アトラご乱心

          

 

  

 

【直ったと思ったら?】

  

2月は2日の土曜日、日中は久しぶりに快晴の空が広がりました。この天気が翌日まで続くと言うことで、やっと出張りのチャンスが訪れました。

今年の初出張りは1月の中旬のことでしたが、このときはアトラのしゃっくり現象が悪化して3分と持たずにビクつく有様。とても撮影どころではありませんでした。

あまりのひどさにビクセンに事象の説明と修理依頼をしたところ、モーターパラメータが合っていない可能性があるので、スカイセンサーでパラメータを設定し直してみるよう回答がありました。

設定といってもパラメータは3段階しかなく、調整しろとしては残り2つしかありません。これで本当にしゃっくりが解消するのかかなり疑問を抱きつつパラメータをいじってみたところ、これが効果てきめん!30分経ってもしゃっくり1つ起こらなくなりました。

 

昨年来から悩まされているしゃくりさえなければ、再びノータッチ直焦でばんばん取り締まりが出来ることまちがいなし!そこにもってきてこの天気ですから、出張る気持ちを高ぶらせるのに十分でした。

ということで、1日遅れでタカのお誕生日祝いをしてから「いつもの山」に向かいました。この日は風もなく、気温もそれほど低くなく絶好のコンディション。しかもセッティングもばっちり決まり、到着して1時間も経たないうちに撮影準備が整うという、すべてがトントン拍子ですすみました。ちなみに、極軸のズレをチェック中ずーっとモータは回しっぱなしでしたが、しゃっくりすることもありませんでした。調子は上々!

 

本日のファーストショットはオリオン座にあるウルトラの星M78にしました。これは昨年撮影途中で雲の襲来に遭い、中途半端な撮影に終わった天体です。自動導入で目標の天体を導入し、5分露出の4枚の設定にして撮影開始。ノータッチですので撮影中は何もすることはありませんが、不調にならないかやはり気にはなりますので、アトラのそばにいてトラブルが発生しないよう祈りを捧げ続けます。そのおかげか、撮影終了まで一度もビクつくことはありませんでした。ヨッシャー!これならきっと点像に写ってくれているはず!・・・・・

 

流れてますやン!?

 

な、なんと、撮影した4枚のうち、半分は点像に写っているのですが、半分は星が流れたり、2重に写っていたりしています。流れ具合も、均等に流れているのではなく、星からひげが伸びたような感じで、短時間に大きく動いてまた戻るという動きをしたことがうかがえます。どう見てもピリオディックモーションの影響・・・?PECを活かしているはずなのに?

スカイセンサーでPECの動作モードを調べてみましたが、問題なく実行中です。ですが、実際にピリオディックモーションは発生しているようです。アトラは8分周期でウォームギヤが1周回るので、5分露出だと2回に1回は必ず星が流れることになります。現に、星が流れているのは2枚目と4枚目で、1枚目と3枚目はそれなりに点像に写っています。

なぜピリオディックモーションが起こるのかは分からないのですが、露出を短くすればエラーに遭遇する確率は減らせそうです。露出時間を5分から3分にすれば、星が流れる写真に遭遇するのは3枚に1枚の確率になり、残り2枚は「使える」写真になるはず。それでもって、露出時間が短くなった分は感度を1600から3200に上げればカバーできそうです。

ただ、感度を上げるとざらつき感が目立ってくるので、少しでも滑らかに仕上げるためには撮影枚数を増やす必要があります。しかし所定の枚数を撮ろうとすると、「使えない」写真の分を見越して+α分多めに撮らないといけません。これだと、結局一天体あたりの所要時間は若干増えてしまう結果になり、露出を短くしてもトータル時間は変わらないか、逆に長くなってしまいました。実に非効率な作業です。

 

とりあえず、露出時間短縮作戦はほぼ目論見通りの結果になり、M78のあとはM65/M66のペア(しし座)、その次にM97/M108のペア(おおぐま座)の撮影へと移りました。

そんな中、撮影していてふと何かし忘れていることに気づきました。そう、撮影前に必ずやっている「自動導入した後スカイセンサーの電源OFF」を飛ばしていたのでした。

スカイセンサーでは、自動導入で天体を入れると、その天体を追いかけるための制御を行っているようです。このおかげで、例え極軸が合っていなくても常にその天体が視野の中心にいるわけですが、場合によってはPECと干渉して、モーターに変な指令を出してしまう可能性があるのではないかと思っていました。そのため、自分はいつも自動導入後に一旦スカイセンサーの電源を切って天体追っかけモードをリセットするようにしていたのでした。

