アトラさん出陣です

          

 

  

 

【平日なのに】

  

アトラが来てから2ヶ月経った10月。自宅からのテスト撮影で何度も何度も試行錯誤を繰り返してきた結果、ようやくPECの効果も確認できて、次なるステップはいよいよ実戦投入というところまでこぎつけました。

ただ、目処がついたのが満月近くに時期だったので、出張り撮影を敢行するには2週間ほど待たなければなりません。やるとすれば、11月の10日あたりか、17日あたりになります。

それを見計らったかのように、11月に入ってからは天気がすぐれない日が続きました。特に「週末は雨」のパターン。9日や10日はなかなかまとまった雨に見舞われ、出張り計画はあえなく玉砕という憂き目にあいました。これで17日前後を逃すと、また1ヶ月繰り延べとなってしまいます。これでは困ります。何とか晴れてほしいところ。

しかし、現実はなかなか厳しいものです。週間天気を見てみると、タイミングを計ったように16日(金)から崩れだし、17日(土)は雨、18日(日)は一転して晴れという予想。日曜日に晴れてくれてもなんだかなぁ・・・。正直、全然うれしくありませんでした、この時点では。

11月の実戦投入を諦めかけていた15日、何気なしに朝のニュースで天気予報を見たところ、昼頃から天気が回復するという予報。この天気は翌16日日中までは持つらしく、にわかに「出張ってみるか?」と悪のささやきが頭の中を駆けめぐります。いやいや、待て待て!15日は木曜日。明日も仕事を控えているのに、星にうつつをぬかしていいわけはありません。大体これまでの経験上、日中に天気が回復すると言われて天体撮影が出来るような快晴になった試しがないですし、ここは仕事優先で進めるべ・・・・・・

 

ホントに快晴になっちゃった!!

 

何という誘惑の夜空なんでしょうか。透明度が高い抜けるような空を見てつい心のストッパーも抜けてしまいました。平日なんですが、ここで出張らなかったら後々すごく後悔しそうな気がします。いつの間にか悪魔のささやきは天使のささやきにチェンジオーバー。完全に洗脳された自分は、帰宅するや家族の白い目にも臆することなく機材を積み込み、イオとタカを布団に潜り込ませてレディーゴー!行き先を「いつもの山」に定め、ガソリン少ないエアッチで颯爽と飛び出したのでした。

 

  

 

【のんびりできるはずなのに】

 

現地到着は10時ちょい前でした。到着後の夜空も良好で雲は見あたりません。気温は7℃くらいでしたが、風はなく、防寒対策も十分だったため寒さも感じられません。これならイケル!

さっと機材を組み立て、極軸の微調整を終わったのが10時半頃で、それからピント合わせを済ませて、撮影の準備が出来たのはなんと11時前!

これまで、なんだかんだで撮影に入るのはいつも日付が変わる頃という「撮影時刻保存の法則」に泣かされていたというのに、珍しいこともあるものです。やっぱり今日はイケそうな予感!

いい気分に浸って、本日は星雲関係を中心に取り締まってみたいと思います。お約束のM31アンドロメダ星雲を皮切りに、久しぶりにさんかく座のM33も行ってみたいところ。また、ちょうこくしつ座のNGC253は外せない対象です。何となれば、先日船長っがブログに素晴らしいNGC253の写真をアップしていたからです。オレンジ色に輝く核、その核に吸い込まれるような淡い腕と暗黒帯の微細な構造が滑らか、かつくっきりと写し出されたこの1枚。過去、自分の撮ったNGC253はざらめようなノイジーなものばかりでしたので、船長っの写真に触発されて「今度こそは」という思いがこみ上げてきます。

 

M31アンドロメダ大星雲

 

 2012年11月15日 22:45〜23:11

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX4 ISO800設定

 5分×5枚をコンポジット

 

ノータッチで撮影したM31です。F値が暗かったことと、感度を 低めにしたことで、合計25分の露出でも不足気味だったようです。

もう少し腕の部分が出るかと思ったのですが、画質が荒くなったので控えめにしてみました。

コンポジット枚数を増やせば、もうちょっと強い処理がかけられるかもしれません。

 

 

 

その大本命のNGC253は、M31の撮影を終えたあとに狙ってみました。いつもなら導入だけで結構な時間を費やすものですが、くじら座のデネブカイトスを基準にNGC253を導入設定すれば、10秒とかからずカメラのほぼ写野の真ん中に入れてくれます。これはかなり助かります。天頂付近にある天体や、暗くて視認が難しい天体など、カメラのファインダー内にいれるだけでも時間がかかりそうな対象でも、スピーディな撮影が期待できそうです。

準備が整い、5分露出の5枚を連続撮影に設定して撮影に入りました。ノータッチでの撮影ですから、1分ほど様子を見て順調に動いていることを確認したら、あとはアトラにお任せして、こちらは双眼鏡で星空観望としゃれこもうかと思います。と思ったその時、

 

アトラ: ウィン。。。

 

・・・・何だ、今の音は?なんか急速にモータが動いたような気がしましたが?何が起こったのかよく分かりませんでしたので、しばらくアトラの動きを注視してみました。すると・・・・、

 

アトラ: ウィン。。。

 

へんちくりんな音とともに、カメラが大きく横(東西方向)にぶれました。おいおい、赤経モータがしゃっくりしてますよ?撮影を中止してプレビューを開くと、見事に横一文字の軌跡が記録されています。再撮影してみましたが、終了間際になってまたモータが変な動きをしてしまい、先ほどと同じように星が東西方向に伸びてしまって失敗。さっき撮影したM31では何事もなかったのに!これまで自宅の撮影ではいっさい出なかったのに!

