甦る?大きな古赤道儀

          

 

  

 

【そろそろ出番を作らないと】

  

ビクセンのサターン赤道儀。たしか1980年台前半にニューポラリス、センサーとともにラインナップされていた重量級の赤道儀でした。

タカハシのEM200と同程度の大きさ/重量なので中型の部類ではあるのですが、でかい架筒に黒い丸太ん棒がくっついた外観は重厚感にあふれ、マジンガーZよろしく「黒鉄の城」と表現してもおかしくない独特の雰囲気がありました。

ニューポラリスで毎日のように星を追っかけていた当時、「いつかはサターン」を夢見た時期もありました。カタログに書かれている「全重5253kg」とか、到底持ち運びできるレベルではないのにひたすら夢だけを見ていたあの日。。。

 

そんな夢だったはずのサターンをひょんなことから2013年にポチって早5年。

憧れの赤道儀を手に入れた喜びはあったのですが、いざ実機を手にしてみると、重いわ極軸望遠鏡を取り付けられないわで、移動観望に使うには機動性が乏しく、一度も出動する機会もないまま、いつしか「実家の倉庫の肥やし」となってしまいました。

 

そんな状況から抜け出すきっかけとなったのが2018年初め、実家に届いた親分AXDの仮組みがてら、大きさ比べでサターンを並べた時でした。

絶対的な大きさこそ親分に分があるものの、高いピラーに載ったマジンガーZは悠然と親分を見下ろし、「俺はここで朽ち果てる赤道儀ではなかっ!」と自分に語りかけているように見えました。

こいじゃいかん!サターンの出番ば作らんといかん!

ようやく重い腰を上げ、サターンのグレードアップに乗り出すこととしました。

 

 

 

 

【難点は脚まわり】

 

サターンの利便性を上げるためにやらないといけないことは次の3点です。

@ 望遠鏡の載せ替えを簡易化する。

A 極軸望遠鏡をつけられるようにする。

 B 三脚に載せられるようにする。

 

@については、以前にLN赤道儀でもやったように、アリガタを取り付けることができるプレートを作ることにします。

 

Aについては、ずいぶん前に電子極軸望遠鏡(ポールマスタ)を買っていたので、ポールマスタを取り付けるためのプレートを準備します。幸い、赤道儀の先端には上下2カ所に用途不明のねじ穴が切ってあり、これを利用すれば赤道儀を加工することなくポールマスタを取り付けできそうです。

 

@、Aとも、以前お世話になった「コスモ天文工房」にプレート製作をお願いすることにしました。

寸法を測ってチャチャッと簡単な製作図を作り、先方に依頼したのが1月中旬。

プレートが届いたのは3週間後の2月初めでした。

現品合わせはバッチリ、問題なし。使い勝手が大きく向上したと思います!

 

一方、Bの脚回り対策はなかなかコレと言うイメージが湧きませんでした。

元々付いているピラーは、支柱の高さが1m超、脚の開きは半径40cm。鉄製なのでとにかく重くて、かさばります。

なるべく現地での組み立て/解体を避けたいので分解せずに運びたいものの、そのままではもちろんクルマに載せられません。

折りたたみができてクルマにも積みやすい三脚にサターンを載せられれば、機動性が大幅にアップしそうです。

 

しかしネットで調べてもサターンを載せるための三脚はおろか、中継するようなアダプタはどこにも出回っていませんでした。手持ちのEM200の三脚に限定せず、それなりの三脚用のアダプターでもあれば、最悪それに対応した三脚を別買いすることも考えてはいましたが、全くなし。

ほとんど骨董品に近い古い赤道儀ですから、仕方ないですよねー。

 

一般に出回っていない以上、EM200の三脚に載せるためのアダプタを特注するしかなさそうですが、どんなアダプターにしたものか全くアイデアが湧きません!

これがもし船長っだったら、おそらくパッとアイデアを出して、パッと図面を作成し、パッと旋盤で加工して、パッと三脚に載せていたことでしょう。つくづく、船長っの技量と環境をうらやましく思った次第です。

 

プレートが来て弾みが付いたと思ったのに、またまた暗礁に乗り上げてしまいました。

さてどうしたものやら。。。。

 

サターンのラインナップ(メーカーカタログより)

アリガタとポールマスタを取り付けたサターン赤道儀

 

 

 

  

 

【サターン、三脚に載る】

 

サターンの脚まわり対策に煮詰まり数週間が過ぎました。

全く妙案が浮かばないので、正直ピラーをぶった切って高さと重さだけでも下げるかと思ったりします。・・・が肉厚が結構あるので、切るにしても相当時間がかかりそうだし、二度と元に戻せないことを考えるとこれまた踏ん切りが付きません。

 

そんな折、「ぶった切る」でちょっと閃くモノがありました。

●ピラーの頭の部分(赤道儀と連結する部分)だけ模擬したアダプターを作ればいいんじゃあないでしょうか!

●それでもってそのアダプターは、アトラを三脚に載せるために作ってもらった固定ネジでくっつけるようにすればいいんじゃあないでしょうか!

●そうすれば、サターン−アダプター−三脚のコンビネーションで三脚に載せることができるんじゃあないでしょうか!

