Lumenera狂騒曲

                                                                

  

 

【繰り返される過去】

 

 

ToUcamで惑星写真を撮り始めて早4年。「ワンショットで素晴らしい惑星写真を!」なんて言葉は、一体どこに置き忘れてきたのでしょうか。Webカメラでの撮影が当たり前となってしまって、最近ではToUcamUをメインに、WB25との組み合わせでバシバシ数をこなしている今日この頃。打った数ほどの成果があるわけではありませんが、満足のいく写真もそこそこ得ることが出来きてますし、今後も素子がイカレるまで末永く付き合って行く所存です・・・

そんなことを思った矢先のことでした。

 

まるでホタロンプロジェクトのくだりのようなこの文面。

某オークションで、長年注目していたWebカメラが出品された瞬間にあっさり覆されてしまいました。かのカメラはLumeneraLU075Cというもので、以前からアストロアーツのギャラリーにこれで撮影した度肝を抜くような惑星写真が紹介されています。自分が最初に見たのはたしか2年ほど前でしたが、その時思ったわけです。

LU075Cで撮ればこんな写真がゲットできるのかーっ!!

 

この短絡思考、これではプロジェクトEDの再来です。物欲に流されてはいけない・・・と思いつつも、意に反して自分の手は「LU075C」と打ち込み検索に入るこの事実。ところが相手は10万以上もするセレブマシンでした!いくらものすごい惑星写真が撮れるからと言って、物欲を一気開放するにはためらいがありました。以来これまで写真を見てはため息をつき、これに少しでも追いつく気持ちでToUcamで撮り続けてきました。

そして時は流れて・・・・

 

2007年11月某日、スタート価格は4万円でかの製品が出品されています。金額的には安い訳ではないですが、新品の1/3の値です。行くか行かざるべきか、自分の中で理性と物欲の激しい戦いが繰り広げられました。

結果、見事理性が寄り切り。入札することなく、また誰からの入札もないままオークションは終了しました。やったよ!俺は物欲を抑えることができたんだよ!誰かにこの喜びを伝えたい気持ちでいっぱいになりました。

が、今度は3万円で再出品

 

今度は物欲の張り手一閃で圧倒的勝利でした。修行が足りない自分を恥じつつ、でも迷わず入札。

理性という堰を切ったら最後、30000円ぽっきりとリミットをかけたはずが、ライバルが現れるや「33500円ぐらいにしようかな?」「35000円行ってしまえ」「なにくそ36000円でどうだ」「ええーい38000円!」ともはや歯止めがかからなくなってしまいました。幸い最初のルーチンの価格より安い38000円で落札しましたが、この4年間何ら成長の跡が見られないのはどうしたものでしょうか。・・・と形ばかりの反省を見せつつ・・・。

 

 

 

 

【頭抱える】

 

 

落札して数日後ブツが来ました。手に持ってみるとさすがに新品価格で12万円、ずっしり重量感あふれるブラックメタルボディに、ToUcamとはひと味違う高級感が漂います。

嬉しいことに、これが来た翌日はすっきり晴れ上がりました。テスト撮影をするには申し分ない夜空です。USBケーブルが付属していなくて慌てましたが、プリンタ用のUSBケーブルを用意して事なきを得、本番中にPCから「ドライバなかけん動かんよ」と言われないよう、事前にドライバを入れて万全の準備を整えました。

夜中の2時過ぎ、天高く上がった火星を迎え撃ちます。眼視確認もそこそこにさっさとLU075Cをセッティング。キャプチャソフトは付属のものがあまりにも貧弱なので、ToUcamで使い慣れたVRecordを使用しました。とは言っても、カメラの各種設定はLU075C用に用意された画面が出てくるので、ToUcamのようにはいきませんでした。特に露出とかゲイン以外にも設定する項目がたくさんあって、バランス良く調整するのに苦労させられました。10分ほどいじって何とか模様が写し出されましたが、細かいブロックを積んで出来たような像質で、何と言いますか、ブラウン管テレビを間近で見ているかのようです。色も毒々しく、ToUcamの画質に到底及びません。ええ・・・と、これがあの高詳細な写真に化けるんですかね?かなり懐疑的です。でもまぁ、とりあえず撮ってみましょうか。フレームレートは30fpsにして70秒。では行きます。ポチッと・・・・。

フレーム落ちまくり!!!

