土星食に完敗!!
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【それは困ります】
6月19日は土星が月に隠される土星食があると言うことで、1月から目を付けていた現象でした。前回の土星食は2002年1月25日未明に起こりましたが、月が沈む直前の現象だったことと当時のアパートのベランダからでは方角的に無理だったことから、観望はしませんでした(今思えばやっときゃよかったと後悔しきり)。 |
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今度の土星食はその前回よりも更に条件が悪くて日中の現象ですので、4月の火星食の経験からかなり分の悪いミッションだなとは思っていました。 何と言っても、土星が見えるのかどうか・・・・コレです。天文雑誌には望遠鏡を使えば見えるとは書いていますが、その表現もかなり控えめです。4月の火星食の場合は、輝度が高い火星だったから何とか見えました。しかし、土星の場合は単位面積当たりの明るさは火星よりもかなり暗く、自分の眼力ではまずファインダーで見つけることはできそうにありません。目盛環を使って導入したとしても果たして視認できるかどうか怪しいところです。 それに加えて6月19日は梅雨真っ盛りです。今年の梅雨入りは例年よりも遅れましたが、結局19日よりも前に梅雨入りしてしまいました。天気が持ってくれるか甚だ心配です。 とどめは現象が平日に起こると言うことです。平日に起こる現象を見ると言うことは、すなわち会社を休むと言うことです。「休暇を取っての観望に成功なし」が確立しつつある昨今、今度の土星食も成功する確率はかなり低いと思われます。 以上から勝ち目の薄い戦いだということがプンプン匂うミッションです。当日リンガーハットでチャンポンでも食べて成功祈願をしておく必要があるかもしれません。 |
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さて、当日。空の方は雲量90%近くの見た目にも分かる曇り空。所々晴れ間があるのが大変思わせぶりです。 衛星画像で雲の流れを見ると、沖縄の方から九州に向かってドンドン雲が流れていますが、不思議と九州西部は雲がかかっていないように見受けられます。「それなのに何でこんなに雲があるの?」と思う気持ちもあるものの、少なくとも天気に関してはまだ見込みがありそうな感じ。イオの朝ご飯に付き合いながら「イオを保育園に送ったら、望遠鏡のセットでもしようかな」と頭を巡らします。 ところがあまりにも自分がゆっくりと構えているのを子どもながらに何か感じるものがあったのでしょうか。イオがこんな事を言い出しました。 イオ: 「パパ〜?今日誰がお迎えに来るの?」 普通は母ちゃんがお迎えに行きますが、自分が休みの場合は自分がお迎えに行くようにしています。多分そのあたりを察知したのかと思います。しかし、今回の土星食は潜入が16時半頃、出現が18時頃でお迎えに行く時間帯とバッティングします。母ちゃんとは前日の内に「晴れれば母ちゃんが迎えに行ってくれ」とすり合わせをしておいたのですが、イオにはなるべく言わないでおきたかったところ。でもふたを開けられてしまいました。 自分: 「んーーそうねぇ。もし雨が降ったらパパが迎えに来るわ。」 イオ: 「えー?じゃぁね。イーちゃんね、雨降れー、雨降れーってお願いするの。」 すんな |
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【雲に一喜一憂】
イオを保育園に送り出した後、さあ望遠鏡でもセットしようか、と思いましたが、厚い雲が頻繁に流れるため早めのセッティングは見合わせることにしました。 当初の目論見は、前日の内に出しておいて極軸のセッティングとかビシッと決めておき、当日は目盛環で月や土星を導入しようというものでした。それが出来なくなった以上は、いつ出したところで大して変わりはありません。天気予報ではにわか雨の恐れありとも言ってましたので、サッサと出しておくのは逆にリスクが大きいと言えます。はるか昔の「20cm雨量計事件」とか、4年前の久住での「フルセット野ざらし」の経験をここで活かすべきです。 にしてもスカッと来ません。 一縷の望みを託して昼食はリンガーハットでチャンポンも食べました(・・・いや別にこういうときの昼食は大抵リンガーなんですが)。それにも関わらず空は雲・雲・雲です。最近、リンガー効果も薄れてきたか? この分だと土星食は見ることが出来ない公算が高そうです。モチベーションが下がると眠たくなってきました。万が一のことも考えて目覚ましを3時半頃セットして一眠りします。 ZZzzzz そして迎えた3時頃。何かの拍子に目覚めて空を見ると、うぉっ!晴れてますよっ!何というリンガー効果! ガバッと跳ね起き、駐車場に望遠鏡を設置します。昼間なので北極星の正確な位置は分かりませんが、電柱のトランスがいつも目印になっていたので、ラフなセッティングでもそこそこの精度が取れるのは幸いです。 空を見上げれば月が視認できます。これも幸いでした。目盛環は使えそうにないので、月を導入しておいて視野内に土星が入ってくるのを待つ作戦に切り替えましたが、肝心の月探しに手間取らなくて済みます。 よしよし、まだ食まで時間があるので極軸の追い込みを行いましょうか。太陽の黒点でズレを確認してみるかな・・・。