おお、何かうまく行きそうな感じ!

 

さっそくピラーの頭の部分の寸法・・・ねじ穴の位置とか、肉厚とかを図ってアダプターの図面を作り、再び「コスモ天文工房」に製作を依頼。特注品と言うことでお値段は決して安くはありませんが、サターンのためならエンヤコラ、見積をもらうや二つ返事で正式発注しました。

 

そうして待つこと1ヶ月。3月下旬に待望のアダプタが届きました。先だってのプレート同様いい仕上がりです。改めて感謝です。

三脚への取り付けは、アトラを載せるときに使っているプレートを併用してバッチリ。

それでもって、赤道儀との取り付けは・・・・・おおっと、図面のミスで取り付け穴が上下方向に少しずれてましたが、その量は僅かだったのでヤスリで穴を広げることで処置完了!そして・・・・・

ついに、サターン赤道儀がついに三脚に載りました! 長年の?夢が今日ここに実現! もう嬉しくってキャッホウッです!

 

運搬性は大きく改善。赤道儀を三脚に載せた状態でも(何とか)持ち運べます。占有スペースも少なくて済みそうなので、自宅に持って行っても肩身の狭い思いをすることはなかろうと思います。

ここにサターン赤道儀の利便性向上プロジェクトは一応の完了を見たのでした。

 

 

アダプターを三脚と連結

サターンが三脚に載った歴史的?瞬間

 

 

 

  

 

【たったひと山、されどひと山】

 

複数の望遠鏡の載せ替えが簡単になり、極軸合わせも(多分)簡単になり、おまけに運搬性が大きく改善できました。

が、ここで満足していてはいけません。「単に三脚に載せたかっただけちゃうん?」と言われないためにも、次なるステップとしてサターンの稼働率を上げる必要があります。

 

でもその前に。 お約束の追尾精度を確認したいと思います。長らく「やらねば、やらねば」と思いながら、「実家の倉庫の肥やし」になったまま全く出来ていませんでした。

 

 

2018325日、記念すべきサターン赤道儀初出陣です。と言っても自宅の庭ですが!

望遠鏡はホタロンを載せました。この程度の負荷ならビクともしません。兄弟機のニューポラリスの場合、ぐらつきがひどく、クランプの効きが悪く、部品の強度が弱く・・・とツッコミどころ満載の架台だったので、とても同じビクセンから出されたモノとは思えない頑強さに感動を覚えました。

感触的にはEM200と同じ程度の強度、積載性はあると思います。

 

ポールマスタによる極軸合わせはどうでしょうか。

セッティングの流れとしては、

@電子鏡を赤道儀の赤経軸に取り付ける

A電子鏡をUSBPCにつなぐ

B専用のソフトで北極星とその周囲の星をモニタする

C赤道儀の赤経軸を回して、赤経軸の中心を測定する

D北極星周辺の星の位置から、天の極軸位置を測定する

E天の極軸位置と赤道儀の赤経軸中心を合わせる

ざっくり言うとこんな感じです。

 

自宅の庭からだとちょうど北極星がある方向に街灯があって、かつ電子鏡の感度が高いということだったので、「街灯の明かりで背景が飛んでしまって星が見えないのでは?」という心配もありましたが、いざ見てみると全くそんなことはなくて、北極星はもちろん周辺の星もしっかりモニタできました。この性能の高さは驚くばかりでした。

 

ポールマスタによるセッティングの一連の作業はガイダンスされますので、要領をアタマにたたき込まなくても大丈夫そうです。今回は初めての使用と言うこともあって多少手間取りましたが、回数をこなせばサクサク進められるでしょう。。。。多分。

 

 

お次はいよいよ肝心の追尾精度の確認。

思えば、当時の自分にとってサターンは神のごとき存在でした。

また、一昔前の赤道儀は神の手を持つ職人が1つ1つ丁寧に作り上げるイメージがあります。

そんな神職人によって生み出された神赤道儀なら、恐るべき実力を秘めているのではないでしょうか。もう頭の中はお花畑満開状態です。

 

しし座あたりの星でチェックしてみることにします。サターンのウォーム歯数は144枚ですから、1周期は10分になります。

極軸をちょこっとずらしてカメラを取り付け、タイマーを10分にセットして撮影開始。きっと星の軌跡はきれいな直線となっていることでしょう。。。。

カシャッ!10分経って、撮影完了!プレビューにはどんな結果が!!

 

高崎山(大分)が写ってます!

 

何とっ!波は打ってないけどとっても大きな山が1つ! 山が出るまではものすごく安定しているのに、たった一度の山が絶望的な大きさです。これはもう、プラスマイナスなんぼの世界じゃなくて、プラスなんぼのエラーでした。後で計ってみたところ、ベースから50秒近く変動していました。

これさえなければホタロンの直焦撮影もノータッチでできるだけの実力があるのに、何という残念さでしょうか。

撮影に使うとしたら、先日AXDで試してみたオートガイドをパッと思いつきますが、今のコントローラじゃ無理。何か考えないといけません。

 

使えば使ったでいろいろ欲が出てきますね。とりあえず甦った大きな古赤道儀、まだまだこれからも改良していく必要がありそうです。

 

 

 

 

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