 

何だこりゃ?キャプチャ数とドロップ数がほぼ同じ勢いでカウントされていくじゃないですか。ToUcamでもフレーム落ちは発生しますが、高々数枚〜10数枚のレベル。対してこちらは数百枚もドロップしました。フレーム落ちの原因はPCの処理能力が貧弱だとかHDDの不連続領域が多いとかに大抵起因しますが、PCC2D 1.6GHz使ってますし、不連続領域がいきなり増えたとは考えにくいことです。

試しに15fpsにレートを落として撮ってみても、あまり改善された風には見えませんでした。原因が分からないのでこの日のテスト撮影は中止し、ToUcamでいつもの通り撮影して撤収しました。

 

明けて翌日、家の中で色々とテストしてみました。レートや露出をいろいろ変えてドロップの発生数を確認したり、VRecord以外のソフトなら相性が合うんじゃないかとAMCapをインストールして、同じようなテストをしたり。

その結果、

  速いレートではドロップ数が多いが、遅いレートでもドロップが頻発する→最適なレート設定が存在?

  露出設定変更によるドロップの数は変化無し→シャッター制御には無関係っぽい

  AMCapでも劇的な改善は見られない→キャプチャソフトには依存しない?

 

下の表にまとめてみると、VRecord15fpsの時だけドロップが発生していません。前日は発生しまくりだったのに?キツネにつままれたような気分になるも、15fpsだったら何とかなるだろうということに落ち着き、次なるテスト撮影で試してみることにしました。

 

 

2回目のテスト撮影でも、ゲインや露出、色調整がカチッと調整できませんで、ファインチューニングに今後の課題を残すこととなりました。まっ、とりあえず撮っちゃいましょう。昨日に引き続き、Vrecordでの撮影です。

 

フレームレートが15fpsであることを確認して撮影開始。今度は目論見通りフレーム落ちが全く起こりませんで、この点は一歩前進です。撮影後、その場でREGISTAXにかけてみます。この荒々しい火星が、果たしてあの詳細感にあふれた美しい火星に化けるのでしょうか?アライメントの結果やいかに?

なんですか?このパルス信号は??

スタックしたら、

走査線のような縞模様が乗りまくり

さすが新品価格で12万のセレブなマシン、そうそう簡単に思い通りになってくれませんか。頭痛がしてきましたので、庶民に優しいToUcamに慰めてもらいました・・・。

 

 

 

【君と出会う】

 

フレーム落ちの原因は、最初外部電源をつないでいないために動作が不安定になるのではないかと考えました。が、いろんなサイトの情報や中井さんのアドバイスから、電源云々ではなくてキャプチャソフトとの相性に問題がありそうとの結論に落ち着きました。LU075CVRecordの組み合わせで撮っている方の中には、やはりハンパでないフレーム落ちに悩まされているようで、綴られた打開策は大変参考になりました。さすがセレブなマシン、相手もえり好みしますか(こんちくしょう)。

一番初めに目に付いたのは、参照型aviravi)で記録すれば改善できるというものでした。ただravi形式ではRegistaxで読み込めないらしく、一旦aviに変換するというステップが必要になるとのこと。とにかく実践しながら理解していくことにします。raviは一種のライブラリなのか、ファイルをダウンロードしてからキャプチャソフトのプロパティでraviで記録するよう設定しました。傍目には何の変化もなさそうにも見えます。これでうまく行くんでしょうか??

3回目のテスト撮影で試してみます・・・。

まっさかさ〜ま〜に、落ちてフレーム(曲:中森明菜「DESIRE」より)

 

全然改善されません・・・ってか、avi記録してるじゃねぇか!raviはどうした、raviは?

設定したはずなのに、有効に働いていない?何度やってみてもravi記録される気配はないし、フレーム落ちまくってさっぱり先に進めませんし、自分の理解が不十分だとしてもこの仕打ちはあんまりです。却下!消去!!

 

大体LU075Cに付属のアプリが貧弱なのがいけないんだ。高い値付けにするんなら、それに見合った高級アプリが提供されて然るべきじゃないか、等々ブツクサ言いつつ、今度はもう少し手を広げて海外サイトの情報も集めてみます。

そこで自分は出会いました。LucamRecorderなるものに。これは一言で言えばLUシリーズのWEBカメラで天体を撮るために作られたアプリだと解釈しています。以前はフリーソフトだったのが、現在は有償での配布になっているようで、フリー版はjpg形式でのスナップしか撮れない制限付き。当然このままでは動画を記録する事なんて出来ません。ここで自分は思いました。元々フリーと言うことは、有償だとしてもそれ程高くはないはず。思うに1000円ぐらいで配布されているんじゃなかろうか、と。サイトに行って苦手な英文の波の中かライセンス料に関係する記述を探しました。その結果、動画が撮れるプロ版で75ユーロ。んーーと、1ユーロ163円という事は・・・。

1万2225円? ( Д) ゜゜

 

自分の予想を1桁上回るこの価格!4万近く出費した上に、更に1万円上乗せですか。

・・・おそらく、ここ何回かのテスト撮影でそれなりの感触を得られていれば、この価格は「高い」とは思わなかったでしょう。ですが、モニタでの画質の粗さや、これまで何の成果も得られていない状況で、今後うまくお付き合いできるかどうか分からないだけにかなり高く感じます。そう、自分の価値観なんて気分次第というのがよく分かるケースです。かと言って他にアテがあるわけでもなし・・・。