もしかすると、方向によってバランスが崩れてしまうのかもしれません。もう一度慎重にバランスを合わせ、また、感度を800→1600に上げて露出時間を5分→3分に短縮し、しゃっくりに遭遇するリスクを軽減する策を講じます。

NGC253のあとはM33、M1、M42などの撮影も行いましたが、しゃっくり現象の頻度は少なくなったもののたまに起きました。しかも、ほったらかしにしたときだけ。そばにいるときはいたって快調。アトラはもしかして寂しがりやなのか、はたまた自分だけ働くのが許せん質なのか・・・・。

 

この日は、2時ぐらいまで8天体33枚ほど撮影しました。もう少し粘りたかったのですが、雲が張ってきて晴れる様子がなさそうだったので撤収。そのせいか、翌日の仕事には思ったほど影響はありませんでした。

しゃっくり現象のおかげで、撮影中に双眼鏡で星空観望する夢は夢で終わったモノの、それでもアトラのそばで空を見上げる時間は取れましたし、いくつか火球も見ることが出来たことはよかったと思います。何より、ノータッチ撮影の結果も納得のいくものでしたので、アトラの初出陣はまず成功と言っていいでしょう。今後につながる出張り撮影でした。

 

お約束のオリオン大星雲

 

 2012年11月16日 1:31〜1:47

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX4 ISO1600設定

 3分×5枚をコンポジット

 

途中薄雲が通ったので、コントラストが悪いコマもありましたが、 ノイズ減らしのため撮影したコマを全部コンポジットしてみました。

2010年のものよりもやや赤みを強く処理しました。

ギャラリーの方には、2010年撮影のものとコンポジットして処理を強めた写真を載せていますので、そちらもご覧頂きたいと思います。

 

 

 

久しぶりの馬頭星雲

 

 2012年11月16日 1:51〜2:04

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX4 ISO3200設定

 3分×4枚をコンポジット

 

ISO3200まで上げても、ノーマルのEOSではやっぱり馬頭 星雲はきついです。これもコンポジット枚数を増やして、処理を強くしていきたいところです。

 

 

 

  

 

【日曜の夜なのに】

 

分が15日に出張ったという事実を知って、「ヤラレタ!」と思った人物がいました。その人物の名は・・・・、大体予想がつくと思いますが、船長っでした。

船長っはこの日自宅でオートガイドのテストをやる傍ら、「よー晴れとるなぁ。これが明日(金)だったらなー」とY−daにつぶやいていたのです。その時、自分はエアッチを駆って「いつもの山」に移動中だったのでした。ここのところ、いくら船長っが自分に誘いのメールをしても、「時間がない」「今出張」などなど、まるで山口さんちのツトム君みたいな返事しかかえってこなかっただけに、15日の返信メールが「いつもの山で試運転中です。」だなんて思いもよらなかったことでしょう。

そういった伏線が(多分)あって、18日日中の見事な青空には相当心を動かされたに違いありません。しかし、明日は月曜日。後で聞いたところによれば、どうしても出なければならない会議(でしたっけ?)があったので、出張るべきか見送るべきか迷っていたそうです。

 

そんな船長っの複雑な心境が、自分とのメールのやりとりの中にひしひしと感じられました。自分は思いました。ここで、もし自分が「今日も行くつもりだよ」と返せば、一も二もなく乗ってくるだろうな、と。でも、明日は月曜日。でもでも、この青空を逃すとやっぱり後悔しそう。でもでもでも、15日のときは「日曜日に晴れても嬉しくないなー」と言ってしまったし・・・。

 

まっ、何とかなっさ。

 

こんなにモチベーションが上がるのも久しぶりのことだし、気の向くまま行動するのがこの際一番です。そもそも、15日に前例を作って問題なかったわけですから。とはいえ、やっぱり仕事に影響を極力残さないよう、撤収は2時半頃目標。そういうことで、船長っに甘い誘惑をかけてみることにしました。果たして、船長っからは間をおかずに「行くぜ!!」のメール。

しかも、19時頃現地出発の予告まで入ってくるではありませんか!どんなに出張りたかったか、船長っの強い思いがかいま見えたやりとりでした。そこまでして、ネタ作りに励まなくてもいいのに(?)