さらに自分は、「撮影前にモーターの速度を低速モード(0.5倍速に設定)にする」ことも忘れて、中速(32倍速)のままにしていました。もし、モーターに変な指令が出ている場合、32倍の速さで一気に動いてしまう可能性はないでしょうか?自分は考えました。星が妙な流れ方をする原因は、ひょっとすると

●自動導入で天体を追っかけている途中でPECの制御と干渉し、突飛な動きをしてしまったのではなかろうか

●おまけに32倍速で動いてしまうため、大きく流れてしまったのではなかろうか

と。であれば、スカイセンサーの電源を落として、自動導入モードをリセットすればいいかもしれません。いや、その前に低速モードにしてモーターの動きを抑えれば、星の流れは目立たずにすむかもしれません。

 

ヨシ!いったん低速モードにしてみて影響が抑えられるか確かめてみましょう!!・・・・と思ったら、予想外の下弦の月出現(この日が新月だと勘違いしてました)。

思いの外月の明かりが強くて撮影する気力が下がったので、この日は3天体の撮影にとどめて撤収してしまいました。

 

 久しぶりのM97(ふくろう星雲:下)とM108(上)

2013年2月3日 0:37〜1:17

CAPRI80ED+Nアトラクス 

EOS Kiss−DX6 

ISO3200  3分×7枚

ISO800  5分×2枚をコンポジット

 

北天にあったのが幸いしてか、星の流れはあまり目立たないモノが多く、ISO3200で10枚撮影したうちの7枚をコンポジットに 使用することが出来ました。ISO800で撮ったモノも、1枚は 使えない写真になるかと思いきや2枚とも流れていなかったのでコンポジットに使用してみました。

 

  

 

【アトラ乱れまくる】

 

翌週の3連休。珍しく2週連続で快晴の天気が広がりました。特に10日は見事なまでの青空。

先週の不調は、まず間違いなく自動導入を活かしてしまったのが原因とたかをくくっていた自分は、そのリベンジに燃えていました。

加えて、この3連休は家内とイオは東京に義母のお見舞いに行きましたので、タカを実家に預けておけば自分はすなわちフリーの身。絶好の出張り日和です。

今日から始まるランタンフェスティバルに昼間タカを連れて行ってご機嫌取りに努めた自分は、タカを実家に預けた後の20時半頃「いつもの山」に出発。イオたちが生まれて以降、こんな早い時間帯に出張ったのはものすごく久しぶりのことです!もっとも、ランタンフェスティバルの影響で途中の道が大混雑していまして、結局現地に着いたのはいつもと変わらない時刻でしたが!

 

この日もセッティングは順調にこなして、22時過ぎぐらいには撮影準備が整いました。撮影するに当たり、まずは自動導入を活かしたままモータ速度を最小(0.1倍速)にしてやってみます。自分の推測が正しければ、たとえ自動導入で天体追っかけ制御中にPECが干渉しても、撮影に与える影響は抑えられるはずです。・・・・・・・と思ったら、

 

ぜんっぜんダメ!

 

うをっ?速度を落としても、流れ具合に変化がない・・・・だと?やっぱり自動導入はいったんリセットしないといけませんか。・・・・・と思ったら、

 

それでもダメ!

 

なにっ!?リセットしても星の流れ具合に大きな変化がない・・・だと?

長年(?)築き上げてきたY−da理論が間違っていたというのでしょうか。速度を変えてもダメ、リセットしてもダメだとなると、これから導き出される推測は、

●PECがおかしい

ぐらいしかありません。モーターパラメータを変えてしまったので、この時点でPECが狂ってしまったのではないでしょうか。理屈はよくわかりませんが!

そういうわけで、急遽現場でPECり直すことにしました。WEBカメラを持ち合わせていないので、精度的には落ちるかもしれませんが、今より改善方向に進めば恩の字です。

再PEC後撮影をしてみると、・・・・・・んーまぁ今よりは改善方向に向かった気がします。気を取り直して、馬頭星雲(オリオン座)と、前回中途半端に終わったM65/M66のペア、そしてとも座にあるNGC2477(散開星団)を撮影しました。

 

そして次の目標であるNGC4565(系外星雲:かみのけ座)に移ろうとしたとき、またもやアトラに異変が発生!自動導入が出来なくなってしまいました!

