ネタ作り王決定戦観望会

 

 

 

 

【一念台風をもはねとばす】

 

 

今年の夏は西日本では割と晴天が続いています。おかげさまで連日連夜ベランダで火星観望に励んでいます。このまま8月のXデー(6日)まで持ちこたえてくれれば、2ヶ月ぶりの出張り撮影は半分成功したようなモノです。

ところが、台風9号という思わぬ伏兵が現れてしまいました。予想進路を見るとXデーの6日ぐらいに九州付近をかすめるようなコースを取ろうとしています。これはのっぴきならない問題です。

庶民のささやかな楽しみを邪魔しようとする不埒モノは何としても排除しなければなりません。自分は祈りました(あっちいけー)、毎日祈りました(向こういけー)。すると自分の願いが通じたのか、台風の進路は日ごとに中国大陸の方に移り、最大の危機は回避される公算が高くなりました。あとは台風が引き連れてくる雲とか風の影響さえ受けなければ何とか実行出来そうです。こんな時に洗車だなんて無粋なことをしてはなりません!!

 

6日当日、日中は濃厚な雲が出たり消えたりしています。衛星画像を見てみると九州北部付近で雨雲が発生してそれがグルグル回っていました。かなり日差しが強い上にチラホラ寒気が点在していたため、大気が不安定になっているみたいです。夕方になっても改善の兆しが見られず、さて実行すべきかどうか判断に迷うところです。

そこに船長っから「ちょっと怪しいけど予定通りやる?現地着は何時頃にするや?」とのメールが来ました。向こうはやる気マンマンのようにも感じられます。考えてみれば、船長っが出張ると天候が改善することも何度かありましたっけ。ここは船長っ効果を信じてみたい気になります。迷いは無用。出張り決定です。

 

 

 

【ブランクに半泣きってもう言わせない】

 

今回の観望地は「いつもの山」にしました。「船長っの場所」は夏の時期霧が立ちこめやすいし、オクヒデ君も久しぶりに参戦するそうですから、敷地の広い「いつもの山」が無難な選択です。

自分は10時過ぎ頃に到着。それから遅れること20分ぐらいして船長っが到着しました。一方、この頃オクヒデ君は盆踊りの帰りでバスの中でした。

到着時の天候は曇り。それでも、所々に切れ間があって良い具合で星が見え始めています。風の方は無風に近い状態で、台風の影響など微塵のかけらも感じられません。

この様子なら夜半前には晴れ渡りそうな気配ですので、とりあえず機材を組み立てておきますか。

ビール(発泡酒)飲み飲み機材を組み立てて、極軸のセッティングに入ります・・・。あれ?・・・・・・・・・おや?

北極星ってどれだっけ?

 

何とも信じがたい事態が発生してしまいました。事もあろうに北極星を見つけきれないのです。極軸望遠鏡でのぞくと幾つか明るい星が見えていますが、何かしら北極星のイメージと違うような気がします。かと言って、思いっきり高度を下げたり上げたりしても、それらしい星が入りません。完全にツボにはまってしまいました。

こっちが手間取っている間に、組み立てで後れを取っていた船長っは、「ははは、もうこっちは北極星を入れたもんねー」と高らかに宣言します。負けられん!!!・・・でも、その前に北極星を見せて下さい。

船長っの赤道儀で北極星を見せてもらってイメージを確認した自分は、それでも導入に手こずり、ようやく視野内に入れることが出来たのは、セッティングを始めてから約20分後の事でした。

船長っの一言。「ははは、ブランクが効いているようだな。しかし、こっちは違うぞ。ささっと準備も出来たけんな。もう『ブランクに半泣き』って言わせんけんな」・・・もしもし?もしかして、前々回の観望大作戦ネタを根に持ってました??