 

船長っは予定通り19時頃出発。自分の方は遅れること2時間してから出発しました。

本日の場所は「船長っの場所」。やっぱり暗さを求めるならここが一番です。出る前に船長っに現地の空模様を聞いたところでは「無風、快晴」とのこと。ここで「曇り、強風」だったら焚きつけるだけ焚きつけといてはしごを外すことも考えたんですが。

「船長っの場所」を訪れるのはかれこれ2年ぶりです。途中どれだけのシカやウサギやカエルに出会うことになるやらと思っていたら、全く遭遇することなくすんなりと現地に到着しました。

きっとネタをたんまり作っているであろう船長っの様子を確かめると、つい先ほどまで星野写真を撮っていたそうで、本格的な撮影は今し方始めたそうです。先日までオートガイドの調整に明け暮れていた船長っのG11は、その成果を見せてくれるのでしょうか?なにやらネタが出てきそうな予感。

 

それはさておき、こちらもささっとシステムを組み上げて撮影に入ることにします。ちょっと極軸の微調整に手間取りましたが、それでも先日と同じく11時前には態勢が整いました。もう、「撮影時刻保存の法則」からは完全に抜け出したと言ってもいいかもしれません。

この日のファーストショットは15日にも撮影したNGC253にします。何となれば、15日撮影分を処理したところ、たしかにこれまでのものよりも格段にいい結果にはなったのですが、船長っのあの滑らか253と比べるとやっぱりノイジー。少しでもざらめ感をなくすには枚数を稼いでコンポジットする必要があります。そういうこともあり、再びNGC253を撮ることにしたのでした。

その後は、過去に失敗したM52(カシオペヤ座)を皮切りにいくつか散開星団をチャチャッと取り締まり、オリオン座にあるウルトラの星M78星雲にリレーしたいと思います。

さぁ、まずはNGC253行きますよ。自動導入でカメラの写野に導入し、撮影枚数や露出時間、感度などを設定していざスタート。今日こそはしゃっくり現象に悩まされないことを期待します。

 

                                         アトラ: ウィン。。。。

 

ちくしょう!期待した矢先にしゃくりやがった!しかも、船長っの撮影風景をちょっとのぞいている間に、です。案の定、プレビューには一文字の軌跡。どうも、油断のならない赤道儀です。

結局、この日も撮影中はそばにいなくてはならない羽目になってしまいました。

 

しかし、船長の方はさらに苦労に苦労を重ねていたのでした。最適なパラメータに調教したはずのオートガイドシステムは、時々スコーンと文字通り飛ぶような修正をやらかすのです。飛んだら飛んだでなかなか収束せず、何度船長っサイドから「あれ?あれ?何で?」とうめき声を聞いたことか。

そんなじゃじゃ馬オートガイドの挙動の中でも、この日の自分のイチオシは、「見えない何かをガイドしている」不思議な現象でしょう。船長っは最初気づいていなかったようですが、ガイド星はレチクルの外に飛び出しているのに、レチクルは何かを求めて動いているのです。自分が「おい、これ何を追っかけてんの?」とつぶやいたときの船長っのリアクションは、とても文章では表現できないほどでした。。。。。

オートガイドは、はまればこれほど楽なシステムはないと思うのですが、そこに至るまでの道のりの険しさを感じた次第です。

 

さて、こちらアトラの方は、やっぱりそばで監視すれば動きは好調なようで、一発目にしゃくって以降は順調に数をこなしました。主たる散開星団を撮った後は、M78星雲をじっくりと撮ってみたいと思います・・・・が、1枚目を撮った後空を見上げてみると心なしか星の数が減ったような・・・・?

 

雲が湧いてます

 

なんと、いつの間にか薄雲が西の方からやってきているではありませんか。まだ時刻は0時を回った頃で、これから本番というときにまたこれか!

しばらく待ちましたが、回復の兆しはいっこうに見えず、結局1時前に撤収。機材を片づけるふりをすれば晴れるかと思ったのですが、逆に雲の広がりは増すばかりで、船長っもあきらめたみたいです。まぁ、明日は仕事ですからな。早めに帰ればそれだけ仕事への影響は抑えられますからな。そう心の中でつぶやいて慰める二人でありました。

15日に続き不完全燃焼には終わりましたが、この鬱憤は次の撮影で晴らしたいと思います。船長っも、きっとそれまでにはオートガイドシステムを完成型に仕上げてくるにちがいありません(でも、本番で思いもよらぬ動きをするからなぁ・・・)。

 

 お約束の二重星団

 

 2012年11月18日 23:34〜23:43

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX4 ISO1600設定

 3分×3枚をコンポジット

 

散開星団の類は、少ない露出でもそこそこ写ってくれ、 画像処理も軽いタッチでそれなりに見栄えがするので、大変ありがたい天体です。

 

 

 

1枚しか撮れなかったM78

 

 2012年11月19日 0:11

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX4 ISO1600設定

 3分×1枚

 

雲に阻まれ1枚しか撮れませんでした。。。

別の機会に枚数を稼いで、一緒にコンポジットしたいと思います!

 

 

 

 

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