史上最大の取り締まり作戦

          

 

 

  

 

 

【PEC極めたり??】

  

12月です。気づけば2013年もいつの間にか1ヶ月を切ってしまいましたが、今年はほとんど出張りに行かなかったことが悔やまれます。

実のところ、前回の出張りは7月に敢行しましたが、夏の熱気にカメラも茹だったか、撮影したコマはノイズばりばり。おまけにPECが全く効かなくなってしまい、3枚に2枚は星が流れてしまって(注:露出3分の場合)、撮影効率は落ちるわ、出来た写真はとても見られたものではないわ・・・で、散々な結果に散りました。それでモチベーションが下がって、気温が下がる秋になっても出張りたい気分になりませんでした。かといって、何もしなかったわけではなく、それからおよそ半年近くはずーーっとPEC調整に難儀しておりました><。そう、いくらPECっても星の流れが食い止められない事態に直面していたのです。

自分的にはPEC調整はちゃんとできてると思うんです。それなのに、いざ実行してみると、ウォームギアが1周回るたびに星が大きく動くのです。以前はホタロンのノーマル状態でもノータッチでいけるほどどんぴしゃはまっていたPECが、なんでこうなったんでしょう? 訳が分からないまま、いたずらに時間だけが過ぎていくのでした。

 

その原因が分かったのが12月4日のことでした。この日もPECっていたのですが、どうしてもうまくいかない。しかもPECを無効にすると、1周期毎の大きな動きは見られない・・・・。だとすると、PECっているときに変な修正をしているとしか考えられません。その「変な修正」とは?

散々考えたあげく、ひょっとすると自分は片方向だけ(たとえば東方向だけ、とか)に偏った調整をしているのではないか?という疑問が湧きました。

本来なら、ウォームギヤが1周回るとピリオディックモーションで動いていた星は1周期前と同じ位置に戻ってきます。ところが、ある方向だけに修正をかけすぎると、元の位置には戻ってこないことになります。その差分をうめるため、PEC記録完了後に強制的に最初の位置に戻すよう、スカイセンサーが補正をかけるのだそうです。そのことは一応知ってはいたのですが、それほど星を大きく動かすことはないだろうと思っていました。

 

試しに修正量をなるべく東西均等にかけて、PEC記録完了後の位置をなるべく開始時の位置を同じにしてみました。・・・・・

これがビンゴ!完全に同じ位置に戻すことはできませんでしたが、東西それぞれにかけた修正量の差がこれまでよりも小さくなった結果、一周回るたびに起こっていた星の大きな動きが解消されました。来たよ来たよーーーー!!再びカプリノータッチで撮影できる状態に仕上がったよー!!

これまで低空飛行を続けていた気合いが俄然上がってきます。12月第1週の新月期は外しましたが、次の週末もまだ撮影が敢行可能な月周り。明るくなったラブジョイ彗星(以下、ラブジョーイ)をよい条件で見る最後のチャンスでもありますし、これはやるしかないでしょう!

金曜日の夜は、日中霞が多かったため見送り-------実は夜半前から透明度が戻ったのですが、すでにアルコールを入れてしまった身としては、後の祭りでした------。土曜日の晴マーク+降水確率0に全てを託します。

 

ちなみに、出張りをするに当たって今や最大の難関になってしまったのが、イオ・タカの呪いです。タカは、単にイオのまねをして言っているに過ぎないのですが、イオはほとんど八つ当たり気味に己の意志で呪いをかけてくるから始末に負えません(しかもかなりの効力を発揮するし!)。そこで、自分は伝家の宝刀を抜くことにしました。その宝刀とは、先月の自分の24歳の誕生日にイオからもらったクーポン券

このクーポン券は、「肩たたき3分間」「タカと遊んであげる」「お手伝い」など、正直「そんな当たり前のことを取引材料にするんじゃねーよ」といいたくなるようなカテゴリしかありませんが、もう1つ「じゆうけん(自由券)」というのがあるのです。その名の通り、何でもお願いを聞いてくれる魔法のクーポン。自分はこの「じゆうけん」に、「父ちゃん星見」の条件を設定し、イオに渡すことにしました。さしものイオもこれでは受けざるを得ません。バンザイ!

