散開星団一斉検挙大作戦

 

 

 


<父と母の攻防>

 

冬です。

これからの時期、天体観望はひたすら寒さとの戦いになるわけです。出来ればクマの如く冬眠に入りたいところですが、困ったことに(?)一眼レフデジカメの本領は冬の寒い時期こそ発揮されるため、そんなもったいないことはできません。

11月のXデーは新月近くの12日(金)か13日(土)ということで、吉例にならって今回もカレンダーに「父ちゃん星見」の申告と「父ちゃんがんばれ by姫さま」のエールをシレッと書き込んでいました。

前回はコレを見ても何の反応も示さなかった家内だったので、きっと寛大になってくれたのだと勝手に思いこんでいました。

 

しかし意に反して今回はまた「呪いの傘マーク」をシレッと書き込んでいたのです。しかも何故か薄い色調で。

何故今回は薄いのか?その真意を聞いたら12日は保育園で体験保育をするんだそうで、雨が降ったらイヤなんだそうです。天体観測は少なくとも「曇れば」できないわけですから、雨が降らない程度で星が見えない程度の曇り天気になってくれれば、との思いを込めて薄くしたんだそうな。ダイレクトに雲マークにしないところが、どれだけ「父ちゃん星見」に抗議しているかを物語ります(つまり、雨=家内の機嫌は悪い、と)。

それにしても、この呪いの効果は絶大です。週間天気ではXデーに設定している両日はいずれも曇り、降水確率40%の予報となっています。ところが、こうなると逆に家内の方が困ってきます。雨が降らない程度の呪いをかけたつもりが、最悪雨を呼び込むことにつながりかけているからです。

そんな家内の困惑が呪いの強さを弱めたのでしょうか。雨雲は12日夕方ぐらいから東に抜ける見込みで、その後は土曜日日中まで高気圧に覆われる可能性が高くなってきました。これなら、金曜日の星見は十分にやれそうです。ふふふっ、呪う力を微調整できないようじゃまだまだだな。

 

さて、Xデーになった金曜日当日。会社を定時の鐘で切り上げて、ダッシュで我が家に舞い戻り、イオの入浴・夕食を済ませれば、それから後は父ちゃんの時間です。急ぎ機材を詰め込み終えた8時前、前回いわくをつけてしまった「船長っの場所」へ向け、修復後のエアッチは颯爽と出発したのでした。

ちなみに出発時の天気はベタ曇り。船長っはこの時点でやる気0となってしまったようですが、きっと現地に着けば晴れているに違いありません。そう信じましょう。

 

 

 

<ピンぼけ対策最終兵器>

 

 

現地には9時前に到着しました。夜空は・・・、おおっ!読み通り晴れ上がってきました。信じる者は救われたのです。風が時折強く吹いているものの前回のヒュゴーから比べると、今回はヒュー(時々ビュー)ぐらいですから、何てことはありません。

ところが、ちょっと誤算がありました。南の方角の海がやたらと明るいのでした。何か漁でもやってるのでしょうか。漁り火が煌々と輝いて、南天はくじら座のしっぽ付近まで明るく照らし出されています。この分では、ほぼ同じ高度に昇るであろうマックホルツ彗星の撮影に影響しそうです。深夜になるまでに漁が終わることを祈るしかありません。

漁り火はさておき、さてさて今日の目標は何にしましょう。

晩秋から冬にかけては、何かと散開星団が多いです。散開星団は撮って面白い対象・・・というわけではありませんが、あまり手をかけずに撮影出来るのが魅力です。

何しろ対象が普通の星ですから、星雲のように1つの天体を3枚も4枚も撮って、それをコンポジットする、なんてことが必要ないのも助かります。

大抵1枚か2枚撮って、良い方の画像をちょっと明暗調整するぐらいの処理で終わりますから、一晩に消化出来る天体数も稼げますし、画像処理にかかる時間も比較的短時間で済みます。一応、ツボとなるべき星雲(前回失敗したM78星雲とか)は押さえておくとして、今回は散開星団の一斉取り締まりを敢行してみましょうか。