「そんなことはない」という船長っでしたが、ポイントポイントで「もう『ブランクに半泣き』って言わせん」とリキ入れて呟く辺りに、根の深さをシミジミ感じた次第です。

ちなみに、この頃オクヒデ君は自宅でどん兵衛を食していたそうです。

 

 

 

 

【2人とも半泣き?】

 

今回の自分の最大の目的は、新しいピント合わせの方法−ノギスチェック−がうまくいくかどうかの確認です。これまで梅雨の合間をぬってノギスを使ってピント位置を調査していましたので、ある程度のピント位置は掴んでいたつもりです。撮影前に再度ピント位置を調整し、カメラの液晶で星像を拡大して確認しましたがバッチリっぽいです。今日こそは針でつついたような鋭い天体写真を撮ってみせますよ!?

・・・で、何を撮りましょうか。実は全く計画していなかったのでした。昨年撮った天体をもう一度おさらいするのもいいですが(ホタロンで撮るのは初めてですから)、出来ればまだ撮っていない天体を中心に攻めてみたいものです。・・・考えあぐねるもなかなかいい天体が浮かばず、ここは行き当たりばったりで撮っていくことにします。まずは、昨年撮ったM27(亜鈴状星雲)にいきましょう。

 

船長っも何を撮影しようか迷っていました。船長っの場合、カラフルで形に個性のある星雲を撮るのは好きみたいですが、どれもこれも同じように見える星団関係の撮影には積極的ではありません。しかし、船長っには「M天体制覇」という大きな目標があります。そのためには星団も着実に消し込んでいくことが必要です(自分としては、星団は数をこなすのに最適な天体だと思いますけどね)。ということで、

 

船 「じゃあ、たて座の散開星団M26でも撮ろうかな」

Y  「え?M26ね?いやいや、どうせ撮るんだったらM11がいいよ。そっちが見栄えがするって。」

船 「あーそうね。んじゃM11にすっか。で、M11ってどこ?」

Y 「え?えーっとね。M26の上」←こっちはM27導入中で体が固まってます。

船 「あ、あー。はいはい。ここ辺りかな?これかな?」

Y 「多分そうやろ」←生返事

 

 

 

 

 

 

このM11こそが船長っをあり地獄に引きずり降ろした張本人だったのでした。

 

こちらはM27を撮影後、超マイナーなM71(球状星団)の撮影にシフトしようとしていたところですが、船長は依然としてM11の導入に手こずっています。目的の天体が入っているか1分ほど試し撮りをするものの、M11とおぼしき天体がプレビューされないらしいのです。試し撮り→写っていないようだ→再度導入し直し→試し撮り→どうも写っている気配がない→またまた導入し直し・・・これの無限ループにはまりこんでしまっています。まるで北極星導入に四苦八苦していた先ほどの自分みたいです。

何ループぐらい周回したのでしょう。少なくとも30分以上はM11の導入に時間を費やしたと思いますが、ついに「あーもう、よか!M11は止める!!」とギブアップ宣言してしまいました。ふふふ、まだまだ「ブランクに半泣き」状態からは抜け出られないようですな(ニヤリ)。

 

M11で思わぬ時間を費やした船長っの次の目標ははくちょう座の網状星雲へと向けられました。改造を施して赤い天体が写りやすくなったカメラにはうってつけの対象です。また、何度か撮影経験のある船長っにとっては、導入するのもそんなに苦労しない天体のはずです。

ところがさっきのショックをひきずっているのか、場所の確認を自分に求めてきました。

 船 「えーーと、網状星雲ってはくちょう座の右の翼にあるんだよな」

 Y  「え?ちゃうちゃう。左の翼ぞ」

 船 「あ?尾っぽからくちばしに向かって右側の翼やろうもん」

 Y 「違うって。尾っぽからくちばしに向かって左側よ」

 船 「いやさ」

 Y 「って」

 

 

もう、お互い「箸を持つ方が右手やろ」と言いたくなるようなやり取りです。合わないのも当然です。自分たちはお互いに向き合って夜空を見上げていたんです。こっちの左は向こうの右。それに気付くまでにはしばらくの時間を要したのでした。こんな漫才みたいなやり取りは学生以来のことのように思えます。とても懐かしく感じました。

 

 

 

【ネタ作り王は誰だ?】

 

そんなこんなしているウチに、ようやく盆踊りマスター オクヒデ君が到着しました。これからMT160組み上げるのは大変だろうなぁ、と他人事ながら心配していたら、「今日は固定撮影で頑張ってみます」と軽やかにカメラを取り出し、そう言いました。曰く、最近大きい望遠鏡を出すのはきついんだそうです(分かる分かる)。