撮影対象を自動導入する際、まず適当な基準星でアライメントを行います。スカイセンサーにはいくつか明るい星が基準星として登録されていて、しし座のデネボラもその1つ。NGC4565はこのデネボラから近いので、デネボラでアライメントをしてからNGC4565を自動導入することにしました。ところが、どういうわけかアライメントができないのです!理由は

 

スカイセンサー: 「望遠鏡が三脚に当たりそうですバイ」

 

ふざけんな。まだデネボラは南中すらしていないじゃないか。望遠鏡は斜め向いとるやないか!と文句を言っても「当たりそうバイ、当たりそうバイ」の繰り返しなので、仕方なくまだ東の空に出てきたばかりのアルクトゥルス(うしかい座)でアライメントすることにしました。

 

スカイセンサー: 「望遠鏡が三脚に当たりそうですバイ」

 

ばかやろう!キサマはどんな計算をやってるんだ。今は夏か、夏なのか!?

気温1.2℃の寒さで幻覚症状がでたんでしょうか。人間味あふれるスカイセンサーの挙動に殺意を覚えた瞬間でした。

電源を何度も入り切りしたり、別の星でアライメントしたり、ホームポジションから基準星を入れたり、とあらゆる手を尽くして、飛びかけたスカイセンサーの意識を何とかつなぎ止めることが出来ましたが、この間30分ほど無駄に時間を費やしてしまいました。

その後は一応自動導入も追尾も問題なく動いて、一体さっきの挙動は何だったのかキツネにつままれたような思いに駆られながらもNGC4565→M3(球状星団:りょうけん座)→M106(系外星雲:りょうけん座)を取り締まり。この次にM83(系外星雲:うみへび座)の撮影に入ったモノの、急に体調が悪くなって途中で撤収してしまいました。

撮影枚数(使える写真)約40枚、取り締まり天体は7つと、一応それなりの成果は得られてのリベンジ戦でした。

 

 馬頭星雲に再挑戦

 ●2012年11月16日 1:51〜2:04

  CAPRI80ED+Nアトラクス 

  EOS Kiss−DX4 ISO3200設定

  3分×4枚をコンポジット

 ●2013年2月10日 22:21〜22:50

  CAPRI80ED+Nアトラクス 

  EOS Kiss−DX6 ISO3200設定

  3分×7枚をコンポジット

 

2012年撮影の写真とコンポジットしてみました。馬の形は 2012年のみのものよりも出たかな?という気がしますが、 元が淡いだけにノーマルのカメラでは限界があるようです。

 NGC4565(かみのけ座)

 

 2013年2月11日 0:37〜1:27

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×9枚をコンポジット

 

長年ガイドエラーで泣かされた天体ですが、やっと満足のいく 結果を得ることが出来ました。ちょっとバックのノイズが目立つ ような気がしますが、それは見なかったことにしたいと思います (^^ ;

コンポジット枚数は9枚ですが、この天体に費やした時間は50分ほどでした。半分近くはガイドミスで沈みました・・・・。

 久しぶりのM3(りょうけん座)

 

 2013年2月11日 1:34〜1:57

 CAPRI80ED+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×4枚をコンポジット

 

明るい球状星団は、散開星団と同様、少ない枚数のコンポジットでそこそこ処理が出来ますので、大変助かる存在です。

ちょっと中央付近がつぶれてしまいましたが、個人的に満足のいく結果でした。

 

  

 

【山あり谷あり】

 

更にその翌週の2月16日、なんと3週連続で週末に晴れるという、近頃にしては滅多にないことが起こりました。

月は上弦にさしかかる頃で、日付が変わる頃までは夜空がちょっぴり明るいですが、春の天体がいい具合に昇るのは夜半になってからですからこの機会を見逃すテはありません。

先週現地でPECってから、以前よりも星の流れはそこそこ抑えられはしたものの、やはり全ての写真が「使える」状態にはしたいもの。そこで11日に自宅で再PECをやってみたら、これが案外いい感じに仕上がって、ホタロンのノーマル状態(焦点距離910mm)でも星の流れがあまり目立たない結果になったのです。

これはもうホタロンでやってみるしか!ホタロンで小さい系外星雲の撮影をしてみるしかっ!イオの誕生日を前日に控え、三度「いつもの山」に繰り出しました。

 

この日は、これまででもっとも気温が低く、22時過ぎの時点から0℃。これだと、スカイセンサーの目覚めも悪いかもしれません。

そこで試しに、ピント出しのときにカペラ(ぎょしゃ座)を自動導入してみることにしました。望遠鏡をホームポジションにして、スカイセンサーでカペラを選んで自動導入のスタートボタンをON!

