スイス旅日記A

 

 

スイス巡りの1日目は、ジュネーブ観光から始まってローザンヌを経由しツェルマットまで、ほとんどが鉄道の旅。

ジュネーブ〜ツェルマットまでは結構距離があるので、ジュネーブでの観光もある程度行動範囲が限られる。

その前に、一番のデカ物スーツケースをどうにかしなくては。旅行中、20数kgもあるコイツを持ってエッチラホッチラ観光するのは、もう考えただけでもウンザリする。そこで登場するのが「ライゼゲペック」と呼ばれる鉄道による荷物託送システム。

事前に駅の窓口で荷物を預ければ、自分たちとは別に目的地まで運ばれ、到着駅の窓口で受け取ることができると言うのである。近距離ならば、朝出して夕方受け取れるらしい。素晴らしいシステムではないですか!!しかも25kg以内なら運搬料が800円は安い。「近距離」というのがどれくらいなのか見当がつかないのでちょっと不安だが、とにかく駅の窓口に命のスーツケースを預けてモンブラン橋を渡った。

 

 

昨日空から眺めた噴水もここまで出れば対岸にはさぞかし雄大に眺め…、

あれ?

噴水が出ていない。

初っぱなからこれである。

やむなくイギリス公園から旧市街をぶらつくコースに変更した。

旧市街で一番目立つのは「サンピエール寺院」という寺院で、ガイドブックによればこの寺院は12〜13世紀にかけて建築され、さらに16〜18世紀に改築されたそうだ。そのため、異なる様式の造りが混在する、と書いてある。そう言われれば、緑色をした塔とその周りのレンガ造りの建物は様相が異なっているようにも見えるかなぁ…?

大聖堂からは階段を昇って塔に上がることが出来て、ジュネーブの町が一望の下に。狭い階段を152段も昇るのはかなりしんどいが、そんな疲れを忘れさせてくれる眺めだ。

写真に撮らなかったのがちょっと悔やまれる…。

 

旧市街を回った後はジュネーブ市街をぶらりと巡って11時頃にジュネーブ駅(コルナヴァン駅)を出発。今日の目的地ツェルマットに行く前にローザンヌに寄り道することにした。ローザンヌまでは大体40分。右手にレマン湖を眺めながらスイスの風景をしばし楽しんだ。

 

 

ジュネーブ市街マップ

 

 

 

サンピエール寺院

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TGV

さて、ローザンヌでも大聖堂観光である。ローザンヌ駅からMETORO(電車のような地下鉄のような乗り物)を使ってフロン駅まで登り、サンフランソワ教会を通って細い路地をエッチラホッチラ歩く。教会付近は石畳の路地にいくつものオープンカフェや店が並んでいて大変賑やかだ。丁度昼の食事時と言うこともあるのだろう。

サンフランソワ通りを過ぎれば、目の前に巨大なゴシック様式の大聖堂が天を突くようにそびえ立っていた。で、でかい!大聖堂への登り口からはまん丸のステンドグラスらしきものが紋章のようにあるのが見えて、これまた大きい。中にはいると、おおっ、色鮮やかなステンドグラスがいっぱい目に飛び込んでくるではないか。まるで万華鏡のように美しく、しばらく時間の経つのを忘れさせてくれる。

これで賛美歌が流れでもすれば、もうにわか信者になること受けあいだ。写真を撮ろうとしたがそんな雰囲気ではなく、まぶたにしっかり焼き付けて外に出た。

大聖堂から更に細い道を辿ると、こじんまりした城館に行き着いた。サンメール城である。

現在は庁舎として使われているそうだが、立方体の壁に四角錐の屋根が乗り、その4角に円筒形の塔が立つこのシルエットはいかにも中世ヨーロッパを彷彿とさせる。

サンメール城は小高い場所にあることもあり、ここからはレマン湖畔に広がるローザンヌの市街地を見渡せる。偶然見つけた場所だったが、思わぬ宝物を発見した気分だった。

 

ローザンヌ市街マップ

 

 

 

 

 

 

 

大聖堂

 

 

 

 

 

同じく大聖堂

 

 

短い時間ではあったがローザンヌ観光を満喫して、次の目的地ツェルマットへと出発する。ローザンヌからモントルーまではレマン湖に沿うように列車は進み、レマン湖を過ぎた辺りから、周りは山々に囲まれるようになって次々に迫ってくる自然美に思わず感動の声があがってしまう。明日からのツェルマット観光は主に山登りとなるので、こうした風景を見ると気分的にも高揚感が膨らんでくるというものだ。