さらには、昼にリンガーハットを食し、夜にリンガー効果を発揮させることで万全の態勢をとりました。今夜の出張りに死角なし!

 

 

 

  

 

 

【目指すはノーモアガイドエラー】

 

さぁ、夜です。普段ならイオやタカが寝静まってから出張る自分ですが、この日は二人が入浴を済ませた後から出発したところに、この日の自分の気合いの高さがうかがい知れます。

今日の観測地は「いつもの山」。明け方低空のラブジョーイを狙うために、一段条件がよい「船長っの場所」も考えたものの、船長っによれば現在通行止めになっている模様。早めに聞いておいてよかったです。

その船長っ、前日の金曜日に出張っていたそうで、今日の自分からの匂いつきメールに鈍い反応でした。出るかどうか最後まで悩んだみたいですが、結局疲れた体をおしておつきあいいただけることになりました。いやいや、すみませんなぁ。

当地には9時半頃到着しました。それからパパッと機材を組み上げて、チャチャッとセッティングをすませ・・・・たかったのですが、極軸の追い込みに少し時間を要してしまい、諸々の準備を経て撮影に入ることが出来たのが、約1時間後の10時20分頃。それでも通常よりも1時間ほど早いスタートです。「撮影時間保存の法則」は今回発動しなかった分滑り出し上々といえます。なお、撮影前にPECがしっかり活きているか念のため確認をしてみましたが、カプリがノータッチでいける範囲内での星の泳ぎであり問題なし。うーん、イイヨイイヨー。

 

今日の目標はと言いますと、星雲関係をメインに狙うことにしました。1つの天体をなるべく多く撮って、コンポジットでノイズの少ない写真に仕上げたいと思います。

10時台ならまだ撮影できるアンドロメダ大星雲からスタートし、M33、M45、オリオン星雲、M78は確実にゲットすることにしました。いずれの天体も3分×10枚で行きます。要する時間は単純計算で150分、導入とかフレーミングを考慮すると、大体3時間程度。10時半頃から撮ったとすれば、M78撮影完了はおおよそ1時半の予定です。締めのラブジョーイ撮影は4時半頃を考えていますので、その間の撮影対象は行き当たりばったりで決めることにしました。もっとも、1つの失敗もなく撮れればの話で、もし、途中で星が流れてしまうような事態に陥ると、・・・それが前回のように3枚中2枚は使えない写真しか撮れないとすると、計画はあっさり崩れてしまうわけですが・・・・。

果たして、Y−daが描いた青写真は実現するのでしょうか!!

 

一方の船長っは、10時頃に現地に到着しました。声は元気ですが、やはりお疲れのご様子。機材を組み上げるときもどこか覇気がありませんし、極軸の追い込みを忘れてオートガイドの設定をしようとするなど、着実にネタをカウントしてくれそう。自分としては、船長っのためを思うと是非100個ぐらいネタを作るべきと考えました。何となれば、船長っはこのほどガイドカメラを新調し、オートガイドのさらなる飛躍を狙ったようですが、今日のようなお疲れモードの時は眠って凍死する可能性を否定できません。G11は主人思いで定評のある赤道儀ですから、眠気を吹っ飛ばすようなじゃじゃ馬ぶりを発揮してほしいところ。果たして、Y−daのある意味まじめな思いは実現するのでしょうか!!

 

10時20分過ぎ、まったりとセッティングをしている船長っを出し抜いてM31の撮影に入りました。まずは3分×1枚だけ撮影して、露出の過不足がないかチェックです。液晶に表示される露出秒数のカウントをジッと見つめます・・・・・178、179、180、181、182、・・・・・??あれ?終わンない??ちょっと、ちょっと、何で露出を続けているんですか!