ジーーーーーーっと、けたたましい音を立てて、アトラがカペラの導入を始めました。・・・・・・・・・

 

                                   南の方角に動くのは気のせいか!?

 

おいおい、ホタロンの対物レンズがシリウス方面に向かって動き始めましたよ?まさかそのまま1周するのではあるまいな。あっけにとられる自分をよそに、ホタロン(アトラ)はさらに南天低い位置目指してウインウインと動きます。そして、おおいぬ座のしっぽ付近でピピッと停止。キサマー!どんな計算してんだーっ!殺意再び!!

このあとも大変でした。自前でカペラを入れてアライメントしたら、前回のデネボラ同様「望遠鏡が三脚に当たりそうです」エラーは出るし、赤経モーターを動かしていたら、急に赤緯モーターまで動き出すし、どうやって復旧に至ったのか記憶にないほどてんやわんや。撮影にこぎ着けたのは夜半前と、くしくも月の影響がなくなりかけた頃合いからのスタートとなりました。

 

ところが、この後の動きは自動導入も追尾状況もいたって快調で、11日と同様モーターの突飛な動きはなくなり、ホタロンでも十分使える程度のガイドを見せてくれたのには驚きです。この日は50枚7天体を取り締まりましたが、星の流れが目立ったのはわずかに2枚でした。この精度を維持してくれれば、1つの夢だったホタロンノータッチが達成できたことになり、小さい系外星雲のクローズアップも狙っていける目処が立ちそうです。

んー、でも・・・・しゃっくりが直り、追尾精度もはよくはなった代わりにご主人様の命に従わなくなったのは新たな問題です。アトラの調教はまだまだ続きそう。EM200といい、じゃじゃ馬に縁があるなーと思いました。。。

 

 

 初めてノーマルのホタロンで撮影したM51(子持ち星雲:りょうけん座)

 

 2013年2月18日 23:19〜23:55

 ホタロン+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO800  3分×3枚

              ISO1600 3分×7枚をコンポジット

 

 初めてレデューサを付けていないノーマルのホタロンでM51を撮影しました。

 ちょっぴり星が横(東西)にのびていますが、十分満足できる結果でした。

 ノータッチですが、下手に自前で修正かけるよりはよい結果が得られたと思います。

 

 

 

 久しぶりのM64(黒眼星雲:かみのけ座)

 

 2013年2月17日 0:04〜0:34

 ホタロン+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×10枚

 

 これもノーマルのホタロンでは初めて撮影した対象です。

 黒眼の由来である中央部の暗黒帯もそこそこ写ってくれました。

 ホタロンは色収差がすくない分、色の賑やかさに欠けるのが難点です。その点では

 青色が映えるカプリの方がカラフルでいいかなと思います。

 

 

 

 ホタロンでは久しぶりのM104(ソンブレロ星雲:おとめ座)

 

 2013年2月17日 0:46〜1:10

 ホタロン+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×10枚

 

910mmの直焦点で撮ると、わずかではありますがカプリとかよりも大きい像になります。コンポジット枚数が10枚ですので、これまでよりも淡い部分を引き出せたかと思いますが、バックがノイジーになってしまいました。処理のさじ加減はまだまだ検討の余地ありです。

 

 久しぶりのM5(へび座)

 

 2013年2月17日 2:04〜2:17

 ホタロン+Nアトラクス 

 EOS Kiss−DX6 ISO1600設定

 3分×4枚

 

上のM3よりも大きく見栄えがする球状星団です。ED115S以来ご無沙汰の天体ですが、M13(ヘルクレス座や)M22(いて座)に負けず劣らず撮りがいのある天体だなと思った次第です。

もうちょっとカラフルな仕上がりにしたいところです。

 

 

 

 

 

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