さて固定撮影で何を狙うかというと、極大期を1週間後に控えたペルセウス流星群が格好の対象となるようです。船長っに作ってもらったタイマーリモコンの試運転も兼ねて、流れそうな場所を選んで撮影に入っていました。果たして華麗に流星が写ってくれるでしょうか。

 

その頃船長っは賑やかでした。そのほとんどの原因を作ったのは言うまでもなくじゃじゃ馬オートガイドシステムだと思います。

オートガイドシステムではシャッターを切ってしまえば、基本的にその後は何もすることがありません。ところが、使い手とシステムの息がぴったり合わないと時として面白い光景を作り出す原因になってしまいます。

例えば、船長っが「あー暇だ暇だ、オートガイドは楽だなー」と入魂中のY−daにちょっかいかけていると、自分に構ってくれないオートガイドはすねてしまって突然不振な行動に走ります。

またある時は望遠鏡の位置を西から東に変えたにも関わらず、修正方向をそのままにしてしまったがために、星ズレ倍速の荒技も繰り出します(こりゃどっちかと言えば船長っのチョンボですか)。

これにタイマーリモコンまで便乗してくるからたまりません。タイマーリモコンの取り付けが今ひとつだったみたいで、途中リモコンが落っちゃけてしまうというアクシデントにも見舞われます。

船長っのブースからは断続的に絶叫があがり、まだまだ波に乗れない状況を如実に示していたのでした。

自分は思います。もうオレの時代は終わった、と。これからは船長っが「観望大作戦」を書く日が来たのかもしれない、と。船長っのHPで紹介された「踊るすばる」を見ると、尚更そう思ってしまった次第です。

 

話は流星撮影をしているオクヒデ君に戻ります。夜空を見上げると、たまに長大な流星がシュパッと流れ、そろそろ活動期に入ってきたことを伺わせます。しかしオクヒデ君が撮っている領域には全然入ってくれないから困ったものです。

「何でですかねー、ボクが向けるところには全然流れてくれないんですよー」とボヤキが聞こえてきました。

もしもし?このボヤキ、「Y−da病が移ったっさ」というツッコミを期待しているようにも見受けられるのは思い過ごしですか?そして、誰よりも早く自分がそう言い切った後、彼らの笑いの中に「それが来るのを待っとったっさ」という雰囲気が感じられたのは気のせいですか?

まっそれはそれとして、この日のオクヒデ君はホントにしし座流星群の時の自分が乗り移ったかのようでした。向けるところ向けるところ徹底して流れませんし、あともう少し露出をかけていれば明るい流星が入っていたのに、という惜しい場面もありましたし。久しぶりに参戦したのにこの仕打ちはあんまりでしたね。でも、これに懲りず本チャンのペルセ群では頑張って下さい。

 

そして大御所のY−daです。ですが、北極星の導入こそ手間取りはしたものの、その後は実に順風満帆で、着実に数をこなしていきました。M27に始まり、M71、網状星雲、M29。途中火星撮影を入れて、ラストはM31アンドロメダ大星雲。プレビューを見る限りでは星像も鋭いですし、これは帰った後の画像処理が楽しみです。M31を撮った後は、M45すばるもいきたいところでしたが、折しも夜露がレンズに付着して白く曇っていたので、この辺りで切り上げることにしました(ちなみに船長っはM45の撮影の時に、断末魔の叫びを上げていたような覚えがあります)。

いやー、皆様のご期待に添えず大変申し訳ありません。これからは船長っの時代ですので、こちらに注目して下さい。

では、早速今回の成果を見てみましょうか(^ω^)。・・・・・・・・・・・・

 

ピント合っとらんやんけ!!!!!・・・・・・・・・・・・・・・以下略

 

結局みんながみんなネタ作りに事欠かなかったのでした。

さて、今回のネタ作り王は一体誰だったのでしょう?それはこれを読んでいるアナタの心の中で決定して下さいね。

・・・今回もテキストだらけの大作戦を最後まで読んで頂きありがとうございました(礼)。

 

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