細い太陽見て撮って

                                                                

  

 

【見れるか?撮れるか?】

 

 

出張り観望に出なくなってからネタがなくなり、ずいぶんとご無沙汰していました観望大作戦、久々の更新です。

出張り観望に依存せず、何かネタがあれば逐一アップしたいという気持ちはあるものの、いずれも10行程度で終わるレベルの物ばかり。かといって、ブログに移行してこまめに更新するというのも性格上長続きしそうになく(つぼやきを頻繁にご覧になっている方は、多分分かってくれるでしょう)、悶々としている間にここまで来てしまった次第です。

 

さて、いよいよ世紀の皆既日食まで残りあと僅かとなってきました。幸いなことに、今年は会社の夏期休暇が18日から22日までに設定されていて、会社を休むことなく観望することができます。こんな時に滅多にない天文ショーがあれば、普段の自分なら「震えるぜハート、燃え尽きるほどヒート!(ジョジョの奇妙な冒険より)」みたいなモチベーションが湧いてくるのですが、クルマで行けないような所に重い機材を持って行ってまで皆既日食を見たいと言う気にどうしてもなれず、自宅からの部分日食観望でお茶を濁すことにしました。

計画も非常に大ざっぱで、「ホタロンにデジカメを取っつけて、コリメートで定期的に撮りましょう。インターバルの間は防具76で眼視観測しましょう」ぐらいの内容のもの。「露出設定を云々」とか、「何分間隔で撮影する」とか具体的な部分は何も考えていないのは恥ずかしいところです。

 

 

各地域での日食の見え方

(アストロアーツHPより引用)

 

もっとも、最低限押さえなければならないポイントはあります。その中でも最も重要な要素が、「日食が始まる時間に、太陽が自宅の屋根から出てきてくれるか?」です。今の時期、ベランダからでは観望することが出来ませんので、必然と駐車場に据え付けての観望になります。が、日の出後しばらくは自宅に遮られて見ることが出来ないのです。当地では9時35分前後から日食が始まりますが、夏至の頃に確認した時点では、ちょうどその時間帯に屋根から出るかでないかのギリギリのタイミングでした。それから1ヶ月経過して、太陽がやや南寄りにシフトしたことで屋根から顔を出す時間帯が早まったかどうか、梅雨の曇り空に阻まれて未確認のままです。遅くとも日食前日までには確認する必要がありそうです。

 

その次に重要なのが、休日対応が発生しやしないかということです。今のところ、仕事関係ではなさそうですが、組合関係は要注意。何となれば、某国某総理が7月21日に衆院解散するとのたまったからです。衆院解散するや、組合が選挙活動を本格化させるのは必至。そうなると、動員が係る可能性は高くなります。某総理に呪いをかけて、衆院解散を宣言できないようにするのが理想的ですが、オカルト方面にのめり込むだけのガッツと時間はないわけで、ここは組合へは「外出します」と事前連絡することで乗り切りたいと思います(一応「外」に「出る」わけなので間違っちゃいませんし)。

 

お次は天気。Y−daスタイルの1つに「休みを取っての観望会に成功なし」というのがありますが、成功しない原因はほとんど悪天候によるものでした。しかし今回は夏休み。神様が鉄槌を下すことはないでしょう。九州南部が7月第2週に梅雨明けしたことから、九州北部の梅雨も日食前には明けるのではないかと考えます。が、なぜか週間天気は曇りの予報・・・・。これはひょっとして未明にリンガーハットに行けと言うことか??

 

とまぁ、準備らしい準備は全然していないに等しく、「やる気あんのか、こら!」と言われかねない状況ですが、実は晴れの天気にするための策略として取り組んでいるかもしれませんので(?)、その点はご容赦頂きたいと思います。

さぁ、来い日食!!(続く)

 

 

  

 

【やる気を見せなきゃ願いは通じる】

 

 

週間天気は、相変わらず22日の予報は雲または雨マークで、第2週に梅雨明けするとの自分の思惑は完全に外れ、日食観望は望み薄になってきました。しかも見事なくらいに全国一律同じ状況(那覇除く)で、「世の中には一蓮托生という言葉があってな・・・」と、つぶやきたくなるほど気分はブルー。

もとより、当地は連日雨か曇りのパッとしない天気が続き、太陽が屋根から顔を出す時間の確認や、撮影の事前練習以前の問題です。モチベーションなど高まるはずもなく、「ぶっつけ本番でも何とかなるやろ」と言うならまだしも、「別に見れんでもいいかな。」と、開き直れるぐらいすっかりやる気が失せてしまいました。

