木 星 食 レ ポ ー ト

 

2001年8月16日の未明、東の空で木星が月に隠される「木星食」がありました。

アパートのベランダからはちょうど東側が見えるので、ベランダに望遠鏡を出してデジカメによる動画撮影にチャレンジしてみました。

今回の木星食で幸いだったのは、盆休み中の現象と言うことで、会社の心配をしなくてよかったことにつきます。最近は歳を取ったせいか、夜更かしをすると翌日に響くのです。

望遠鏡VC200Lを外気になじませるためにセッティングは前日15日の夜のうちに完了しておきます。外では花火の音があちらこちらで鳴り響き、煙も漂っていました。多分、木星食がこの時間帯にあったとしたらロクでもない結果になったかもしれません。そういう意味でも未明の木星食はいい条件で起こってくれたと思います。月に隠される木星の様子を想像しながら、イソイソと望遠鏡を組み立てるのでありました。

 

時刻は8月16日の午前3時前。東の空を見ると三日月のそばには今まさに月に潜入しようとしている木星が輝いていました。周りには雲もなく、おまけに深夜で空も澄んでいて絶好の観望条件。望遠鏡を木星に合わせて見ると、視野内に既に木星と月が入っていて食が間近に迫ろうとしていました。まずい!まだデジカメを望遠鏡にセットすらしていません!急がねば。

慌てて取り付けてデジカメの液晶内に木星を導入します。が、なかなかスクリーンに木星が見えません。なぜだ?さっき眼視で見たときはしっかり木星が見えていたというのに!もしかして取り付け途中で大きく外してしまったのか!?・・・・よく考えてみたらスクリーン表示がoffになっていました。何というお約束。

気を取り直してスクリーンONにしたら、丁度中央に月と木星の様子が映し出されていました。まだ潜入は始まっていませんでした。ホッと一息するとともに、ここで1枚撮影しておくことにします(成果0防止のため)。

 

月への潜入が間近に迫った木星

 木星の中央にはうっすらと2本の縞があるのがわかるでしょうか?

 

 

いよいよ潜入の動画撮影が迫ってきました。タイミングを見計らって記録を開始することにします。というのも、愛用のFinePixは動画が撮れるのはいいのですが、記録時間に制限があって1回当たり80秒という短さです。

そのため動画撮影に入るのが早いと、潜入途中でタイムオーバーする恐れがあります。おまけに書き込み時間に結構時間を要するので、しくじろうものなら中途半端な結果となって、もう目も当てられません。

そんな緊張感の中、ある程度木星が月に近づいてきたところを見計らって撮影に入りました。徐々に木星が近づく様子が刻一刻と記録されていきます。しかし、ありゃ?ありゃ?思ったほど木星が月に近づきません。いかん、これじゃ80秒内にはちょっと終わりそうにないです・・・。1分経過したところでまだ潜入の見込みがなさそうでしたので、見切りを付けていったん停止して保存。素早く2回目に入ります。

運よくも、2回目の撮影直後に木星が月の縁に接触しました(ホッ…)。ここからが木星食の始まりです。動画の良いところは、撮影しながら食の様子を集中して見ることができることです。これが写真撮影だったら、写す作業にばかり気を取られ、「食を見たぞ」という実感が湧かないに違いありません・・・・。

なんて、悦に入っているのも束の間でした。食の進み具合から予測すると80秒間の間に完全に隠されるか微妙な案配。だんだん動画の残り時間が気になってきました。もちろんここで撮影を中断するなどできるはずがなく、80秒間いっぱいまで粘らないといけません。こういうギリギリのシチュエーションに自分は弱いんだよなぁ。こんなことなら潜入に要する時間をあらかじめ調べておけば良かった。

あぁ、残り時間がもう20秒もないやん!!もう頭の中はパニック状態です。

早く食え!食べろ!食べろぉぉぉ・・・・・・

おお、願いが通じたか、記録終了間際で完全に隠れました。やった!何とか間に合ったよ!!ちょっぴり脱力。

 

とりあえず次の出現まで40分ほど時間がありますので、ちょっと休憩がてらPCでさっきの潜入の様子をリプレイしてみました。うんうん、動画の質は決してイイとは言えないけどなかなか良く撮れているじゃないですか。余は大満足です。できれば、スクリーンを通して見るよりは自分の眼で生の現象を見た方が迫力も感動も段違いですが、やはり何かの形で残しておきたいのでこれは致し方ないことです。

 

次なる大イベントは出現。潜入の動画を繰り返し見て喜んでいるとあっという間に出現の時刻が迫って来ました。出現は潜入と違って「どこから出てくるのか」場所の特定をしないといけないところにその難しさがあります。

特に北極星が見えないベランダ観測では極軸を正確にセッティングすることができず、木星を自動で追尾しておけないのが難点です。出現場所を間違えると、探しているウチにいつの間にか木星が出ていたと言うことも十分あり得ます。

ていうか、実際そうなったんですが!!

とうに出現の時刻になっているというのに、「ここだろう」と目測を付けていた箇所には木星の「も」の字も出てこず、どこやどこや!と散々振り回した挙げ句にようやく見つけたかと思えば、既に木星は月から遙か彼方…。その間ずーっと回りっぱなしだった動画をリプレイするたびに悔しさが募ります。出現は疑う余地なく失敗です、はい。

せめてもの慰みというわけではありませんが、月と木星、そして近くで輝く金星の様子をデジカメに収めて、ミッション「木星食」を完了したのでした。

 

 

 

 

月と木星と金星の様子

 

 

 

 

 

                                  観望大作戦に戻る     次に進む