呪われた観望会

 

 

 

 

                           【新天地を求めて】

 

 

10月の新月期は21日前後です。今回はホタロンでの直焦撮影をメインに、半ば過ぎからボツボツと準備を始めていました。

ただ、なかなか決まらなかったのが、「どこで撮るか」ということです。9月の台風13号のおかげで、「船長っの場所」への道路が崖崩れを起こしてしまい、いつものルートでは行くことが出来なくなってしまいました。

「いつもの山」はバックの明るさが気になりますし、「百武彗星記念の地」は怖くて足を運ぶ気になりませんし、かと言ってぶっつけ本番で別の場所を探すとなれば、多分場所探しで夜が明けてしまう可能性大です。

ということで、小回りの効くスクーターを駆って、事前に場所探しすることにしました。

 

まずは「船長っの場所」の通常ルートが復旧していないか確認してみます。あれから1ヶ月、もしかしたら道路がつながっているかもしれません。・・・なんて期待は、ものの見事に崩れてしまいました。行ってみるとほとんど手つかずの状態で、唯一竹組みの仮設歩道があったのみでした。試しに渡って崩落現場を間近に見てみると、崖崩れが結構大規模だったことが分かります。これじゃ1年経っても復旧しそうにありませんねぇ。

 

 

 

登り口から見たところ

仮設歩道の中央付近から下をのぞいたところ

 

 

ならば、別のルートから「船長っの場所」に行けないかトライしてみましょう。「船長っの場所」へのルートは、いつものやつも含めて4つありますが、そのうちの2つめのルートを行ってみます。一旦南へ下ってそこからグルッと回って登山道路を登りますと・・・、登り始めて2km弱、何とここでも崖崩れに遭遇。こちらはまるで巨大な滝を正面から見るような形で崩落していて、先が完全に見えなくなっていました。なんてこったい!!

他の2つはいずれの機会にトライしようと思いますが、「船長っの場所」に行くまでの時間的、アクセス的な面から判断すると、他の場所を求めた方が良さそうです。

そういうことで、何か匂いそうな道を見つけては片っ端から探ってみたところ、意外にも道路沿いに自分好みの場所があるではないですか。

周りを見れば街灯はなく、道路沿いにあるとは言っても5mほど高い場所にあるため、直接車のライトが直撃する心配もなさそうです。特に南側が海に面しているので、南天の撮影には適していそうです。周りは柵で覆われているので(おいおい、どこかの管理地じゃ?)クルマを近くまで寄せられませんが、荷物の出し入れにそれほど支障はありません。よし、今回はここで星見を実行してみましょう。

 

 

 

 【いきなり暗雲】

 

 

代替地が見つかったことで、すっかり気が楽になってしまいました。後は、いつもの如くバッテリーを充電したり、持って行く機材に漏れがないよう、必要なものは事前に詰め込んでおきます。前回の観望会ではガイドアイピースを忘れて、赤道儀を置き去りに一旦自宅に戻るという失態をやらかしましたからね。さらには、船長っもこの前の星見で機材を忘れたということですし、同じ轍だけは踏まないようにしたいものです。今回の最大の目標は、ネタゼロ。

観望大作戦を書く上では甚だつまらなくなりますが、そろそろ紅茶片手にゆるりと撮影を楽しむことが自分に求められています。

 

さて21日当日、運動会で疲れたイオを寝かせた9時前に自宅を出発。すっかり定番になってしまった童謡CDをかけて、先日見つけた場所へと向かいます。

到着は、出発してから40分後。船長っの場所よりも遠いのに、移動に要する時間は短いというアクセスの良さが早くも光りました。空を見上げると、北から西にかけては市街地の明かりで白ずんでいますが、東〜南西〜天頂方向は使えそうです。特に海に面する南の方角は暗く、「船長っの場所」の代替地として申し分ありません。イイヨイイヨー。

久しぶりに自分の読みが的中したことで完全に気をよくしてしまいました。その後の機材の組み立ての何と軽やかなこと。パッパッと架台を組んで、ガイド鏡とホタロン載っけてバランスを取り、極軸を粗調するまでに30分。この分だと撮影は10時半頃には始められそうです。ハッハッハッ、もう自分にネタが舞い降りる事なんて考えられませんな。

 

と思った矢先のことでした。極軸の微調整をするためにガイドアイピースで星のズレを見ていたところ、星がどんどこ西へ西へと去って行くではありませんか。あれ?と思って、赤道儀の電源ランプを見てみると消灯しています。バッテリー側の端子のところでケーブルを揺さぶると、電源ランプが点いたり消えたりしていますので、どうもケーブルがワニ口クリップのところで断線しかかっているようです。この程度だったら、思い切ってケーブルをちょん切って、線を直接端子に入れれば済む話。ネタと言うには大したことはありません。が、我が目を疑ったのはその後でした。

何とバッテリー残量を示す4つのランプのうち、1個しか点灯していなかったのです!!

えー!?つい数日前に充電したばっかりなのにー?