 

露出時間を30分にしてました><;

 

くくく、今回も軽いネタが!とりあえず、船長っには何事もなかったかのように振る舞うこととします。

気を取り直し、露出時間を修正して再開。撮れた写真は、プレビュー上では適度な露出で、ガイドエラーもありません。よっしゃこれからが本番です。撮るべし撮るべし撮るべし!

 

 

 カプリで撮ったアンドロメダ大星雲

 

2013年12月7日 22:23〜22:57

  CAPRI80ED+Nアトラクス 

  EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

  3分×10枚をコンポジット

 

何とか淡い部分まで引き出そうとしましたが、処理のやり方が

まずいのか、腕の部分はざらついた感じなりました。

次の機会では、1枚あたりの露出時間をもう少しかけてみようと

思います。

 

 

 

 

 カプリで撮ったM33

 

 2013年12月7日 23:12〜23:43

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×10枚をコンポジット

 

 全体的に淡い対象なので、コンポ枚数を増やしても星雲を

 浮き立たせるのは難しいです。

 これも次の撮影では、1枚あたりの露出時間を長めにしよう

 と思います。

 

 

 カプリで撮ったプレアデス星団

 

 2013年12月7日 23:53〜24:24

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×10枚をコンポジット

 

これも淡い星雲を引き出すべく、コンポ枚数を稼いでみました。

ED115Sで撮ったときと同じ程度の写りながら、ざらざら感が

少ない写真にはなったと思います。

 

 

 

 カプリで撮ったM78(オリオン座)

 

 2013年12月8日 1:25〜1:55

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×10枚

 

 ウルトラの星です。何度か狙った天体ですが、曇られたり

 ガイドミスでまともに撮れなかった難物(?) 今回やっと

 まともに撮れた気がします。

 とはいえ、淡い天体ですので、処理を続けるうちにノイジーな

 写真になってしまいました。。。

 

 

 

 

  

 

 

【素晴らしきかなじゆうけん】

 

日付が変わって時刻は2時。予定時刻から遅れること30分ながら、ほぼ目論見通りにM78までの撮影が完了しました。

驚くべき事に、ここまでの間ガイドエラーはパッと見全くなし!アトラの挙動不審もほとんどなし!なんという素晴らしい展開でしょうか。これが、後々の画像処理につながってくれれば文句なしなのですが、・・・どうでしょうねー。

トリのラブジョーイが出てくるまではもう少し時間があります。ここからは散開星団当たりを狙って、天体数をこなす作戦に切り替えます。そういうことで、ちょうど南中を迎えた、とも座付近の散開星団を2つ、かに座に移ってプレセペとM67の2天体。さらに残った時間は対象を変えて、りょうけん座の球状星団M3と系外星雲M106に充てました。いずれも、ガイドエラーなしの一発必中。これはきっと「じゆうけん」のおかげかもしれません。これからも有効利用させていただきます!

 

対して船長っ。気合いが充填されないと機械側にも影響を及ぼすのか、序盤から手間取ります。たとえば、

 ●オートガイドアプリケーションを複数立ち上げて、PCがウンともスンとも言わなくなる(自分だったら強制電源オフするレベル)

 ●魔女の横顔星雲をNGCナンバーで自動導入

これで、ISOを6400にして撮影した・・・ということになればだめ押しかな、と思いましたが、生憎そのネタは当方がおいしくいただきました><(ISO200で撮影したひとときあり)。

撮影中も、順調に進んでいたオートガイドが謎の突変に見舞われたり、バランスウェイト軸に体をぶつけてあわや極軸ずれの事態になりかけるなど、ヒヤリハットな場面が多数でした。

一方、今回船長っが新調したガイド用カメラには刮目しました。これまで何度もお目にかかったToUcamよりも更に小さいボディながら、ノイズがなく、暗い星までしっかり写るその性能には驚きました(ラブジョーイの頭部も写るとか)。その効果もあってか、ガイドのレチクルが全く動きません。前のシステムでは、レチクルがせわしく動いていかにも「追っかけている」という雰囲気がありましたが、今回はピタッと静止。「ひょっとしてフリーズしてない?」と言いたくなったほどです。

ガイド状況のトレンドグラフを見てみると、赤経赤緯方向ともその修正量はほとんどの場合において±1ピクセル以内。実に安定したガイドを見せてくれていました。この分だと、更なる長焦点機材へのステップアップも間近かもしれませんね!