列車はしばらく南下した後、東へ進路を変えて乗り換え地であるヴィスプへと。この辺りは鉄道に沿うように川が流れているが、その川の色がまるでコンクリートのように灰色をしているのである。「もしかして、雪解け水かい?」と二人して顔を見合わせた。この分だとツェルマットはまだ雪に覆われているのだろうか(ツェルマットの標高は約1600m)?先ほどの気分の高ぶりから一転、不安がこみ上げてくるのであった。

 

ローザンヌから約1時間半を要して、ツェルマットへの玄関口ヴィスプに到着。ここで一旦下車して、今度は氷河特急に乗り換える。この氷河特急、更に東のサンモリッツとツェルマットを結び、アルプス、氷河、渓谷、草原など色んな風景が楽しめると言うスイスでも有名な沿線である。ヴィスプからツェルマットまでの区間は氷河特急観光のまさにクライマックス。時間さえあればサンモリッツまで乗車して氷河特急の醍醐味を味わいたいところだが、今回はその一端を感じる程度にしておこう。

ツェルマットまでの道のりは急な勾配の坂を上がっていくので、普通の動力では登り切れずラックレールという線路の間の歯型線路に歯車をかみ合わせて(いわゆるラック&ピニオンみたいな感じ)登っていく。ここからは特急ではなく普通の登山列車である。

嫁さんがガイドブックで事前に調べた情報によれば、「この区間は進行方向左側の席に座るべし」なのだそうだ。なるほど、力強く登って行くほどに眼下には雄大な渓谷が広がり、ここでも感動の声がいとまなく上がるのである。嫁さんはと言うと、ゆるやかにカーブを切っていく赤い氷河特急と周りの景色のコラボレーションに「世界の車窓」のイメージを重ね合わせているようで、次から次にシャッターを切っていた。おいおい、そんなに撮ってフィルムは足りるのか?と言うぐらい。

 

 

 

左: シオン辺りでの風景

 

右: 氷河特急から眺める渓谷

 

左: 氷河特急とアルプス

 

右: ツェルマットを馬車が走る

ダイナミックな景色から、やがて頂に雪を抱いたアルプスの山並みが見えてきた。ここまで来るとツェルマットまではもうすぐ。前方の山を見ながら「もしかしてあれがマッターホルンかな(←実は全然違う)」とか色々話している間にもツェルマット駅へ到着した。ヴィスプからの所用時間は1時間半。時間を持て余すことなくなかなか楽しい列車の旅は、明日からの観光の弾みになりそうだ。心配していた雪も全然なく、何と馬車まで優雅に走っているではないか。これは多分ハイクラスのホテルに泊まる人たちを迎えに来たのだろう。できれば我々もその恩恵に預かりたいモノである。

さてツェルマットに着いたらやっておかねばならないことがあった。ジュネーブで預けた荷物の受け取りである。果たして無事届いているだろうか?

駅横の荷物預かり所へと行ってみると、おや?何人かの人たちが預かり所前でたむろしている。聞けば、ええ?預かり所が開いていない、そうだ。時刻は17時を過ぎたが空はまだ昼間のように明るいのに。うーーん、預かり時間を聞いておくべきだったかな。などなどちょっと後悔し始めたときに事務所の向こうから事務員がやってきた。別に営業を終了した訳ではなかったようだ。ひとまずホッとして預かりチケットを事務員に渡した。事務員は要領よく荷物を見つけては客に手渡していく。ところが、ここでも自分の荷物がなかなか来ない。ありゃ、やっぱり届いていないのか?

事務員はしばらく探すも諦めたように頭を振ってこちらに歩み寄ってくる。どうやら「まだ来てまへんでー」と言おうとしているのだろう。だが、ちょっと待て。俺の荷物はそこにあるやん。そう命のスーツケースは事務所の奥にひっそりとあったのだ。たしかその場所は何度も行き来していたはずだが…。

しばらく見つめ合う自分と事務員。そして事務員は「オゥ!」とオーバーアクションを見せて、いかにもばつが悪そうにスーツケースを持ってくるのであった。

荷物も届き、これで一安心だ。早速宿泊先にチェックインする。駅のすぐ脇にあるコテージ風のちょっと洒落た感じのホテルで、女性に人気があるそうだ。

ここを起点にこれから3日間ツェルマット観光を満喫する。明日のために街中へ出て下調べをした後は、今日の疲れをゆっくりと癒すのだった。

 

 

 

 

 

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