 

ところが、こういうときに不思議と事態は好転するもので、20日の週間天気で、なんと晴マークが出たじゃないですか!22日の予想天気図を見ると、梅雨前線が九州付近で大きく南に下がっています。九州北部の当地は微妙ながらも、「ひょっとするとひょっとするかも」の期待感がでてきました。

日食前日の21日。朝から小雨交じりの空模様で、「ホントに明日晴れるんかいな?」との疑念をぬぐえませんが、天気図通りに推移するとすれば、22日の未明には北極星が顔を出すぐらいの晴れ間が出るだろうと予想しました。「やれやれ、仕方ないなー。一応準備だけはしておくか」と、いかにもやる気がないよう演じつつ、雨が止んだ頃を見計らってEM200とLN赤道儀のみ設置し、北極星があるであろう方向にとりあえず向けておき、北極星が見えれば即極軸合わせができるようにしておきます。

 

シートにくるまれた赤道儀2体

 

EM200とLNを組み上げて、万が一に備えてシートで覆っておきました。

この後、未明に大雨に見舞われてしまいましたが、本体の方まで雨は

染みこまず、事なきを得ました。

本当は2つの赤道儀の間隔や極軸合わせもしっかり調整しておきたかった

のですが、今回の天候ではそこまで至りませんでした。

 

(写真は、22日に撮影したものです)

 

 

一方、望遠鏡の方もホタロンを撮影用、防具を眼視観望用にそれぞれセッティングし、他の機材と共に部屋の片隅でスタンバイさせておくなど、モチベーションは低空飛行のまま着々と準備を進めていきます。

あとは夜半頃に空の様子を見て、北極星が出ていれば極軸を合わせて当日を迎える・・・・算段でおりました。

 

22日午前2時頃。目覚ましで起きる前に、窓をたたきつける雨の音で目が覚めました。おいおい、外は暴風雨だよ!!風はゴーゴー、雨はザーザー。外を見ると現実逃避したくなるような世界です。幸い、2台の赤道儀はシートで入念にくるんでいたので、野ざらし状態でも問題はない(多分)でしょうが、これじゃあ極軸合わせなんでできっこありません。

どうやら自分の演技は全て神様に見透かされていたか?

 

 

  

 

【逆転サヨナラホームラン】

 

 

22日朝6時半。タカのかかと落としで目が覚め外を見てみると、深夜の雨はすっかり止んでいました。が、空はどんより曇り空。衛星画像では、分厚い雲は九州南部に下がっていますが、まだまだ北部の方にも雲がかかっていまして、予断を許さない状況ではあります。とりあえずイオとタカを保育園に送り出し、機材をセッティングして本番を迎えることにします。ちなみに、野ざらしになっていた赤道儀は、シートはびしょ濡れでしたが本体までは浸透せず、正常に動作していたので一安心。

空の方は、9時頃から空が少しずつ明るくなり、うっすらながら太陽の輪郭も判別できるほどになりました。見られなかったことを想定して、寂しげな機材の様子とか、空一面に広がる雲を撮って、本ミッションが不成功に終わった場合のネタ仕込みをしていましたが、この分だと本来のネタを載せることが出来そうです。

 

日食を迎え撃つホタロンと防具

 

曇り空ながら、日食が見られる可能性もあることから、とりあえずセッティングを

して太陽を迎え撃ちます。

とは言え、このときの空の状況は左下の写真の通りで、このまま何もできずに

終わりそうな気配が漂っていました。

 

 

 

 

一面厚い雲に覆われる空(22日 8:23頃)

少しずつ雲の切れ間が出てきた様子(22日 9:21頃)

 

 

残る問題は、日食が始まる前に太陽が屋根から出てきてくれるか?結局未確認のまま本番を迎えてしまいました。

9時25分。太陽は屋根の縁まで差し掛かり、望遠鏡の視界に入るまであともう少しというところまで来ました。しかし、その「あと少し」が異常に長い!欠け始めの予想が9時35分頃という事ですから、太陽が出て→望遠鏡に導入して→ピントを合わせて→拡大率を調整して→試写して、のサイクルを行うには、時間に余裕がありません。まだかまだかとファインダーを覗きながら待つことさらに数分。30分過ぎにようやく太陽が屋根から見え始めました。すわ!急げ。

パパパッと太陽をカメラの液晶に投影し、太陽全体が見えた頃にピントと拡大率を調整。通常ならここで何かをやらかすのが常なんですが、珍しいことにスムーズに事が運び、3分少々で試写まで完了。俺はやれば出来る子!