 

そんなこんなで、時刻は4時。そろそろラブジョーイが上がってくる頃です。あらかじめスカイセンサーに軌道要素を入力していましたので、自動導入で一発導入を試みました。ところが、望遠鏡の先には木の枝が!セッティング位置にミスがありました。なんということ。その後30分間は木の枝が邪魔して撮影に入ることが出来ませんでした。正直、障害物から出る頃には薄明で見えなくなってしまうのではないかとどきどきモノでした。

なお、別の場所から双眼鏡で探してみると、ある程度高くなったところでそれらしき天体を発見。北側が明るいこともあってか、かろうじてぼんやりしたコマとわずかばかりの尾が見える程度でした。先日のアイソン彗星よりは見やすいかな、といったところ。

4時半頃からようやく木の枝地獄を抜けました。ここから一気に撮り始めます。露出は2分。ガイドは恒星追尾ではなくスカイセンサーによる彗星追尾にお任せしてみました。以前パンスターズ彗星撮影の時にも一度彗星追尾をやらせてみたんですが、このときはギザギザハートの子守歌を歌いたくなるほどのひどいガイドでした。そんなリスクが出るかもしれない一方で、PECがうまくできた今回はうまくいくかもしれません。このばくち、果たしてどちらに転ぶでしょうか?

結果は、思ったよりもスムーズに追尾できたと思います。のべ30分にわたり撮影をしましたが、いずれの写真も何となくそれなりにガイドしている雰囲気が感じられました。もちろん、画像を拡大すると星が所々でダルマ状になったりしていますが、リサイズすりゃなんて事なし!

それよりも、追尾云々を語る前に、露出が足りなかったか、バックが明るかったのが原因だったか、写りそのものがパッとしませんでしたので、深く考えることはいたしますまい。

 

この日の撮影は、久しぶりに朝の5時頃まで続きました。撮影枚数はこれまでで最多の95枚(お試し撮影やダーク撮影は除く)。ガイドエラーがないと、ここまで撮影できるんだなーと改めて感じることが出来ました。今回は1つの天体を多く撮ったので、撮影した天体数は12個程度でしたが、散開星団など少ない枚数でこなせる対象だと取り締まりの数も増えるのではないかと思います。このPEC動作が何かの拍子で狂ってくれないことを願うばかりです、ハイ。

 

 

 

 久しぶりのM3(りょうけん座)

 

 2013年12月8日 3:43〜3:55

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×4枚をコンポジット

 

 前回ホタロンで撮影した写真と比べると、ちょっと像が甘い

 気もしますが、そこそこ写ってくれたと思います。

 星の流れもほとんどなく、個人的に満足のいく結果でした。

 

 

 

 

 

 

 

 M106(りょうけん座)

 

 2013年12月8日 3:03〜3:28

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×8枚

 

 8枚コンポジットして淡い部分の引き出しを狙いましたが、

 ぼんやりとした感じにしかなりませんでした。

 

 

 

 ラブジョイ彗星

 

 2013年12月8日 4:27〜5:00

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 2分×15枚

 

30分ぶんの写真を重ねてみましたが、バックが明るかったので

淡い部分は埋もれてしまい、思ったほど尾がのびた様子を表現

することは出来ませんでした。原版はもっと荒いです。

彗星のモーションに合わせてスカイセンサーで追尾させました

思ったよりもスムーズに追尾してくれたと思います。

 

 

 

 

 

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