あっ、そうそう途中で土星の撮影も入れておかないと・・・。

 

ところで、過去の撮影では何かとピンぼけに泣かされたモノでした。EOS−Dにしてからは、その確率もグッと減ってはきていますが、実はカメラのファインダーで見る星は意外といびつなのが悩みの種で、ピントがあってるのかどうなのかいつも主観的な判断に頼っていました。

そこで、今回撮影するに当たって、ニューアイテムを使ってみました。その名も「ピント合わせツール2穴式」です。2つの穴が開いたこのキャップをED115Sに取り付けて星を見ると、ピントが合ってなければ星は2つに見えるのですが、ピントが合えば2つの光が1つに重なるというスグレモノです。どこかのサイトを元にして作ってみました。

コレを使えば、「星が1つに重なったときがピント位置」という、客観的な判断ができるので、ピント合わせの確率がより高くなるはずです。事前にその効果も実証済みであり、今日はきっと失神しそうな鋭い星像の写真が撮れるに違いありません。

ワッハッハッ、さらばピンぼけ王!!(もう勝ち戦の気分)。

 

 

明るい1等星でピント位置を確かめてドローチューブを固定したら、さぁさっそく取り締まりの開始です。時折襲ってくる強い風も何のその。ビヨンビヨン振れまくるガイド星の挙動を即座に解析しながら、慎重かつ大胆にガイド…あっミスってしまった。あっまたまたズレてもうた。

結局、1天体1枚にして消化数を稼ぐ予定が、撮り直しに時間を食って全然思惑通りに進みません。これが「一日天体捕獲数保存の法則」というモノか(?)

ついでにこの日一番肝を冷やしたのが、ガサゴソと動物が徘徊している音が間近で聞こえたことでした。多分シカがうろつき回っているのでしょうが、先日シカに襲われて老人が死亡したというニュースを聞いていただけに気が気ではありません。「天体撮影中にシカに襲われ死亡」なんてシャレにもなりません。おまけにここは滅多に人が通るような場所じゃないですから、刺されたらまず間違いなく死亡です。それを考えたときガイドに集中できなくなってしまいました。思えば、これがガイド失敗の大きな原因だったのかもしれません。

 

 

 

 

 


<カノープスを撮る>

 

 

撮り直しが響いたとは言っても、一応主な散開星団は撮りましたし、前回ガイド失敗に泣いたウルトラの星(M78星雲)もうまく撮れました。

 

お次は順調に増光しているマックホルツ彗星を撮ってみたいと思います。先月よりは若干南側に移動しているものの、目視7等前後まで明るくなってきているため、ファインダーでも簡単に見つけることが出来ました。まだまだ漁り火の影響はありますが、漁船の数が減ったのか到着時ほどの明るさはなく、撮影できそうな状況ではあります。

撮影に先立ち、まずはバイパーで彗星の様子を見てみましょう…。ボヤッとした淡い球状星団といった感じですね。どう目を凝らしても尾の存在は確認できません。つまらんなあ。ちなみに撮影後の結果を見てみましたが、尾はほんのちょっとしか伸びていないようでした。

暗い彗星ならともかく、やっぱり彗星は尾が伸びてなんぼの世界かな?今後の変化に期待したいですね。

お次は、土星に行きまひょか。一旦ここでEOS−Dを外して、鬼太郎くんに交換します。

PCをセットして、モニタ上に土星を持ってくると…、ウゲッ、結構揺れていますねぇ。先日ベランダから撮影した土星は、エンケの隙間も写るほど会心の1枚だったので、今回はさらにいい写真を撮るべく期待していたんですが、ちょっとこれでは…。

とりあえず、ダメ元で撮ってみましょうか。少し落ち着いた頃を見計らって、2分ほど。

 

ははは、後日処理してみましたがダメでした。

 

 

土星を撮った後南の方角を見てみると、シリウスが高く上っています。さらにその下(南)には、カノープスが結構高い位置で輝いていました。EOS−Dを外した状態ですのでちょうどいい機会です。久しぶりにカメラレンズを付けてシリウスとカノープスを一緒に撮ってみたいと思います。漁り火の影響は、漁の船が大分少なくなったことと、星が西の方に移動したこともあって、それ程ひどくはなくなってきました。

今がチャンスですぜ。

ということで、EOS−Dに付属のレンズを付けて、18mm広角にセットして望遠鏡に取り付け、ファインダーを見ながら大体の構図を合わせ…。

カノープスが見えない!!

