アサヒ 酵母ナンバー

  

9月22日、アサヒから4種類の酵母を使って醸造した4本のビールを1パックにした、「酵母ナンバー」を限定発売しました。「効きビール」みたいな感覚で、どの酵母で醸造したビールが美味しいかモニターを募り、今後の戦略に活かすのが一番の目的ではないかと思われます。専門家ではなく、一般の人の嗜好を問うとはなかなか面白い試みだと思います(結果についてはかなり発散するかも知れませんが)。

この酵母ナンバーは、いずれも副原料を使用していないオールモルトビールで仕上げています。副原料を入れることによって酵母の特徴を薄めてしまわないような配慮があったのだと思います。もちろん、醸造方法はそれぞれの酵母を最適に活かすために異なっていると思います。

果たしてそれぞれの違いがどのように現れるのか、自分のチープな舌で違いが分かるものか、飲んでみるのが大変楽しみです。

 

318酵母

 

「318酵母」はスーパードライに使用されていて、キレのある飲み口は、多くの人たちに飲まれています。缶に記載されている「318酵母」の特徴は、深い味わい(=コク)とキレの良さが両立したビールと言うことです。

飲んでみた最初の印象は、「薄い」ということでした。元々薄く感じていたスーパードライを更に薄くして、元々少なかったふくよかさを完全に取り除いたような味わいです。副原料を投入しないスーパードライはこんな風にぱさついた飲み味になるのでしょうか。かなり味気なく感じられます。

飲んで感じられる刺激は9割方苦みです。舌の中央当たりでスポット的に苦みが現れ、そこからお椀状にジワッと広がるもののその範囲は割合狭く、口の中全体までは刺激が行き渡りません。いつまでも低空飛行しているような感じで、期待していたグワッとくる爽快感がないのは残念です。まろやかさはほとんどなく、パサパサした喉ごしはホントに麦水を飲んでいる気分にさせられます。同じオールモルトビールでも、エビスの深い味わいには遠く及びません。何だか、「酵母の特徴を感じてもらうためのアルファ版ビール」で終わっているような気がしました。

 

920酵母

 

920酵母は、上面発行ですっきりした味わいが特徴のビールで、サイトに行ってみると「2005年株主様限定醸造ビール」とか。

飲んでみれば、たしかにすっきりしていて苦みも少なく飲みやすいビールです。318酵母と比べると、こちらの方が女性にも受け入れられやすい飲み味です。

飲んだ瞬間に、口の下半分にはじけるような爽快感があります。これは苦みによる刺激ではなく、炭酸によるものでシュワッとはじけることですっきり感を与えているようです。それからしばらくして舌の上を這うように麦の味が全体に染み渡ります。コクやふくよかさは少ないものの、しっかりと芯が通っていてビールとしては及第点の味わいと言ったところです。

喉ごしの方はドライですが、まだパサパサした感じがしないだけ318よりはマシではないかと思います。これにコーンや米を投入すれば、甘みとまろやかさが出てきてより深みのある味わいになるのではないでしょうか。と言うよりは、オールモルトビールとしてこのまま売り出すには、ちょっと厳しいものがあります。

 

 

 

111酵母

 

111酵母は今回アサヒが初めて投入する酵母だそうです。なめらかな味わいとアロマホップの豊かな香りが特徴と缶に記載されています。缶を開けたときの香りは、ちょっと柑橘系のすっぱそうな香りがしていいです。

飲んでみればなめらかさはそれ程感じることが出来ません。苦みと酸味が効いていて、スッと引いていきますから、どちらかというとキレのあるシャープな飲み味のように感じられました。後味もすっきりしています。ちょっと苦さが残るきらいがありますが、女性でも十分楽しめる味です。

コクは先の2本よりはグッとくるものが感じられますが、それでもやっぱり少なめです。これまでの3本を飲んでみた印象では、いずれのビールも最近流行の、「淡泊なさらっと飲める味わい」に仕立て上げているように思われます。

味わい自体は酸味が表に出てくる分、個性的かつ面白みがあっていいですが、深みのある味わいは望めませんので、コクを求める人には物足りないかもしれません。

 

787酵母

 

787酵母は、本生ゴールドで採用されている通称リッチ酵母と呼ばれるもので、しっかりしたコクを引き出すのが特徴です。コンビニ限定で発売されている「麦香る時間」でも、発泡酒ながらビールに近い味わいを楽しむことができ、もしこれがビールとして発売されたらどのような味になるのか期待していました。

そんな期待を込めて飲んでみると、苦みは少ないですが、飲んだ瞬間にグワッとした芳醇なコクが広がり、スッと引いていくという重厚感とキレがバランスよく共存している飲み味でした。

コクが引いた後には、遅れてぴりりっとした刺激と柔らかな酸味が舌に残り、喉の奥には麦の味がじんわりとしみこんでいきます。こころなし地ビールのようなクセも感じられ、さらに深みのある味わいを引き出してくれます。

先の3本は、ビールとしてはどこか物足りないものがありましたが、787酵母ビールは、キレ、コク、苦みがいずれもしっかりと出ていて、一番美味しく感じられました。

エビスと比較するとちょっと影が薄くなりますが、もしオールモルトビールとしてそのまま売り出すのであれば、この787酵母ぐらいではないかと思います。

 

 

 

 

                                         インプレに戻る