逡巡しながら更に先を読んでいくと、ライセンスには続きがありました。お試し用のライセンスが30日間限定で無料発行されているそうです。30日間なら少なくとも火星の最接近まではカバーできます。お試しという割りにはなかなかのサービス精神ではないですか。さすがはセレブなマシンを操るソフト。と賞賛する一方でどこかに罠が仕掛けられていないか、内容を入念に読み下しました。一応問題なさそうと判断できましたので、Recorderをダウンロードして、手順に従ってライセンス発行を依頼したのでした。

 

 

 

 

 

【悩みはつきず】

 

ライセンスは、要求後3日経過して届きました。既にダウンロードしてインストールしたRECORDER「不具合があるから、一旦アンインストールしろ」とのおまけ付きで余計な手間を食いましたが、ライセンス登録はつつがなく終わり、あとは時間との勝負となりそうです。

4回目のテスト撮影は12/6に実行しました。部屋の中でRECODERを走らせて、大体の感触は掴んでいたので、多分問題なく記録できるはず・・・でした。

モニタ上に火星を投影すると、おお!VRecordとは違って滑らかですよ。ToUcamの画質に近いものがあります。もしかするとこれは画像処理で大化けするかも?

記録は出来るだけ高解像度にした方がよいと考え、12bitモードで記録するように設定。aviモードが選択できないのは気になりますが、「RAW」という文字があるところを見ると、これが一番よさそうです。

 

撮影開始してびっくり。全然フレーム落ちが発生しませんよ。素晴らしい。記録後、期待に胸を膨らませて早速REGISTAX処理に入ります。

えーっと、さっき撮ったaviはどこでしょか?ありましたありました。これを選べばプレビューに火星が出てくるはず・・・。ん?エラーがでましたね。何ででしょうか。

不思議に思って、念のためメディアプレイヤーで流してみますがここでもエラーではじかれます。もしかして変換が必要?エクスプローラで見ると、変なフォルダが作られて、その中に膨大な数の「RAW」画像が格納されていました。

これをどうしろと?

 

RAWだからステライメージで読み出せないだろうか? RAWaviに変換するコマンドってあったっけ?・・・などなど策を弄するも全てはじき返されてしまいました。

これではいくら高解像で撮っても使い物にならないわけで、寒空の中他の機能を試すことを放棄した自分は、撮ったばかりのLU画像を全て消却。頭痛がひどくなってきたので、またもToUcamに慰めてもらう羽目になりました。

後日、中井さんからravi形式からaviへの変換方法について再びアドバイスがありました。何という渡りに船。この情報を元に5回目のテストで試してみましょう。

 

12/9、記録形式をraviにして撮影を開始。シーイングはあまり良くないものの、拡大率を抑えているおかげでモニタ上の火星はまぁまぁの画質です。中井さんのアドバイスによれば、まずは「Project」のメニューをば・・・・ないわ? 初っぱなから躓いてしまいました。プルダウンしてみればあるかな?

あれこれ探してみたところ、「SER conversion」なる似たようなメニューが見つかりました。バージョン違いで名称が変わったのかもしれません。とりあえず先に進むとファイル読み出し画面が出てきました。あぁ、ここからraviを選べばいいわけ・・・・選べんやん? 選べるのは「*.ser」という形式のファイルみたいです。

(腕を組んで遠い目)・・・・あれこれ考えるのはよしましょうか。serしか選べないんであればそれで撮ればいいじゃありませんか。実行あるのみです。

 

気を取り直して再設定。ser形式に変更して再び撮影します。その後先ほどの「SER conversion」画面に入ってファイルを呼び出したところ、今度はまともに呼び出せました。いよっし!あとはこれをaviに変換すればいいはずです。・・・・・・・・・・・・よしよし、変換に数分を要しましたがaviができました。容量は3倍近くに膨れあがって、15fps 150秒の動画で2GB近くも喰らいました。これでREGISTAXで読み込めなかったらWebカメラでダンクシュートを決めてやろうかと思いたくなるようなファイルサイズです。

 

運命の選択、果たしてプレビューに火星が表示されるか??・・・・・・

できたーーー!!!

 

中井さんのアドバイスのおかげで、やっとこさ最終処理までこぎつけました。

出来上がった火星は、写りとしてはToUcamレベルにあることが分かりました。しかし、セレブなマシンのとして決定的なアドバンテージがあるかと言えば、まだまだそこまで至らず、コストパフォーマンス、扱いやすさ、いろんな点で今のところToUcamが勝っていると言えます。今後自分自身のスキルアップも含め、どこまでToUcamの画像を引き離せるのか調べてみる必要があるでしょう。

さしあたっての目標は、お金を払ってライセンスを取得するだけの価値があるのか判断したいところです。

 

 

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