そう思って太陽を見てみたら、見事なまでに黒点がありません。完全のっぺらぼうです。 ならば、金星でやってみます。月から西に20度くらい動かすと、スパッとファインダー内に入ってきました。ここ最近日中の金星探しに苦労したのに、このあっけなさは何なんでしょうか。あまりにもうまく行きすぎて怖いぐらいです。金星を見たのは今年1月以来ちょうど半年振りでした。半月状からややかけたぐらいの形が低倍率でもはっきり分かるぐらい大きくなっています。記念の撮影は後回しにしてまずは極軸を追い込む作業に専念します。船長っが昔教えてくれた極軸合わせ歌を思い出し、金星のズレ具合から微調整をしま・・・・あれ?そう言えば・・・ 天頂付近の星はどっち方向に修正すればいいんだ? 船長っの極軸合わせ歌は 「北東の星で下北半島」: 北東の星のズレが北方向に行くようだったら、高度を下に修正
「南の星で南西諸島」 : 南の星のズレが南方向に行くようだったら、方位を西に修正 を意味するんですが、天頂の星はどちらに属するんでしょう?頭を抱え込んでしまいました。 考える時間がたっぷりあれば冷静に対応できるのでしょうが、時刻を見ると食まで残り30分。予定ではWebカメラで土星を導入し準備万端としておくべきタイミングです。とてもゆっくり極軸を追い込む時間がないです。・・・・・ 頭が混乱してきました。金星はズレにズレまくってますが、もういいや。モニタ見ながら修正かけよう。出現場所は月のクレーターとの位置関係から見当つければいいや(←いつもの負けパターンの兆候)。 ステラナビゲータで月と土星の離れ具合を確認すると、すぐそこに土星が迫っています。月を導入すれば近くに土星が居るはず。急げ! 曇ってました (ToT 東西に伸びる雲がいつの間にやら空半分を覆ってます。これには唖然。憎たらしいことに、天頂付近を境にしてそれより南では快晴です。月を含む北半分はドン曇り。雲の流れは東から西へ超スロー。雲のベルトはいつまで経っても途切れることなく、雲の切れ間が東の彼方にあってもなかなか近づいてくれません。食まで残り15分と言うときに、これってアリですか? 雲(の切れ間)!カマーーン! カマンプリーズ!! ホントに声を大にして叫びたい心境です。でも叫べば変質者認定ですからグッとこらえて心の中で連呼します。 この思い、通じたのは食の僅か3分前。これから月探しが始まりますから、どう考えてもWebカメラ導入までできっこない残り時間です。それでも最善を尽くすのが一天文ファンとしての礼儀と思い、薄雲の中から僅かに見えた月を素早く導入。その近くにあるであろう土星の位置確認を行います。・・・・・・ 見えNEEEEEEEEEEEEっ!!!!! 予想を遙かに上回る淡さというんですか、どこにあるのか皆目見当もつきません。既に隠れているのでは?と思うぐらい土星の「ど」の字も見えません。気ばかり焦るも健闘空しく時間切れ。潜入の観測は失敗に終わりました。 |
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【ジンクスは健在】
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疲れました。出現の観測には望みがあるとは言っても、成功の確率はかなり低いと見積もらざるを得ません。 怖いのは、このまま何の収穫もなくミッションを終える事です。これだけは何としても避けなければ。 ということで、本来だったら極軸の追い込みをやるところを、金星の撮影に切り替えました。 金星をモニタで見たところ、1月の状態よりはまだましな状態でした。ブヨッとはじける時間の方が多いながらも、一応形にはなっています。2枚ほど撮影し処理をしながら、土星の出現を待ちます。チヌ釣りに行って、アラカブでごまかす格好になりましたが、これで成果0からは免れました。 出現の予想時刻は18時前。あと1時間晴れが続いてくれれば何とかなります。頼む、何事もなく出現を迎えてくれ。 分厚い雲到来 またかよ。今度はハンパない厚さの雲がやってきたよ。灰色の低くたれ込めたその様相が、自分に危険信号を激しく知らせます。継続するか撤収するか散々逡巡した末、諦めて撤収し、イオのお迎えにでも行くかということに。いつ雨が降りやしないかドキドキしながらの撤収となりました。 |
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金星 6月19日 16:55撮影 ホタロン+EM200 ToUcam Pro PL17mm 30fps 1/25秒 60秒間の動画撮影 568枚コンポジット後画像処理 |
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今回も「休暇を取っての観望に成功無し」のジンクスは健在でした。いつもなら観測風景の写真とか取って掲載するのですが、それすら出来なかったところに、この土星食ミッションがいかに慌ただしかったかを感じてくれると幸いです。 余談ですが、お迎えに行ったときのイオの喜びようはこれまたハンパないものがあって、それだけでも慰められたような気がします・・・ってか、一連の雲の出し入れはお前が仕向けたんじゃないか?と、帰りの道すがら晴れた空を見て思った次第です。 |
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