気をよくしてもう1枚試し撮りをしようとしたところ、太陽の縁が少しくぼんでいるのがわかりました。食が始まったようで、息つく間もなく本番へ突入です。それからは、タイトル通りの「見て撮って」が忙しく行われます。当初は「定期的に撮影しよう」と計画していたのに、5年前の金星日面通過を彷彿とさせるほどひっきりなしに雲が通過していきます。いつ何時雲に隠されて、「ハイ、終了!」となるかもしれませんから、撮れる時に撮り、見れる時に見なければ。

 

 

 

それぞれの望遠鏡の構成

ホタロンにはオリンパスのデジカメを接続して、コリメートでの撮影専用。防具の方はフリップミラーにアイピースをつけて眼視観測専用としました。ちなみに、防具の方はこれだけではピントが出ないことが食の開始直後に判明し、大慌てで延長チューブを継ぎ足すこととなりました^^

 

 

 

 

 

 

時間が経過するにしたがって、太陽の欠け具合がどんどん大きくなってきました。じっと見ている分には月が動いている様子はなかなか実感できないものの、デジカメの液晶を不定期に見ると、なるほど見るたびに月が移動しているのが分かります。

ここで困ったことが1。、最初のウチはオート撮影でそこそこうまく撮れても、食分が大きくなってくるとオートでは露出オーバー気味になるのでした。おそらく、オートの場合画面全体の明るさの平均を取って露出を決めているために、どうしても露出を長めに設定してしまうのだろうと思います。明るい部分にフォーカスを当て、撮影前にちょっと構図を見直す方法も考えたものの、この雲の多さでは構図を見直している間に太陽が隠されてしまう危険性があります。そこで、オートからマニュアルに切り替えて、「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」よろしく、露出を逐一変更してバシャバシャとシャッターを切りまくりました。それでも、雲の量で明るさもコロコロ変わり、露出決定→撮影実行の僅かな時間に厚い雲が来たりして(あるいはその逆になったり)、なかなか思うような写真が撮れないのには閉口。裏を掻くか掻かれるかの激しい駆け引き合戦が繰り広げられました。

そして迎えた10時55分。当地での食の最大となりまして、雲の合間から何とか見ることが出来ました。空を見上げて雲越しの太陽を見ると、まるで最大光度の時の金星のような円弧状となっているのがはっきり分かり、望遠鏡で見るのとはまた違う感動を味わうことが出来ました。空の方は、それ以前からうっすら周囲が暗くなり、やや涼しさを感じました。これが黒い太陽だったら、もっと摩訶不思議な光景を目にすることになるのだろうなと思うと、皆既日食にやみつきになる人の心が何となく分かるような気がします。

 

10:57 食の最大から少し経過した太陽の様子(左はホタロン、右はEOS Kiss-D手持ち撮影)

 

お隣の子も日食の様子を観察しました

 

無機質に欠けている太陽を見てもあんまり感動しないだろうな、と思ったのですが、

「うわーすごい。まるでお月さんみたい!」と、興奮しながら見ていました。

これで今年の自由研究は決まったかな?

 

 

 

 

この後は、再び太陽が太ってくる様子を見て撮る作業が続きましたが、11時50分頃から雲が厚くなって、食の終わりを見届けることはできませんで、12時20分ぐらいに撤収と相成りました。

撮影した結果をプレビューすると、雲が邪魔しないものはなかったものの、逆に臨場感のある写真になったのではないかと思います(食の様子はギャラリーにアップしていますのでご覧ください)。一通りの観望に大満足した後は、吉例にならってリンガーハットでダブルチャンポン+ビールで祝杯を上げ、心ゆくまで惰眠をむさぼった次第です。

次は2012年の金環日食。これはクルマで行ける場所で見られると言うことですので、是非出張って見てみたいものです(個人的には、こちらが本命)。

 

昼過ぎの空

 

午後になると一気に晴れ上がり、一面青空になっていました。

この空が日食の時に来てくれれば!!

でも、雲が通過しての日食の様子も、思いの外味わいのある雰囲気を醸し

だしていましたのでヨシとしたいと思います。

 

 

 

 

 

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