撮影強行

           Cはぶてて撤収

 

多分、皆さんなら迷わずA以外の選択をしたかもしれませんが、自分はその逆をいくAを選ぶ。家までの距離が近いから、行って戻ってくるまでに40分前後。この間に拉致られる可能性を素早くはじき出した結果のことです。こう言うとき、家に近い場所というのは絶大なアドバンスがあります。

とは言っても、道中は気になって気になって仕方ありませんでした(そんなら、初めから@を採れ、と)。予定通り40分ぐらいで戻ってきましたが、そこに架台があったときは、心底ホッとしました。

 

 

 

 

 

 

 【防具 完全燃焼なるか】

 

 

今回もやっぱりすったもんだしてしまい、余計な時間を費やしてしまいました。0時前になって、ようやく防具での撮影準備が整いました。今回もホタロンはお休みです。何となれば、前回のSW彗星前哨戦で活躍すると思われた防具は、不完全燃焼な結果に終わり、以来雨続きでリベンジの機会を与えられなかったのでした。今日は、あの時の無念を晴らす絶好のチャンスなのです。

え?不完全燃焼に終わらせたのは、誰かさんのピント合わせがまずかったせいじゃないかって?

もちろん、あの反省から、今回はしっかりと防具専用ピント合わせツール2穴式を用意しました。

また、急いてピント合わせをおろそかにすると、ろくな結果にならないことも過去の観望大作戦が如実に証明していますから(←いや、急がなくてもろくな結果になってませんし・・・)、時間をかけて慎重に合わせます。

・・・・・・・・・・・・・う〜ん、それでもなかなかピントの山が掴めんなぁ。

 

 

ま、まぁ一応合ってそうです。これ以上やると、目がシバシバして疲れそうなので、ちょっとずれる結果になっても目をつぶることにします。よし、気分を入れ替えて早速撮影しましょう。

まずはM8とM20の競演を行ってみます。防具76EDは焦点距離が短いので、写野の中に2つの天体が楽々入ります。ガイド星を選んで、船長っ自作のタイマーコントローラをセット(久しぶりの2進数設定は難しかった)。

準備を万端にして、ジャスト0時に撮影開始!・・・した途端、目の前をトラックがゴーッ、と、通り過ぎていきました。一旦中止。

 

腹は立ちますが、こうして撮影開始直後にクルマが通ってくれればまだマシと言えます。タイムアップ間近に横切られると目も当てられません。

そもそも、こんな所を拠点にした事に問題があるわけで、腹を立てるよりも自己防衛することを考えた方が良さそうです。そこで、昔学んだ遮開学(シャッターが開いているカメラに向けて予告無しに光撃してくるライトの光を、いかに上手に遮るかを追求した学問)ですよ。瞬間瞬間でパッと筒先を覆うのです。

問題は筒先を隠す黒いアイテムを持ち合わせていないことですが、全てが本気でない本日の所は、手の平遮蔽でごまかします。

しかし、いざ実行してみると、勘が鈍った今はなかなか思うように行きません。3枚目の撮影の時にクルマがやってきたので、パッと手の平で筒先を被せようとしたら、アッパーカット気味にフードを直撃し、見るも無惨な写真になったりして大変でした。昔は、こうピタッ、ピタッと確実に遮蔽できたような気がするんだがなぁ・・・。

 

そんなこんなで、撮影回数に比べてまともに最後まで露出できた回数が異様に少ないながらも、その後はM22、M23、M103、M31、M52、NGC7293、M45と、8天体20枚を撮影して終了。液晶で見る限りはガイドも良好で、ピントも問題ないようです。

今回は珍しく途中で切り上げることなく、薄明が始まるまで撮影できました。

 

さて、いよいよ画像処理の時間です。ここ何度かは、画像処理の段階で、拡大された画像を見て愕然となるケースばかりです。もう、祈るような気持ちで画像処理ソフトを立ち上げます。

 

     M8&M20  ちょっとガイドズレ

     M22      ちょっとガイドズレ

     M23      写ってるの?

     M103     許せる範囲

     M31      3枚ともガイドズレで全滅。ついでに淡い部分は背景に沈んで何が何やら。

     M52      これまたガイドズレで全滅

     NGC7293  背景の明るさに沈んで写ってるのやら写っていないのやら

     M45      ガイドズレ。星雲がほとんど写ってない

 

といった結果になりました。ピントは「100%」とまではいきませんでしたが、ここ何回かの撮影の中では良かった部類に入り、一安心。皆さんのご期待に添うことが出来ず、申し訳ありません(??)

 

ちなみに、防具76EDの写り具合についてちょこっと。やっぱり青ハロは残りますが、以前使ったED115Sよりは少なく、割とすっきりした印象があります。また周辺まで像の崩れが少なく、お気楽撮影するには十分です。ただ、改造品であることが災いして、明るい星に出る光条が不規則で、まるで傷が入ったような光の伸び方をします。すばるとか、明るい星で構成される星団を写すにはあまり向いていないようですね。

 

*一部はギャラリーにも掲載していますが、ここでは失敗作を恥ずかし気もなく載せてみました。どうか笑ってやって下さい。

 

 

NGC7293

  どこに写っているか分かりますか?

   すばる

  ガイドズレが分からない程度にリサイズしましたが、やっぱり分かる。

アンドロメダ星雲

腕の部分は完全に沈んでます。やっぱり明るい空ではあきません。

   M52

  星の流れに身を任せすぎました。見た瞬間にがっくり。

 

 

                             前に戻る    観望大作戦3に戻る     次に進む