 

このバッテリー、買ったのはEM200と同じ時期の1990年なので、使い始めて16年経ちます。当然いつへたれてもおかしくない状態にあるわけですが、赤道儀を駆動させるだけだったので消費電力が微少で済み、16年経過した今でも一度の充電で大体50時間は持っていました。ついこの間まで問題なく使えていたのに、よりによってこんな時にいきなりですか。EM200は完全電動なので、バッテリーが切れてしまえばただの鉄の塊です。

ただ、少しは残りがあるのか赤道儀の動きには今のところ影響していません。これまでの経験上、6時間程度で1つのランプ分バッテリーを消費していましたので、ギリギリ持ちそうな気はします。ここは、省エネ思考で何とかだましだまし使うしか方法がありません。過去にこんなにドキドキしながら星見をしたことがあったでしょうか!

ネタゼロの夢はもろくも崩れ去り、一気に暗雲がたれ込めてきました。

 

 

 

【撮影開始一定の法則炸裂】

 

 

バッテリーで思わぬ時間を浪費しましたが、30分ほどかけて極軸を微調整し、いよいよ撮影環境が整いました。折しも東の方からすばるが程よく上がっていましたので、今日の一発目に撮ってみましょう。時刻は10時40分。ここ最近の中では一番良いペースです。

カメラの構図を決めて、ガイド星を選び、シャッターの動作確認をチェックを抜かりなく完了。いよっしゃ!1枚目行きますよー!

と腰を降ろした瞬間、砂利に足を取られてバランスを崩し、事もあろうに三脚にローキック炸裂!せっかく30分かけて極軸を合わせたと言うのに、また振り出しかーっ!シクシクシク・・・・・

 

めげてはなりません。心を落ち着け、初心に戻ってもう一度極軸合わせから入ります。ところが、極望からなかなか北極星が見えません。変だと思って空を見ると、何気に雲が張ってきているじゃないですか。うわっ、最低。一気に気合いが抜けていくのが分かります。

どうしましょうか。このまま撤収して、リンガーハットで憂さはらしチャンポンと行きましょうか。・・・・・・・・(長考モード)・・・・・・

いやいや、ここはもう少し粘ってみます。見る限りではベタ曇りになる気配ではなさそうですし、もう少し時間が経てば晴れ上がるかも知れません。それまでに、極軸のセッティングを済ませていつでも撮影に入れるようにしておきます。

 

そして、この予想はぴたりとはまり、晴れたり曇ったりを繰り返しながら、約1時間後の12時前にはほとんど雲が無くなりました。いよいよ再開です。ちょうど、二重星団周辺がすっきり晴れていましたので、ファーストショットは二重星団に変更です。

それにしても、せっかく早い時間帯に来ることが出来たというのに、撮影に踏み切れたのは普段と変わらぬ12時前。今回も撮影開始保存の法則に乗っかってしまいました。

一度歯車が狂い始めるともう止まりません。この後、撮影終了直前にケーブルが外れてモーターがストップするわ、プレビューした画像を間違って消去するわで、「紅茶片手にゆっくり撮影」なんて目論見は「寝言は寝て言え」みたいな結果となりました。

ちなみに、この日の成果は二重星団、M42、M78、M50、M41、M46、M47の6天体、22枚でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【土星ファーストショット】

 

 

 

土星はこの時期2時頃に昇り始めます。4時過ぎになれば高度も30度と程よくなりますので、4時頃から土星撮影の方にシフトしました。まずは、眼視による土星観望と興じます。

昨年と比べると環の傾きがさらに小さくなり、カッシニの隙間はいよいよ両端しか分からなくなりました。シーイングの影響を差し引いても、ホタロンではカッシニを1周追うことは難しそうな気がします。C環にしても同様で、両端に少しピンク色をした環の切れ端みたいなのが見える程度でした。

撮影は、少しシーイングが落ち着いてきた頃を見計らって実行。ゆら〜ゆら〜としていた割りには、出来上がった写真はまずまず。全く持ってレジスタックスさまさまです。今後は、WB25が惑星撮影の主力になっていくことになりますが、写りの違いがどんなところに出てくるのか楽しみなところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【電源トラブルは続くよどこまでも】

 

 

ということで、本日の星見は完了です。一番心配していたバッテリー切れは、省エネ運転の甲斐あって持ちこたえてくれました。後日、本当にバッテリーの劣化が始まったのか確認してみることにします(実は、この後とんでもない事態へと発展するとは露知らず・・・)。

自宅に戻った後は、ビールを飲んで、ひとっ風呂浴びて、この日の成果をちょっくら確認。うーん、ピントはそこそこ良かったんですけど、ガイドミスが多くて3分の1は使えませんでした。どうも、最近はタッチガイドの神髄を発揮できません。この日はレデューサーをかまして焦点距離を縮めて撮影しましたが、それでこの結果とは・・・。

まぁ、それでも使えるコマはあるわけですから、一眠りした後画像処理に入るとします。ところが、寝室に行ったらイオが目を開けてごろ〜ごろ〜っとしています。父ちゃんを見つけるや、ガバッと起きて「マンマちょうだい、遊ぼ、抱っこ、お水ちょうだい云々」と自分の要求を余すことなく並べ上げ、父ちゃんを眠りにつかせようとしなかったのでした。

 

どうせ眠れないのなら、イオがご飯食べている間に少し画像処理を進めておくことにしますかね。

さっき消したばかりのPCの電源スイッチを押して、・・・・・立ち上がらん??あれ?ボタンがずれたのかな?もう一度カチッと押して・・・・ウンともスンとも言いません。

もしかしてPCの電源まで壊れたのか!?

その後の顛末は10月23日〜の「ろだんのつぼやき」をご覧下さい。

 

 

 

 

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