何でですか?自分の目ではちゃんと見えるのに、カメラのファインダーにはカノープスが…あ゛っ、木が遮っとる (ToT

 

そうでした。自分の目とカメラの位置は微妙に高さが違うため、カメラ越しで見ると手前の木に隠されてしまうのでした。トホホ。

仕方ないので、一旦直焦モードに戻して、時間をおいてもう1回カメラレンズに切り替えて撮ることにします。せっかくの機会ですもの。例えカメラレンズに交換するのが面倒でもこの際撮っておくべきでしょう。

 

で、撮ってみました。ちゃんと写ってくれましたが、何やら画像周辺が間延びしてます。開放にするとどうもコマ収差が発生するみたいです。…なんてことを考えてたら、単にピントが合っていないだけでした。難しい、難しいぞ、EF−Sレンズでの合焦は。

 

 

 

 

 

 

 


<取り締まり失敗>

 

カノープスを撮って、再び直焦撮影に切り替えた後は、北の方角に上り始めた北斗七星付近の星雲(M81&M82、あるいはM97&M108のペアです。こちらはギャラリーをご覧下さい)をちょこっと撮って、大体4時ぐらいになりました。目論見としては5時半ぐらいまで一気に撮ろうと意気込んでましたが、考えてみると、この後アパートの草むしりが控えてましたので、少し早めに帰って仮眠をとりたいところです。このあたり、頑張れないところが歳ですかな?

東の空には、先日接近した木星と金星が程よく上っていい雰囲気だったので、これをカメラレンズに収めて撤収しました。鬼太郎くんでの撮影は…、「撤収」の二文字の前にあえなく撃沈。はい、根性ナシと言うて下さい。

この日の成果は、20天体30枚でした。

帰り道、先月クルマをぶつけた場所を注意深く確認しながら山を下りましたが、結局木が飛び出た箇所はなく、ガードレールが所々出っ張ってたぐらいでした。どうも恥ずかしいことにガードレールで擦ったみたいです。

 

さてさて、結構早めに帰りについたつもりでしたが、帰宅した時間は6時半。運が悪いことに帰ったらイオが起きてました(ToT)。おかげで仮眠をとれず、ミルクとかおむつ替えとか相手をしてたら草むしりの時間。ヘロヘロ状態でむしることとなったのでした。

って、そんなことはどうでもいいことです。これからがお楽しみの時間です。この日撮った写真の画像処理が待っています。さぁ、ピント合わせツールの威力はどんなだったんでしょう?まずは、スライドショーでザッと流してみましょう。……ハイっ?………

ピンぼけやないか!!!

し、信じられません。初っぱなからピントがぼけまくりです。デジカメの液晶では目立たないレベルだったので全然気付きませんでしたが、拡大してみると星の像が肥大して甘くなってます。それは、土星を撮影するために一旦直焦モードを外したところまで延々と続いていて、もちろんこの間に撮った全ての散開星団は全滅です。

ついでにM78やM42やマックホルツ彗星もピンぼけでした…。

撮影前のピント合わせはちゃんとできた、と思ったのですが、詰めが甘かったようです。ガイドミス連発で撮り直しを重ねたのも、初めっから無駄作業だった。

「さらばピンぼけ王」の勝ち名乗り、その道はまだまだ険しいです。トホホ。

ということで、失敗した散開星団のオンパレードをお楽しみ下さい(ピンぼけが極力分からないようリサイズしていますが)。

 

M35とNGC2158(右の淡い星団)

M36はガイドミスとの合わせ技でした。グッスン

M37

M38とNGC1907(右の小さい固まり)

M46とNGC2438(中央やや左の青い星雲)

M93

 

 

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