し し 座 流 星 群 観 望 記
しし座流星群は33年ごとに無数の流星が流れることで有名な流星群です。前回の極大期は1966年で、その時は雨のように流れ星が流れた、と記録されている伝説の流星群です。 それから33年後の1999年にも大流星雨が見られるのでは、と期待されましたが、日本では天候的にもピークの時間帯にも恵まれず、時間当たり数百個の出現にとどまりました(普通の流星群ならかなりの数となるのですが)。 明けて2000年、この時は近くに月が煌々と輝き昨年同様日本ではピークの時間帯に恵まれず、やはり不完全燃焼の結果となりました。これで天文界の一大イベントも終局を迎えるのだろうか…。否!そうではありませんでした。 予想では、2001年11月19日未明に日本でピークを迎えるらしいのです。 長らく星を見る機会がなかったのですが、後生に語り継いでいくためにもこれは見ておかなくては! 11月に入ってからは、ひたすら観測のシミュレーションを頭の中で行います。もう既に自分のイメージではどしゃ降りのように流れ星が流れていました。場所も自分の家の近くにある高台に設定し、何度か足を運んで現地視察。所々に立てられている街灯があるのが心配ですがまぁ、何とかなりそう、かな? 極大期を迎える約1週間前、しし座流星群プレパーティ(?)と言うことで、船長っ、オクヒデ君、どろっぺパパ夫妻の定例メンバーで飲み会を開きました。その席上での会話。 船長っ 「Y−daはもう見る場所決めたとや?」 Y−da 「うーん、一応近くの場所にしとっけど、ちょっと街灯が心配かかなぁ。オクヒデ君は?」 オクヒデ 「僕は、船長っ先輩といつもの観測場所で狙ってますよ。あそこは周りに明かりも何もなかですけん、むっちゃ暗かですよ」 どろっぺパパ 「僕たちは、温泉に浸かりながら流星群を見るという企画があるらしいんで、それに参加しようかと…」 船長っ、Y−da、オクヒデ 「な、なんと豪勢な…」 この日はしし座の話で盛り上がり、全員の頭の中ではバケツをひっくり返したような流れ星が流れていたのでした。 その数日後、船長っから電話があり、一緒に見ないかとのお誘いがありました。正直自分が探した観測場所は流星を撮影するにはあまり適した場所ではなさそうでしたし、その点船長ったちが予定していた場所ならそういう心配がないということで、これはもう二つ返事。 集合時間を23時ぐらいにして、当日が来るのを一日千秋の思いで待ちます。あとは天気が持ってくれるのを願うのみ! 待ちに待った11月18日深夜、あらかじめ決めておいた集合場所で船長っと合流。オクヒデ君は丁度その頃起きたそうで、これから向かうとのこと。とりあえず二人で観測場所へと向かいました。 現地に着いてみると、既に1台先着車が来ていました。ギンギンにローダウンされたワゴンRでしたが、輪立ちまみれの砂利道の中をこれで来るとは何とも勇敢な!察するに彼女と一緒に流れ星を見に来たのでしょう。 普通であればここは我々が遠慮して立ち退くべきです。若いカップルの甘いひとときを邪魔するなんて無粋なことを、若さという文字をそろそろ置き忘れようとしている大人の我々がやってはいけません。ですが、大人を語る前に我々は暗がりを求める人種です。強引なまでにその場所に入り込み、挙げ句の果てには「おおー、暗かなー!!」とか「六等星まで見えとっとと違うとや?」とか、天文屋特有の会話を始めるのです。 これではせっかくの二人の夜もぶち壊し。さっさとその場を出ていってしまいました。全く持ってひどい話です!天文屋はこうして一般人とはかけ離れた存在となっていくんだろうなぁ・・・。 さてさて、これにてどうにか場所の確保も出来たことだし(全然反省の色なし)、流星群を迎え撃つため早く機材のセッティングをしなければ。しし座はまだ昇っていないものの、ちらほらと流れ星が流れ始めていて、ピーク時間が迫ってきていることを伺わせていたからです。 |
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両名とも機材のセッティングを完了した後は、いよいよ撮影に入ることになりました。流星の撮影というのは一種の玉入れゲームみたいなもので、決められた時間内(=露出時間)に自分が決めた構図の中に流れ星が入れば入るほど限りなく撮影者の心を満たします。成功の鍵は流れ星がそこに流れるであろうという読みとその時の運に依ると言って過言ではありません。 もちろん、流星がひとつも入らなければ、「フツーの星の写真」という悲しい結果が待っています。 このしし座流星群、世紀の天文ショーというだけではなく、実は自分の運の強さを試される審判の時でもあったわけです。 今日の運勢やいかに!? ドキドキ 撮影ポイントを定めてカメラの構図を合わせます。流れ星が写らなかった場合でも「いや、これは○○座を写したんだよ」と言えるように星座を中心に入れて流れ星を狙うことにしました。 もうこの時点で既に負け戦か? さぁ、撮影開始。と、その時いきなり強烈なライトが我々の目に飛び込んできました。突然の目つぶし攻撃。仕掛け人は、…オクヒデ君でした。 これで全員到着。いつもは一人で星を見る機会が多いのですが、こうして仲間と集まって見ると、やはり楽しさも増大するものです。 ところで、温泉に浸かりながら流星群を堪能することになっているどろっぺパパ夫妻はどうなのでしょう?彼らが居る温泉地は自分たちが観測している場所の対岸に位置するのですが、見る限りどうも分厚い雲が…。M君は、知る人ぞ知る雨神様。ストレスが溜まると必ず雨が降る、と伝えられています。 一同: 「多分仕事でストレスが溜まってんだろうなぁ」 しみじみ |
しし座流星群(ふたご座付近) 薄いながらも2本の流星が流れているのがわかるでしょうか。 中央やや下に明るく輝いているのは木星です。 |
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夜は深まり、夜空を見るとかなり流れ星の数が多くなってきました。あっちでシャッと飛んだかと思えば、今度はそっちでパッと流れ、間髪入れずに向こうでシュッ。もう息つく暇もありません。しかし、どういう訳か自分が撮影しているところは異様に流れる数が少ないのです。 船長っやオクヒデ君は、「おっ、流れた!今んとは写ったぞ」とか「あっ、いっぺんに2つ来ましたよ」とか歓声が上がるのに、これは一体どういうことか? しかも、船長ったちが写していた所に撮影ポイントを変えた途端パタッと流れなくなり、さっきまで流れが少なかったポイントが急に流れ出すこの事実! む、むかつく!! 夜は更に深まり、東の空からはいよいよしし座が昇り始めてきました。それにともなって流れ星の数も多くなり、とても一つ一つを追いきれないほど。遠くでは「キャー、キャー、流れた、流れた」と黄色い歓声が上がっていて、下界も賑やかになってきました。 一方、どろっぺパパ夫妻がいる温泉地の方は…、おお、すっかり晴れ上がっているじゃないですか。 一同: 「うーーん、温泉でストレスが無くなったんだろうなぁ。」 しみじみ 先ほどまでは裏をかかれっ放しだった自分も、ようやく流れ星が捉えられるようになってきました。しかし、船長っやオクヒデ君よりは割合的に少なく、相変わらず苦戦。おかげで自分が撮影している場所は闇の領域と認知され、自分が撮影ポイントを変えると、「あっ、Y−daがこっちに切り替えた!俺はあっちば写さんば(by船長っ)」、「あっ、Y−daさんこっちに向けちゃだめですよ(by オクヒデ君)」と言われる始末。 く、屈辱!! 負けてなるモノか、とそれこそ願をかけつつあちこち撮影しまくりましたが、女神はなかなか微笑んでくれず…。 3時を過ぎた当たりから、流れ星の数は少しづつ減り始め4時ぐらいにようやく一息。ここで、船長っ特製のおでんをついばみ、皆一様に「いやー、今日はすごかったなぁ」といつまでも余韻に浸るのでした。 |
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昇るしし座と流星群 ピーク時の様子。流星が放射状に流れている様子が分かります。 流星の軌跡を逆に辿ると一点に収束するところが輻射点になります。 |
おおいぬ座付近の流星群 おおいぬ座はしし座(輻射点)から離れていますので、流星は 長い軌跡を描いていました。 |
その日、会社を休んだ自分は観測の成果を確かめるべく写真屋に直行。仕上がった写真をみて、「何だ結構写ってんじゃん」。そう、思いの外写っていたのです。余は大満足です。 まだ醒めやらぬ昨日の余韻と、写真の出来が良かったという喜びを胸に、リンガーハットでダブルチャンポンを食べました。 次の33年後はどしゃ降り流れ星を見ることが出来るでしょうか。既に今から期待に胸が膨らむのです。 |
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しし座流星群(しし座からうみへび座あたり) パッと見て、どこを写したのか見当がつきませんでしたが、 星の配列からすると、上側の明るい星ががしし座のレグルス、 下側の赤っぽい星がうみへび座のアルファルドのようです。 これで流星が写らなかったら、訳の分からない写真になる ところでした。 |